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サウジアラビア観光記(プロローグ)

サウジアラビアは旅人界隈では有名な「閉ざされた王国」だった。入国にはビジネス、留学、巡礼ビザ取得などの高い壁があり、ツーリストが入れない国の一つだった。

しかし2019年9月27日に状況は一変する。突如、サウジアラビア史上初の観光ビザ発給開始が公表され、観光できる国へと変わったのだ。


ふと10年前、大学4回生の記憶が蘇る。僕は大学1回生、2回生に混じってアラビア語を履修していた。

語学の単位に困っていたわけではない。実際にアラビア語は第四外国語だった。語学の単位は英仏西と、全て1,2回生で取り終えていた。大学3回生時に英語が一切通じないアラブ文化圏でアラビア語の必要性を痛感したため履修登録をした。(その後、趣味でタイ語、バンバラ語、ドゴン語、ロシア語、スワヒリ語、エスペラント語に手出しして、広くて浅い語学沼にはまるが、アラビア語は沼に入る前だから割と喋れる)

そして、いつか世界のすべての国を制覇するころには、サウジアラビアも訪れてみたい。その際にはサウジアラビア王国大使館へ行き、コーランを読誦してサウジアラビアの巡礼ビザを貰おうとと目論んでいた。

記念すべきアラビア語の1回目の授業。岡真理先生から教えてもらった、アラブのIBMとアッラーに関する用語の解説で、イスラム世界に俄然興味が湧いてきた。

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(参考)
【I】インシャアッラー:直訳は神がお望みになるならば。Maybeの意味合い
【B】ボクラ:エジプト方言で明日
【M】マーレーシュ :直訳はきにするな。失礼な行為をしたほうが使う言葉
これらは、雑に言えば、「たぶんね」「あしたね」「きにすんな」というアラブ世界のメンタリティを端的に表している言葉である。

マーシャアッラー:褒める時などにつける慣用句。直訳は神の心のままに。これを言わないと嫉妬の心で褒められた人に災難が降りかかる
ビスミッラー:食事前、祈り前等の慣用句。直訳はアッラーのもとに
これらは、(先ほどのインシャアッラーも含めて)イスラム教が生活や言語と強く結びつていることを表している言葉である。
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3週間でアラビア語の読み書きを習得し、3語根(3つの子音で一つの意味を持ち、そこから派生して各種単語が作られる)での辞書の引き方に相当苦労しながらも単位を取り終えた。

10年たった今となっては大半のアラビア語の読み書きと言葉を忘れてしまったが、そこで学んだアラブ世界観は僕にとって斬新で今でも深い記憶に残り、アラブ世界観の独自性が持つ魅力は衰えずに常に僕を魅了している。

今回のニュースの話に戻る。サウジアラビアが観光客に門戸を開くというインパクトは、僕にとっては単に訪問可能国が1つ増えるというレベルのものではなく、10年越しの夢が叶うという感慨深いものであった。

そんなわけで、ニュースを見た瞬間にすべての優先順位が変わり、即座にサウジアラビア行きのフライトチケットを予約。明後日、魅惑のサウジアラビア王国に、ツーリストとして堂々入国します。

イラン革命前(1979年)のイランの姿を思い返すと、アメリカの援助を受けて上からの近代化を目指したイランは、街中にスヌーピーとミニスカート女子があふれて、保守派が眉をひそめて、最終的には国民は法学者の統治による神権国家を望んだ結果となった。今回のサウジアラビアの観光産業への進出も、徹底的なレギュレーションを敷いたとしても何かしらの問題は起こるだろうし、それらによって、サウジアラビアが今回開けた扉がまた閉まるかもわからない。だからこそ、今行くしかない。

サウジアラビアが観光業をするのは王国史上初であり、そこにはLonely Planetも地球の歩き方も、暇な人が書いている○○への行き方、みたいなブログも何もない。ドイツ人観光客だっていない。もしかしたら日本人初のサウジアラビアツーリストになれるかもしれない。少なくとも、小さな村においては初めて観光で訪れた日本人にはなれるだろう。

そんな何が起こるかわからない、未踏の「旅」がとても楽しみで、久々にワクワクしている。それでは、サウジアラビアへ観光に行ってきます。

サポート頂けたら、単純に嬉しいです!!!旅先でのビールと食事に変えさせて頂きます。