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よくわからないけど初めて投票してみたら。

7/21の参議院選挙に投票してきました。恥ずかしながら、今回が初めての投票です。ずっと地元の大阪に住民票があり、「全然候補者の情報も持ってないのに投票するのもな〜」と思って選挙に行かず、不在者投票もしませんでした。これについては「ぶっちゃけよくわかんないしめんどくさいなあ」、という思いで投票しなかっただけで、そのことがずっと心に引っかかっていました。4月から住民票を居住地の東京に移したこともあり、今までの言い訳はできないな、と思って投票に行こうと思いました。

大学までそれなりの教育を受けてきたものの、政治については家族の間であまり話題になることはなく、右も左もわかりません。まずは政治について勉強しよう、ということで本を読むことにしました。

(読書感想文なので興味のない人はとりあえず投票に行くまで飛ばしてください)

1冊目 民主主義の死に方

なんで読もうと思ったかは忘れました。メルカリで2000円くらいで買いました。定価とメルカリで売ってる価格の差が小さい本は名著が多い気がしていますが、この本もいい本だと思います。

本の大筋は、ヒトラー・ムッソリーニ・チャベス・フジモリなどを例にとって民主主義の崩壊は合法的に行われること、その手段(メディアの抱き込み、司法の無力化、敵対勢力への攻撃など)について説明するのと同時にアメリカの政治の歴史を民主主義の観点から分析し、トランプ大統領は独裁者なのか、なぜトランプが当選したのかを論じています。「民主主義の死に方」ではトランプ大統領を独裁者の卵だと否定的な捉え方をしており、今回のnoteではトランプを悪者と仮定します。

アメリカの民主主義の衰退、およびトランプ当選の背景としては、

①昔のアメリカ選挙は政党の権力者が大統領候補者を選別していたのが、予備選挙を導入して門番としての役割が失われており、大衆扇動的な候補者が大統領候補になることができるようになった。

②民主党・共和党支持者間の経済格差や人種の二極化

➡︎お互いがお互いを敵としてみなすようになり、相互的寛容と(憲法違反ギリギリの権力行使に対する)自制心が損なわれる

➡︎敵勢力に打ち勝つことが最大の目標になってしまい、独裁を止めるための超党での協力ができない
and
なんでもやっていいという風潮の中、独裁的な権力行使への抵抗力が失われる

の2つが主に述べられていたと思います。僕の解釈が間違っている可能性もあるので、その場合は教えてください。

特に①については考えさせられる部分が多くありました。というのも、より民主的な選挙プロセスになった結果としてトランプ大統領が就任してしまった、つまり民衆(の大多数)が選挙において正しい判断ができないことを含意しているからです。これは民主主義の存在意義を根本的に崩壊させかねないと思います。

有権者である民衆が政治的に正しい判断ができないと、民主主義はうまく機能しない。僕たちはきちんと日本の行く先を考え、マニフェストを理解しているでしょうか。少なくとも僕自身は、政治に関しての理解はできていないと思います。

月並みな意見になってしまいますが、有権者が責任を持って政治に対して理解を深め、自分の意見を持って投票することが、民主主義の前提条件であると思いました。

②について

日本でも近年、人手不足に伴って移民を受け入れるかどうかは大きな問題になっています。将来的に移民を受け入れる、となった場合、日本でもアメリカのような二極化が起こる可能性は大いにあると思います。外国人によって日本が侵略される、日本が失われるという感覚はなんとなく僕の中にも芽生えそうで、「敵である」という感覚があると、過激な思想に走ってしまいそうな気もします。本を読むと自分の中の民族主義を自覚できるから面白いですね。こういう感覚が世の中のヘイトスピーチにつながるのかもしれません。今は外国人の数が多く、ヘイトスピーチなどの過激思想は異端として扱われますが、移民が増えて変化が身近に現れ始めると外国人排斥勢力が一定の支持を得るような気がして、その場合は有権者の二極化が進みそうだな、と思います。
(ちなみに僕は、今は外国人のことが結構好きだし外国人の友達もいますが、日本は日本人の国であってほしいという気持ちがあります。)

**2冊目 体制維新――大阪都 **

「民主主義の死に方」で「なるほど〜、政治ってこういう問題があるのか〜」くらいには知識がついた?のですが、肝心の日本の政治ってどうなってるんやろう、と思ってメルカリで300円で購入。

僕は大阪出身で、当時高校生の時に大阪都構想は府内で激論になりました。若い世代は都構想に賛成の割合が多かったのに、高齢者が都構想に反対した為に結果否決された、というニュースはとても印象に残っていました。大阪都構想とはなんだったのか、結局理解しないままでいるのは大阪出身者として引っかかっていたので、とりあえず橋下さんの本を読んで都構想とはなんだったのか、理解を高めようと思いました。

「体制維新――大阪都 」は堺屋太一さんと橋下徹さんの共著で、本の中心で橋下さんが大阪都構想について書いていて、このnoteではそこを中心に書きます。堺屋さんの文章は明治維新や国鉄改革に触れ、システムの変革が大事だと言っていますが、正直リーズニングが非常に弱いと感じました。国鉄はシステム改革をやらないと上手くいかなかった、だから政治についてもシステム改革をやらないといけない、というのは状況も違いますし、因果関係の組み立て方としてはミスリーディングだと思います。

一方、橋下さんの都構想のパートについては非常にわかりやすく、都構想と橋下さんの政治に対する考えには共感する部分がありました。

都構想について

ネーミングからは大阪に東京並みの都市機能を持たせるという印象を持っていましたが、実際の構想はかなり違っていました。
大阪市と大阪府の二重行政の問題を解決しよう、というのが都構想の主な論点です。大阪の二重行政の問題点は、大阪市が広域行政と基礎自治行政の両方の権限を握っていること、大阪市が大阪全体の利益に大きく関わっているのに、大阪市の利益のみを考えて行動していることです。大阪市は政令指定都市になっていて権限と財源が集中しており、大阪市の領域に関しては大阪府の影響力が及ばない。

例えばインフラ整備。大阪市営地下鉄を例にとって考えてみる。大阪府全体のことを考えると空港へのアクセスがいい路線の開発は地下鉄にとって必要だが、大阪市のことだけを考えると重要性が下がってしまう。治水事業に関しても、水害対策は上流下流で連携しないといけないのに、大阪市は独自の判断で大阪市の利益を考えるので、大阪府としてのまとまった施策を取れない。

要は、広域行政の権限は一元化して大阪都(現在の大阪府にあたる)に任せることで、一ユニットとして大阪の戦略をとっていきましょう、ということだと理解しました。基礎自治体については、大阪市の規模だと大きすぎで住民に適したサービスを作れないので、もっと小さい区に再編してそれぞれの区に適した住民サービスを行えるようにしよう、と。

政治と行政の関係、権限の設定

体制維新ー大阪都の中で特に記憶に残ったのは、政治と行政の役割分担についての橋下さんの意見でした。与えられた枠組みの中でしっかり組織を回していくのが行政、その枠組みを決定していくのが政治である、という主張だと理解しました。政治と行政、それぞれで得意分野があるので行政に任せるところは任せて、政治全体の絵を描きましょう、適切な権限設定をしましょう、ということだと思います。行政は権限の中で行動するので、既得権益と折り合いをつけながらやっていくもので、だから官僚が批判されるのはある意味仕方ないのかもしれない、と思いました。

また、政治の役割を、方向性をつけることだと考えることで、選挙で重視するポイントができたと思います。一見地味であるかもしれないがシステムを変えよう、既得権益を考えずに合理的な姿勢で判断しよう、という考え方を持つ人や政党に票を入れたいと思うようになりました。

橋下さんがかいた「体制維新」を読んでこのような考え方に至ったので、とりあえず維新の会に暫定的に投票しようと思いました。

マニフェストを読んでみたけど・・・

とはいえ、橋下さんはもう維新の会を脱退していて、維新の会が僕の思うものと違っている可能性もあります。今の政治の状況がどうなっているのか、各候補者・政党のマニフェストを知るために、選挙広報(新聞紙のやつ)を読んだり、政党比較サイトで自分にマッチする性格の政党を探したりしました

結局のところよくわかりませんでした。政党比較サイトだとマニフェストや政策の比較はできますが、それぞれの党が政治に対してどういう向き合い方をしているのか、今まで国会でどんなパフォーマンスを出してきたのか、などはわかりません。やはり日頃から政治のニュースに触れていないと付け焼き刃ではキャッチアップできない部分が非常に多く、「結局よくわからないなあ」というまま投票日を迎えてしまいました。

とりあえず投票に行く

こんなので投票してしまっていいんだろうか。めちゃくちゃ悩みました。「民主主義の死に方」が含意していたように、自分の 不適切な投票が政治に悪い影響を与えてしまうかもしれない。

でも、絶対に今回の選挙は行こうと思っていたので、よくわからないまま投票に行きました。

投票に行くのは初めてでしたが、思ったよりめちゃめちゃ簡単でした。身分証明をする必要もないし、整理券さえ持っていけばすぐに投票できる。オンラインで投票できたら最高ですが、失敗が許されない選挙で、サーバー等のトラブルのリスクを考えると導入が難しいのでしょう。

票は橋下さんの本の影響をもろに受けて、選挙区で「おときた駿」、比例で「やながせ裕文」に投票しました。正直言って、投票した候補者のことをよく知っているわけではなく、維新からの候補ということだけで名前を書きました。

音喜多さんはtwitterなどをみてもアンチコメントが多く、事前調査でも劣勢だったのでまあ当選することはなさそうだなと思っていました。なんとなく投票するのには、悪くないのかも、なんて思ってしまったのは申し訳ないです。

なんとなく投票したら世界が変わった

なんとなく投票をしてしまった罪悪感を感じながら投票所をでました。その日の夜は高校の友人とカラオケに行き、100%楽しみながらも、どこかで投票のことが引っかかっていました。

カラオケが終わり家まで帰ったのですが、不思議なものでどうしても選挙の結果がきになる。twitterで確認してみると、なんとおときたさんが善戦。当選圏外だと思われていたのが、終盤にものすごい追い上げを見せ、7位の山岸さんとわずか3万票差でギリギリの当選を果たしていました。結果を見て、まるで童貞を捨てた日の夜のように興奮して、その日は全く寝付けませんでした。

比例の柳ケ瀬裕文さんも、翌朝に最後の比例枠で当選。なんと僕の投票した候補者が二人とも劇的な勝利を収めたのです。

とりあえず選挙に行ってみる、という選択肢

僕は選挙に行く前は、「自分の1票があってもなくても、結果が変わることはない。行くのがめんどくさい。」と思っていました。

確かに、僅差とはいえ僕が投票に行かなくても結果は変わらなかったでしょう。

でも、僕の世界は確かに変わりました。

政治のことなんて高校で勉強したくらいしか知らなかったし、興味もほとんどなかった僕でしたが、「とりあえず投票してみた」ことで、政治の本を読み、マニフェストを調べ、気づいたら候補者のtwitterやyoutubeをフォローし、選挙速報をドキドキしながら確認しました。きっとこれからは音喜多さん、柳ケ瀬さんがどんな仕事をしているのか新聞で調べるでしょうし、維新の会をはじめとして、各政党や国会の動きを注目すると思います。
僕は投票に行って、政治に興味を持ち始めたのです。

政治がよくわからないから投票に行きたくない、と思っている人もいると思います。「ニワトリが先か、タマゴが先か」みたいなもので、投票に行くと結果的に政治に興味を持つようになることもあります。政治、思ったより楽しいですよ。

自分の1票で結果が変わることなんてほとんどない。だからこそ、よくわかんなくてもとりあえず投票に行ってみる、そういう選択肢もありだと思います。

※このnoteはあくまで私個人の本の解釈・意見によって書かれています。本の解釈が間違っている可能性もありますので、できれば原書を読むことをお勧めします。

※間違い等あれば訂正するのでコメントでお願いします。




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