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月刊風テラス(2022年7月号)~夜の世界ではたらくNPO理事長の月報~

こんばんは。NPO法人風テラス理事長の坂爪真吾です。

今年4月、風テラスはNPO法人になりました。相談者の皆様、弁護士・ソーシャルワーカーの相談員の皆様、理事・監事の皆様、インターン・社会人ボランティアの皆様、協働先のSVP東京の皆様、そして活動を寄付で応援してくださる「ふ~サポ」の皆様を含めて、全国各地から多くの方々に、温かいご協力とご支援を頂いております。

そこで、法人内外の関係者の皆様に、風テラスの日々の相談現場の状況をお伝えできるよう、毎月1回、理事長の私が、noteにて活動報告のレポート=月報を書くことにいたしました。

題して、『月刊風テラス ~夜の世界ではたらくNPO理事長の月報~』

私が大学を卒業して起業した当時(2005年)、『渋谷ではたらく社長の告白』(藤田晋:アメーバブックス)という本が話題になって、そこかしこで「●●で働く〇〇のブログ」みたいなタイトルのブログが流行った記憶があります。

その影響もあって、風テラスの前身の団体=ホワイトハンズを2008年4月に立ち上げた際、私は365日、毎日ブログを更新して「その日にやった仕事」「これからやりたいと考えている仕事」を書き綴っていました。改めて振り返ると、まさに尋常ならざる情熱でしたね。。。

2010年代後半からは、ブログからSNS=Facebookやツイッターの時代になり、短い字数で端的な内容をつぶやくことが多くなりました。

ただ、やはり文字数が足りないせいもあってか、何か物足りない。そして最近のツイッターは、見ているだけで無駄に疲れる(笑)。

元々私は書くことが好きな人間なので、この数年間で溜まったSNSの毒をデトックス(解毒)する意味でも、そろそろ「これまでにやった仕事」「これからやりたいと考えている仕事」を、まとまった文章で定期的に発信する、という基本に戻りたいなと考えております。

風テラスのNPO法人化を機に、起業した17年前(23歳!)の初心に帰って、情報発信をコツコツやっていこう、という所信表明です。風テラス関係者の皆様、そしてこれから風テラスに関わりたいと思っている未来の仲間の皆様、ぜひお付き合い頂けると幸いです。

1.【現場の課題】知的障害のある女性と風俗


最近の風テラスでは、軽度知的障害や発達障害、うつ・双極性障害・パニック障害などの女性の方からのご相談が増加しています。

これは、コロナ禍の始まった2020年春から続いている傾向です。一日に寄せられるご相談の全てが精神疾患の方からだった、という日も珍しくありません。

元々風テラスは、障害や病気を抱えながら風俗で働く女性たちを支援する目的で、鶯谷の激安デリヘルの待機部屋から始まった事業です。詳しくは、拙著『性風俗のいびつな現場』(ちくま新書)を御覧ください。

一方で、事業をスタートしてからの数年間、日々のLINEやツイッターDMに寄せられるご相談の中では、知的障害のある女性の方からのご相談は、決して多くありませんでした。

どうすれば、風俗の世界で働く知的障害のある女性たちに支援を届けられるか・・・ということを、相談員チームで議論したことも度々ありました。

転機になったのは、やはりコロナ禍です。ご相談の最初から、軽度~中度の知的障害がある、と自己申告をされる方からのご相談も増えました。

風テラスを開始してから約7年で、やっと当初目指していた層にリーチできるようになった、という手応えは感じています。

ただ、課題は山積みです。あくまで「それなりにリーチできるようになった」というだけであり、彼女たちにどのような支援を行っていけばよいかについては、まだまだ手探りの状態です。

違法な管理売春=援デリの世界では、知的障害のある女性が、悪質な業者(場合によっては父親)に利用されて働かされているケースも少なくありません。

一方で、違法ではない届け出風俗=一般のデリヘルに関しては、自らの意思で働いている知的障害のある女性もたくさんいます。

親御さんから、「知的障害のある娘が風俗で働いているのだけれども、どうすれば辞めさせられるのか」というご相談が寄せられることもあります。

風テラスのスタンスは、「風俗で働くことを否定も肯定もせず、まず本人が今困っていることを解決する」です。そのため、「風俗で働きたい」という女性に対して、頭ごなしに「やめろ」ということはありません。親御さんに代わって、お店をやめさせるようなことも、決して行いません。

しかし、障害のある女性の中には、どれだけ頑張って出勤しても全く稼げない状態、そもそも面接に通らない=働くことすらできない状態にある女性も少なくありません。

そうした女性から「もうやめたほうがいいでしょうか」と尋ねられた場合は、相談員が「出勤しても指名が全くつかない、面接で落とされる、といった状態が続くようであれば、風俗で働くことはいったん諦めて、他のお仕事を探したほうが良いですよ」と伝えることはあります。

しかし、そう伝えると、「私は風俗で働きたいんだ!」と怒りだす人もいます。親も、役所も、ホストも、支援団体も信じられないけれど、風俗だけは信じられる。面接で落とされても、毎日のようにお茶をひいても、風俗に対する信頼は全く揺るがない。

これが良いことなのか、悪いことなのかはわかりません。昔であれば、長期入所型の婦人保護施設に入っていたであろう知的障害のある女性たちが、現在では、各地の激安デリヘルで体験入店や面接不採用を繰り返しながら、そして障害年金と生活保護を利用しながら、どうにか地域の中で生活している、という現実があります。

施設の中で、不自由だけれども安全な暮らしを送ることが、本人にとっての幸せなのか。それとも、地域の中で、様々なリスクに晒されながら、そして多くの人たちをトラブルに巻き込みながら、本人がしたいように、自由に暮らすことが幸せなのか。

この問いに、正解はないと思います。ただ、「本人の意志を尊重しさえすれば、それでOK」という単純な話ではないことは、間違いないでしょう。

家庭や地域に居場所がない、福祉的就労では思うようにお金を稼げない、という理由で風俗の仕事を選ぶ女性は多いです。選択肢が限られている中での自己決定は、「自由」でも「健全」でもないはずです。

「本人の意思を尊重する」だけでなく、働く場所や居場所などの「選択肢を増やす」ことができるよう、風テラスも引き続き彼女たちに寄り添った支援ができるよう、頑張っていきたいと思います。

2.【新しい試み】女の子たちの60分フリー


今月から、風俗で働く女性限定の自助グループを立ち上げました。

題して、「女の子たちの60分フリー」。キャスト同士が、自分自身のことを安心して語り合える、オンライントークスペースです。風俗ではたらいている女性の方であれば、年齢や業種を問わず、どなたでも参加OK。参加費は無料です。

「女の子たちの60分フリー」という名称は、風テラス女子(=インターン&社会人ボランティアの女性チーム)の皆様が、知恵を絞って考えてくれました。

個人的には、こうした自助グループこそが、風俗で働く女性を支援する上での「最後のカギ」になるのでは・・・という期待感があります。

第1回目は、7月27日(水)20時~開催です。全国からズーム(オンライン)で参加可能です。多くの方々のご参加、お待ちしております!

3.【チームづくり】現場に接する人・機会を増やす

2021年4月にインターン制度を導入してから、早くも1年が経ちました。

1年を過ぎて、就職が決まって卒業していかれる方、新しく入って来られる方など、様々な立場・地域・職種の人たちが、色々な形で風テラスの活動に関わってくださるようになっています。長年ワンオペで働いてきた身としては、感無量であります。はっ、目から汗が・・・(涙)。

風俗の世界、そして風俗で働くことに対しては、様々な意見や議論があります。ただ、風テラスのスタンスとしては、そういった是非論や道徳論はいったん脇に置いておいて、風テラスの活動に加わってくださった方には、まずありのままの現場を見てもらうことを大切にしています。

風俗で働く女性たちの大半は、「性的搾取の被害者」でもなければ、「職業差別と戦うセックスワーカー」でもありません。学生であり、会社員であり、個人事業主であり、母親であり、妻であり、一人の生活者です。

彼女たちを世間の色眼鏡で見ること、社会や支援者側にとって都合の良いレッテルを張ることは、百害あって一利なしです。

一人でも多くの人が実際に風俗の現場に触れる機会を設けて、その経験を通して色々なことを考えて・感じてもらい、それを今後の生活や仕事の中で活かしてもらう。

こうした地道な積み重ねが、風俗に対する差別や偏見を緩和する唯一の方法だと考えています。

NPOの使命は、「社会を変えること」の他に、「関わった人たちを変えること」にあると私は考えています。インターンや社会人ボランティアの形で風テラスに関わったことで、少しでもその人の人生にプラスの変化が起きれば、これに勝る喜びはありません。

というわけで、風テラスでは、学生インターン・社会人ボランティアを大募集中です!

おそらく国内に数多あるNPOの中でも、かなりハードな部類に属する業務内容だと思いますが、現場の最前線で、カッコいい弁護士や頼もしいソーシャルワーカーの相談員、個性的なインターンの仲間たち、そして優しくて爽やかな理事長(当社比)と一緒に働ける貴重な機会です。

業務は100%リモートワークなので、全国からご応募可能です。

我こそは、という方は、ぜひご応募ください。

4.【目標】まずは認定NPO法人を目指します

風テラス、目指すべきゴールはたくさんあるのですが、まずは「認定NPO法人化」を目指しています。

全国に5万以上あるNPO法人の中でも、認定NPO法人はわずか2.4%。狹き門です。

夜の世界における問題点の一つは、「ちゃんとした組織がほとんどない」ことです。他の業界であればごく当たり前の話なのですが、夜の世界に関しては、代表者がきちんと実名を出して+事務所の所在地を公開して活動している団体が、非常に少ない。

私たち風テラスも、生まれたばかりのよちよち歩きの組織なので、まずは「ちゃんとした組織」になれるよう、認定NPO法人化を目指しながら、組織づくりに励んでいきたいと考えております。

認定NPO法人になることができれば、寄付金控除・税額控除など、寄付者の方々にもメリットがあるので、早めに実現したいです。

「組織なき理念は寝言にすぎない」と自分に言い聞かせて、この3年間は組織づくり&財務基盤づくりに集中する予定です。

5.【皆様へのお願い】食品が足りない!+助成金情報求む

第七波の影響で、風テラスにも全国から食料支援の依頼が殺到しております。

LINEで告知すると、定員が秒で埋まってしまう状況です。所持金が残り数千円、というかなり切羽詰まった方からのご依頼も多く、まさに待ったなしの状況です。

ここで、直球のお願いです。この夏のボーナスを、ちょっとだけ風テラスに寄付していただけるとありがたいです!月額500円から、ご支援いただくことができます。

毎月の継続寄付、7月31日(日)までに、150名を目標に支援者の方を募集しております。

単発のご寄付も、以下のページから受け付けております。

私自身、生まれてこの方会社員として働いた経験がない=ボーナスというものをもらったことがない人間なのですが、「お前はボーナスのありがたみが全くわかっていない」と批判されることを覚悟で、お願いします。

風テラスの「Amazonほしいものリスト」からも、直接食品をご寄付いただくことが可能です。優先度の高い=必要性の高いものからご寄付頂けると、非常に助かります。

また各種助成金・交付金についても、「こんなところが募集しているよ」「ここに応募したらよいのでは」という情報がありましたら、私のツイッターDM、もしくは風テラス事務局(info@futeras.org)までどしどしお寄せ頂けるとありがたいです。「うちの団体・省庁が募集しているので、ぜひ応募してください」というお声掛けも大歓迎です!

設立初年度で助成金が通りにくい=今のところまだ一つも通っていないのですが(汗)、「財政基盤のない理念は寝言にすぎない」と自分に言い聞かせて、多くの財団や省庁から助成して頂けるような組織づくり、頑張ります・・・!

それでは、次の1ヶ月も、引き続き風テラスへのご支援・ご声援を頂けるとありがたいです!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。


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