コラム【パッと見てGOOD】


 20代の頃を思うと、30代になって足の向く居酒屋も随分変わったと思う。
若い時分に比べて食べる量も減り(ちょっと)、酔った自分のコントロールもいくばくか上手になってきたら(ちょっと)、目まぐるしく人が入れ替わり豊富なメニューと活気のある安定のチェーン店よりも、落ち着いていて顔なじみが今日も誰か行っているだろうというような個人のお店の方が居心地が良い。


 仕事や地域で人間関係が広がり、誰かの行きつけやおススメの居酒屋にホイホイついて行く機会が増えたのが一因で、行くお店は各々自分が先頭でつれてくだけあって良い店に連れてってくれる。お酒に酔って、じゃなくその店に入ったことで気分の良くなる事も多く、冒険心で自ら良さそうな居酒屋の暖簾足を向けてしまう。主観だけど、いい店というのは酒も肴も出てくるより前、暖簾をくぐる瞬間に「いい店だ」と思わせる説得力みたいなのをよく感じる。カウンターとテーブル席と小上がりがあってありきたりな生ビールのポスターが貼ってあって何の特徴が無い店でも、掃除や使い勝手の面で行き届いてる感のある店は、入ったその瞬間に良い印象を受けるし実際料理も美味しく結構混んでいる。


 入った瞬間の印象というのは大事で、それを自分も基準にしていた事がある。住み込みの下積み時代、ペーペーの私はちょこちょこ師匠の部屋の掃除をしていた。結構な量の調度品や本・資料があり、それらのホコリ取り、整理整頓、掃除掛けなどを師匠の外出中にしなければならなかった。せっせとあちこちキレイに整えるが、時間との勝負でもあるので焦ってやってるとたまに落ち度がある。そのためいつも自分は部屋の戸を開けた瞬間に目に入る部屋の景色が「キレイ」と思えるかどうかを最終チェックとしていた。「なんかイマイチだなあ」という時は障子が少し開いてたり、いつも置いてある場所に湯飲みが置いてなかったりと何かしらの手落ちがあった。だから掃除が終わると何回か戸を開け閉めしていた為、周りからは不思議がられていたと思う。
 昨年地元の先輩に連れて行ってもらった店も小ぎれいで手の行き届いた印象を受ける店で、お店の大将も物腰の柔らかい会話の弾む気さくな方で、その時に部屋の掃除の事を思い出した。

 自分の治療院はどうだろう?どんな風に見えてるだろうか?ドアをばたばた開け閉めしては「まだまだだなぁ。」とぼそぼそ。物の配置やらに頭を捻っているのであります。

二葉鍼灸療院

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