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カレーが好きだ

かつて、カレー食べ放題のステーキ屋さんでバイトしていたことがある。

そのお店のカレーは、でっかい鍋で人参じゃがいも玉ねぎをショウガとニンニクで炒めて、ステーキの切れ端の肉をがんがん入れて、1時間以上ぐつぐつ煮込んで作っていた。
ルーは業務用の聞いたことないメーカーのやつだったけど、味はよかった。

ステーキ屋にもかかわらず、カレーが異様にうまいということで、ちょっと評判になっていた。
(フランチャイズ店にもかかわらず、他の店舗よりうまいという噂だった)

そこでのまかないは、もちろんカレーだった。

週4~5くらいで入っていたので、ほぼ毎日カレーを食べ続けていた。

バイト仲間は、1ヶ月ぐらいでカレーに飽きていたのだが、私は不思議と飽きることなく、むしろカレーが主食になっていた。

私がカレーを意識し出したのは、ここのカレー体験があったからだ。

◆ ◆ ◆

バイトを辞めてからは、積極的にカレーを食べることはなくなった。

その後結婚して、ご飯は奥さんが作ってくれるようになった。

たまに晩ご飯がカレーの日がある。

「今日はカレーだよ」

そう言われると、トゥンクと心がときめくことに、あるとき気づいた。

このときめきはなんだ?
もしかして、私はカレーのことが好きなのか……?

思い返せばいつも、晩ご飯がカレーのときにときめいていた。

私はずっとカレーが好きだったんだ。

◆ ◆ ◆

カレーが好きであることを認識してから、「食事で迷ったらカレー」というマイルールができた。

残業して帰りが遅くなるとき、たまに食事をして帰宅する。
そのときは、普段は乗り換えない駅で降りて、駅中にあるカレーチェーン店に入る。

そこのカレーは、ふつうにおいしいく、飽きがこない。
辛さは、マイルド・中辛・辛口の3種類あり、その日の気分で選ぶ。
量もちょうどよい。

いつも食べ終わると、多幸感に包まれた状態で、帰りの電車に揺られるのだった。
カレー1皿でこんなにも幸せな気分になれるのかと自分でもあきれつつ、「やっぱカレーはいいな」と思う。

◆ ◆ ◆

カレー好きな人やカレーマニアな人は、世界に大勢いると思う。
自分でこだわってカレーを作ったり、いろんなカレー屋さんに行ったりすることもないので、そういう人と比べてしまうと、「自分がカレー好きだなんておこがましい……」と、うっかり卑下してしまいそうになる。

でもそうじゃない。

カレー好きに優劣なんてないんだ。

カレーはだれかのものじゃないし、カレーはみんなに開かれているんだ。

だから、ささやかな自分の「カレーが好き」というこの気持ちを、そっと認めてあげたらいいんだ。


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