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持久力に対するアスタキサンチンの効果 酸化ストレスが軽減して疲労物質も減少

老化に伴う持久力の低下には、酸化ストレスが関与しています。酸化ストレスによってエネルギー代謝が阻害され、筋力低下が起こるのが一因です。低強度の運動は酸化ストレスの軽減や筋力の増強に有効ですが、高齢者が運動を毎日続けるのは簡単なことではありません。運動に代わる方法として研究されている一つが、抗酸化サプリメントの活用です。高齢者を対象とした試験では、アスタキサンチンが持続力の改善に役立つ可能性を示唆する結果が得られています。

酸化ストレスによって進む持久力や筋力の低下

学術顧問の望月です。前回は、アスタニンをふだんのトレーニングに取り入れている格闘家・藤村大輔選手の話をご紹介しました。今回の記事では、『Int. J. Environ. Res. Public Health』に2022年に掲載された「Impacts of Astaxanthin Supplementation on Walking Capacity by Reducing Oxidative Stress in Nursing Home Residents」をご紹介します。日本で実施された研究で、持久力に対するアスタキサンチンの効果が報告されています。

老化に伴う持久力の低下には、酸化ストレスが関係しているといわれています。酸化ストレスは、ミトコンドリアの働きと密接に関連しており、エネルギー代謝時に機能不全が起こると、ATP産生が減少して乳酸の蓄積が増加。活動後の疲労がたまりやすくなるのです。別の研究では、酸化ストレスが筋繊維への血液の供給や乳酸を排除する働きにも悪い影響を与えて、持久力のほか筋力の低下を引き起こすことも示唆されています。

高齢者の持久力の改善には、低強度の運動が有効といわれています。低強度の運動は、酸化ストレスの軽減にも有益であることがわかっているからです。しかし、健康上の問題や慢性的な痛みなどを抱えている高齢者が継続的に運動を続けるのは簡単なことではありません。運動する場合は、心疾患や骨格筋損傷のリスクにも注意が必要です。

超高齢社会を迎えた日本では、運動に代わる酸化ストレスの軽減法について研究が進められています。研究対象の一つとして注目されているのが、抗酸化サプリメントの活用です。これまでの記事でもご紹介してきたとおり、アスタキサンチンには強力な抗酸化作用があり、それによりミトコンドリアの機能不全を予防し、運動中の乳酸レベルを減少させるという仮説が立てられています。アスタキサンチンは、持久力の改善に有効なのでしょうか。

長い距離を歩けるようになり疲労物質も減少

今回の研究には、特別養護老人ホームに住む67〜94歳の健康な高齢者24人が参加。13人にはアスタキサンチン(1日あたりアスタキサンチン24 mg、トコトリエノール40 mg、アスコルビン酸30 mg)を、11人にはプラセボ(1日あたりトコトリエノール40 mg、アスコルビン酸30 mg)を飲んでもらい、試験前後の各測定値が比較されました。

試験前には、体成分測定、血液中の酸化ストレスの状態を測定するd-ROMsテスト、6分間の歩行テスト、筋力テストを実施して、これらを「測定前データ」として記録した後、2群にはそれぞれアスタキサンチンとプラセボを朝・晩の2回、16週間飲んでもらいました。試験期間終了後には、同様の項目を再度測定。これらは「アフターデータ」として記録されました。

ポイントのみとなりますが、結果をご紹介していきましょう。体成分測定値、d-ROM値、6分間の歩行距離、さらに6分間の歩行テスト後の血中乳酸値、筋力を比較したところ、試験期間終了後のアスタキサンチン摂取群の酸化ストレスと乳酸値についてはプラセボ群と比較して有意に減少。また、歩行距離はプラセボ群よりもアスタキサンチン群が有意に長いという結果が得られました。6分間歩行テスト後の乳酸レベルが減少していたという結果は、持続力が改善したことを示しています。一方で、筋肉量と筋力には2群間に有意な差は認められませんでした。

試験には、特別養護老人ホームで生活する人が参加しています。ふだん同じ食事を食べており、試験前後の測定値の変化はアスタキサンチンの摂取によるものであると考えられます。今回の結果について著者らは、長期のアスタキサンチン摂取による酸化ストレスの抑制が、ミトコンドリアの機能不全を予防し、その結果乳酸産生を抑制していると考察しており、「アスタキサンチンは高齢者の持久力を高めるのに効果的である」と結論づけています。

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