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発酵による機能性成分の変化 そばの新芽の青汁と発芽そば発酵エキスの比較

発芽そば発酵エキスは、そばの新芽の青汁を乳酸菌発酵して作られています。緑色だったエキスは、発酵後はきれいな赤色になります。発酵の過程で、エキス中の各種成分はどのように変化しているのでしょうか。私たちは、さまざまな機能性成分が増加していることを確認しています。発酵の力を、あらためてご紹介しましょう。

発酵によってGABAは20倍以上増加

常務の前島です。発芽そば発酵エキスは、富士山の伏流水を用いて水耕栽培しているそばの新芽を搾汁・発酵させてできるエキスです。発酵すると、さまざまな成分が変化することがわかっています。ドクター論文では、各種成分の変動を可能な限り調べていきました。前回の記事でご紹介した「ニコチアナミン」「2”-ヒドロキシニコチアナミン」は、発酵で増加した機能性成分の一例です。

発酵変化

発酵によって各種成分が変化している

今回の記事では、発芽そば発酵エキスに含まれる成分の詳細をご紹介します。乳酸菌については、「Lactobacillus plantarum」「Lactobacillus brevis」「Lactobacillus pentosus」「Lactococcus lactis subsp. Lactis」「Pediococcus pentosaceus」が含まれていることを以前ご紹介しましたので、今回は省略します。よろしければ、過去の記事を参照してください。

さっそくですが、アミノ酸を見ていきましょう。アスパラギン酸、トレオニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、システイン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニンの変動を調べたところ、トレオニン、セリン、グルタミン酸、アルギニンは発酵によって減少していたものの、ほかのアミノ酸は増加していることがわかりました。

研究では、高い血圧を下げる働きやストレスを軽減する働きなどが報告されているGABA(γ-アミノ酪酸)の変動も分析しています。凍結乾燥物100gあたりの含有量はそばの新芽の青汁が0.0747mgだったのに対し、発芽そば発酵エキスは1.524mgでした。GABAの含有量が20.7倍に増えた計算となります。

そのほか、そばの新芽には含まれてなかった3種類のペプチドの存在が明らかとなっています。そばの新芽に含まれるたんぱく質が発酵によって分解された結果、各種アミノ酸やペプチドが増えているというわけです。

発芽そば発酵エキスの特徴でもある赤色の色素成分の分離を試みたところ、ケラシアニンというアントシアニンの存在が確認されました。ケラシアニンは、そばの新芽の赤い茎に含まれている成分です。また、有機酸の分析も進めました。有機酸については、0.24 mmol/Lのコハク酸、109.36 mmol/Lの乳酸、20.00 mmol/Lの酢酸が確認されました。乳酸菌によって生成された乳酸が最も多いという結果です。

この乳酸によって発芽そば発酵エキスのpHは低下します。赤色の色素であるケラシアニンはpHによって色調が変化しますので、発酵が進むにつれてエキスは明るいルビー色へと変化していきます。

発酵後のケルセチン含有量は約8倍

最後にご紹介するのは、機能性への関与が最も大きいと考えられるフラボノイドの変動です。そばの新芽には、ソバポリフェノールとして知られているルチンをはじめ、ケルセチン、オリエンチン、イソオリエンチン、ビテキシン、イソビテキシンなどのフラボノイドが含まれています。これらのフラボノイドの含有量も、発酵の影響を受けています。具体的には、発酵の過程でルチンが減少する一方で、そのほかのフラボノイドの含有量は増加することがわかっています。

構造

ルチン(左)とケルセチン(右)の構造

ルチンとケルセチンを抜粋します。凍結乾燥物100gあたりのルチンの含有量はそばの新芽の青汁が2300mgだったのに対し、発芽そば発酵エキスは608mg。一方のケルセチンの含有量はそばの新芽の青汁が20mgだったのに対し、発芽そば発酵エキスは163mgであることが明らかになりました。

ルチンが減少してケルセチンが増加する理由については、ケルセチンの配糖体であるルチンの構造中の糖が発酵によって切断され、ケルセチンが生成したものと考えています。なお、ルチンとケルセチンには抗酸化作用がありますが、活性はケルセチンのほうが強いと考えられています。

スプラウトを発酵させるメリットや可能性については、静岡大学名誉教授の衛藤英男先生も解説されています。よろしければ、以下の記事もチェックしてみてください。


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