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雲の中のマンゴー |#3 ジイジと動物園

この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。

Novel model Mango Kawamura 
Author Toshikazu Goto

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第3話 「第1章~その2~」

約一年ぶりの深圳宝安国際空港に降り立つ。香港にも近い南部のこの地域は、4月はやや暖かく湿度はまだそれほど高くはない。とても過ごしやすい陽気だ。はじめての飛行機に興奮していた海斗は、今は美恵の背中でぐっすりと眠っている

「お袋、今着いたよ。」登は絹枝にメッセージを送った。
【イチイチレンラクシナクテモヨイ】最近覚えたてのlineで返信がくる。

「いいねスタンプぐらいしろってんだ。まったく。」

東莞市にある協力工場までは、車で約1時間。親父が迎えに来ないのはいつものこと、空港近くでレンタカーを借り移動する。
ミユは祖父、一(はじめ)になついておりたびたび中国協力工場の出張にもついてきた。そして、現地のマネージャーである程杏(テイシン)にはすこぶる可愛がられ、出張で長期滞在する際は家族ぐるみで食事に行くこともしばしばであった。

東莞にはミユが大好きな香市動物園がある。親父との待ち合わせはいつもここだ。美恵もこの大きな公園の動物園がお気に入りだ。とてもリラックスできるのだという。今回は海斗をバギーに乗せ、ゆったりと散歩でも楽しむつもりだが彼は空港からずっと眠っている。

「みいみ!みいみ!こっちだよ、ジイジだよ。」

「ジイジーーー!」

ミユは親父を見つけ、両手を挙げながら駆け寄った。
親父はミユをすぐさま抱き上げた。

「よく来たな、みいみ。大きくなったなあ。ああ、重たい重たい w」

「お義父さんお久しぶりです、海斗もこんなに大きくなりましたよ。今は眠っていますが。」

「おお、海斗か!毛が生えてきて安心だ、ハハハハッww。美恵さんありがとうな、この子達も連れてきてくれて。気にかけてくれてホントにありがとう。いつも思うが登にはもったいない。」

「なに言ってんだよ。さあ、動物園に入ろうか。」


#4に続く。


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