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「君の名は。」解説【含ネタバレ】

「物語」は、人間集団のDNAのようなもので、時代を超えて、かたちを変えて生き続けます。変形しながら反復強化される、と言ってもよいです。DNAは紐の一種ですから、物語も紐の一種かもしれません。

「君の名は。」の、元の物語は古事記、日本書紀です。

アマテラスとスサノオ

三葉はアマテラスです。

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瀧はスサノオです。

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アマテラスが年上です。スサノオは暴れん坊で喧嘩っ早いので、だから最初、瀧は頬に傷が有ります。姉を、年上を慕うのもスサノオの特徴です。二人の母はイザナミです。もう黄泉の国に行っています。二人の父はイザナギです。国造りをしています(三葉の父は町長、瀧の父は原作では霞が関の官僚)。

髪型

アマテラスは弟のスサノオと会う前に、髪を男髪にします。クレーターの上で瀧と出会う三葉は、髪を切っています。

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このあたり、時間前後が激しいので「スサノオに会うから髪を切った」とは言い難いですが、しかし結果としてクレータの上では髪を切っている状態です。

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初めて東京の電車で出会う時は切っていません、切るのはその後、糸守に帰ってからです。

衝突の日の前日、三葉は東京に行き、瀧に紐を手渡します。

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しかし十分コミニュケーションできなかったので、帰ってきてからお婆ちゃん一に髪を切ってもらいます。

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そして衝突の日、この日のみが作中で二回描かれています。

(1、本来の死者多数バージョン)

三葉はおそらくショックを引きずり、登校していません。

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浴衣を着て祭りで集合した時に、友人たちは初めてショートヘアの三葉を見ます。そのまま彼らは、衝突で死んでしまいます。

(2、運命転換して死者少数バージョン)

瀧が中に入った三葉は、朝からバリバリ活動します。

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ニセ放送を流すまでは順調でしたが、父である町長の説得に失敗、カルデラに行って瀧の体に入った三葉に合います。

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両者入れ替わりを解消して、三葉自身になった三葉は、転げて負傷しますが、手のひらの文字を見て、起き上がって町長を説得、町の皆は救われます。

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瀧が手に書いてくれた「すきだ」の文字で三葉が元気づけられ、結果多くの人が救われたのです。東京にゆく前に髪を切ったのでは、三ツ葉の精神的ショック(で学校休んだこと)を描けませんし、カルデラの上で髪型の話をすることも出来ません。批判もあるようですが、まず必然的な展開だと思います。

天岩戸(あまのいわと)

奥寺先輩は、スカートを切り裂かれます。デートに着てくる服も露出が多いです。

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記紀神話で露出が多いとくれば、アメノウズメノミコトです。つまり天岩戸にアマテラスが引きこもったときに、岩戸の前でストリップをしてみんなを笑わせ、アマテラスを現実に引き戻す女神です。

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早耶香も奥寺先輩と同じくアメノウズメの役です。アマテラスが岩戸から顔を出した時、アメノウズメは嘘の情報を流してアマテラスを引っ張り出します。早耶香も嘘の放送を敢行します。

瀧といっしょに高山にゆくのは、奥寺先輩と、建築好き藤井です。
三ツ葉の友人はさやか(女性)と勅使河原(建築会社跡取り)。
岩戸を怪力で動かすタヂカラオに該当するのが、藤井=勅使河原です。

友人が対称構造になっています。

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(最終的にさやかと勅使河原は結婚しますので、奥寺先輩の結婚相手は藤井なのかもしれません。ふたりとも「スーツが似合わない」と瀧をからかうあたり、臭いです。)

戦略のある登場人物構成ですね。見事なものです。

結局この物語は、天岩戸にこもったまま二度と出てこなかったはずのアマテラス(=隕石で死んでしまう三葉)を、再び世に出すための物語だったようです。

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戸を引くシーンが沢山ありましたね。低いカメラ、アップの画像で、綺麗に描写されていました。これも天岩戸を暗示しているのだろうと思います。

リンク

流レ水さんによる「天気の子」の読み解きです。どうも構成がよりきっちりしてきたようです。


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