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恋バナしたことないメンバー内で最初に話題を出すのはちょっと勇気が必要

あらすじ:魅惑の本屋がヨルダンにあったので「ここで働かせてください!」とアタックし、その本屋で暮らしていた話。

●キッチンで盛り上がる女子

ある晴れた日、ヨルダンの本屋の女子スタッフ三人でおしゃべりしていた。

私はその時、なぜだったかは忘れたが「隠された」と英語で言いたくて、でもその単語が出てこず、咄嗟に「hide-hide-hidden だから、hiddenか。」と日本語でつぶやいた。

その瞬間、その場にいたラウラとアリスがバッ!とこちらを見て、「フウ、あなた今、hide-hide-hidden って言ったわね!?」「すご〜い!面白い!私の国でも、そうやって英単語を覚えたわ!」と大いに盛り上がった。

私たちはこんな感じで、常に盛り上がっている。

●女子達のケーキ作り

さて、私たちは今キッチンで、販売用の試作ケーキを作っていた。うまくできれば、このように本屋のカフェに並べることができる。

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イラク人のバリスタ(男性)が淹れてくれたカプチーノ

「え?砂糖ってこんなに入れるか..?」「このレシピ絶対間違ってるよね?」「怪しいけど一旦この通りに作ってみない…?」などと言いながら、不安なパウンドケーキが完成。

一体、これは大丈夫なお味だろうか..。

●脳神経シナプスのささやき

焼けたケーキを、フランス人スタッフのアリスがパクリと食べ、「フフ〜ン?悪くないわね」とニンマリした。面白おかしく言うアリスに続き、三人で「そうね、悪くないわね?」「まあ確かに、悪くないわねえ」とウフウフ盛り上がった。 

悪く…ないわね…?

「悪くないね」と言えば...。ひとつ思い出した。

noteに書くか迷ったが、思い出したのは以前好きだった人のことである。

そうそう、その彼は、いいものを時々「悪くないね!」と言う人で、その度に私は「ねえ、悪くないなら『いいね』と言ったらいいんじゃない?」と話していたのである。なつかし。そんなことを思い出したので、二人に言いたくなった。

●恋バナしたことないメンバーだけどこの2人ならいいか

私「あ。そういえば、前好きだった人がさ〜、」

・・・

ケーキを見ていた二人が、

バッ

とこっちを向いて目を見開き、空気が止まった。

「フウ〜〜〜〜〜〜!?!??!!?!?なんっっで、そんな面白い話、今までしなかったのよーーーーー!?!?!?!??!」


え?面白いかな?まだ、「前好きだった人がさ」しか言ってない。。(笑)


●いつもそう、普段の話題とは

思えば、私の人生、だいたいそうである。とてもとても仲良くなったメンバーと、人生とか世界の話を毎日したり、周りの先輩や先生のモノマネでずっと盛り上がったりで、親しい人と恋愛の話を全然しないのである。

日本で何度か「私ってそういう傾向があるかもしれんな」と思ったことがあったが、この出来事によって「あれ?あの傾向、海外でも起きてるわ」と気づいた。

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ある日のヨルダン女子会の様子(日本、イタリア、フランスの人間と、本屋のネコ)

そんなフレーズだけで盛り上がる、つまりそれほどまでに恋愛の話をしてこなかった分、私たちが話してきたのは、各々の母語やアラビア語の文法とか、店長についてとか、ヨルダンの食文化とか、行ってみたい外国(今既に全員外国にいるけど)とか、これからの生き方についてばかりだった。

たぶん本屋スタッフ達のその考え方がとても似ていたし、違っていても心から尊敬できたから、自然にそういう話題になって、それが心地よかったのだと思う。

●肝心の続き「彼がさ、」

まだ何も言ってないのに盛り上がるという流れが一旦起こった後、その彼がどうなのか、続きをやっと話した。

「それでその人といつも、『悪くないなら、”いいね”って言ってよね』『ごめんごめん(笑)』って喋ってた、って話を言いたかったの」

「わっっかる〜〜〜!男子っていっつも、『フン、悪くないね?』って言うの、アレなんなのかしらね!?」と、二人とも大いに賛同してくれた。


こうして、さっきまで「あのレシピは正しかったようね、このケーキ悪くないかも」と盛り上がっていた私たち女子は、「男子ってすぐ『悪くないね』って言うわよね!?」とまた盛り上がりながら、最高に悪くないケーキをつついていた。

そして試作を作ったことにより、ケーキにはどれだけの砂糖と油が入っているのかを思い知らされた三人は、「ケーキはまあ、いいか、、」ということで、ケーキが店に並ぶことは無かったという。

ケーキ作り編・fin

●スタッフ紹介記事(ラウラ・アリス)

第1話 「ヨルダンの本屋に住んでみた」
本屋のルームツアー
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