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アート靴下をつくってます②~デザインが生まれるまで

「アートのプリントでなく、全く新しいものをつくってみたい。」
デザインユニットtuiiさんからは、最初にこのように言われました。
選んだアートを、ただネットでモノにプリントしていくのではなく、全く新しいものを。
だから靴下作りは「本人に会う、一緒の時間を過ごす、描いてみる、話しかけてみる」まずはそこから始まりました。

彼女の作品はその色使いが特徴的ですが、今回のデザインはあえて、色ではなく「カタチ」に着目しています。
お二人が彼女と作品から感じたことは、fuco:は重度自閉症で言葉によるコミュニケーションは難しいのだけど、人と接するときの距離感、場の雰囲気をとても敏感に感じとっていて、常にその関係性とバランスを探っているということでした。

誰がどこで何をしているか、この前ここでこんなことをしたからきっと今日もこうする、本当に誰よりもよく見ていて、よく考えています。
喋らないから何もわかっていないわけではなく、誰よりも敏感であるのがfuco:なのです。
孤立したいのではなく、自分にとってちょうどいい場所でいつも関わりたいと思っているのがfuco:なのです。

作品の中でも、そのモチーフの一つ一つがどんな形を次に描くか、どこに伸びていくか、一瞬ごとにそのモチーフと全体との「関係性」を、彼女の感覚で感じて表現していくのです。

それはまるで自然の中の森のようでもあります。森は木が生えて、隣に木があったら避けたり、日のあたる方向に伸びていったり、周りとの「関係性」の連続で形づくられていきます。
彼女のアートも、木々が葉っぱを伸ばし、森となっていくように、一つ一つの形が重なり、場所を探して全体をつくっているのではと感じたそうです。

構造を抽出しながらのデザイン

この本質を今までと違う視点で表現するため、あえて色ではなく「構造」に視点をおいてデザインすることに。
構造を知るために、まず輪郭をとります。これによって一つ一つのモチーフの重なり方、関係性がわかります。
輪郭は、沢山の作品の中から、形や並び方に力を感じるものを選んで、デザインソフトに取り込み、一つ一つペンタブレットで型どりました。

そのまま忠実になぞるのではなく、あえてデザイナーの感覚も入れて、輪郭をとりながら心地よい線や形も意識し、自由になぞっていきました。
その時間は、デザイナーさんたちは自分がfuco:になったかのような、次はどこに描こうかな、どんな大きさにしようかな、くっつけようか離そうか、子供の頃に帰ったようなワクワクするような、描きながら元気になるような不思議な感じだったそうです。

こうしてなぞった作品の輪郭をもとに、デザインは作られていったのです。
このデザインコンセプトが作品からだけでなく、彼女自身からも感じたことであるtuiiさんたちの誠実さにグッときながら、デザイン自体はスムーズに決まっていきました。

しかし、プロダクトのイメージがまとまらない

デザインが決まってからどんな色で配色していくかは、デザイナーさん達とyasuco:との間で何度も意見を出し合いました。

男性も履きやすい落ち着いた色調でいくのか、若い子がポップなファッションに合わせて履くのか、それは単なる配色ではなく、どんな人がどんな場所で手にとって欲しいか考えていくこと。
最初から、このアート靴下は福祉的な場所ではなく、センスの良いアパレルショップやセレクトショップに置いていただきたいというのは共通して考えていました。
ですが、更に「どんな」ショップかはまだ絞れていなかったのです。

コンセプトをもっと深く考えたら湧いてくるかと、あれこれ文字にしてみたり、いろんな方に相談しながらも、なかなか先が見えません。
結局サンプルは3回作り直し、少しでもより良いものをと考えていく日が続きました。
それを打開できたのは、やはり新しい人と場所との出逢い!
配色も「そう、こんな風な靴下にしたかった!」ものに決定していき、その靴下に合うパッケージをと、より全体が急速にまとまっていったのです。

制作中のパッケージ

迷いと葛藤から確信へ

単純に「これはいい!」と思うプロダクトを作るのだと始まったlaboでしたが、TVの取材を受けながらのモノづくり(なかなか放送日も決められなくて迷惑かけっぱなし)だったり、従来のマルツナガルファンが更に応援したいと思っていただけるようなコンセプトやストーリーをどう作っていくか、正直全てがホントに難しかったです。
ストーリーを載せすぎない方が出てくるスマートさや洗練をどうやって残すかですね。

だけどtuiiさんの熱心さもあり、次第にそれらは、応援してくださる方たちもわかってくださる!絶対こっちの方が面白くなる!という確信に変わっていきました。
文字通り、laboもその第一弾プロダクトも大きな挑戦でした。
いや、想像以上をはるかに超えて!(笑)
葛藤や迷いをグルンと一巡をしてやっと今、最終サンプルがあがろうとしています!
「作ろう!」となって半年以上経ち、やっとやっとプロダクトが見えてきそうなのです!

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