2024年の6月と7月で読んだ本の感想(19作品)
6月に入ったらちょっと読むペースが落ち着くかな、と思ったんですが。
あまり変わらず読み続けています。
noteの記録は、ちょっと文章書くリハビリみたいなイメージ。
本読んで文章書いて、で、今までと違う脳味噌を使ってみています。
担当こば、という人間が書いているので、一人称が「担当」になります。
RTA in Japanが盛り上がっていたり、コミケがどうだとか台風がとか、色んな話題がある中、通常運転で記事を公開いたします。
●オルファクトグラム
とても好きな本で、多分3回目の再読。
もっと名作特集みたいなところに出てきて良いんじゃないか……?? と常々思っていたんですが、再々読で、「うーん、そこまでじゃないか??」とちょっと冷静になったところもあるんですが。
でも、もう少し話題になっていいと思うんですよね。
多分、10冊好きな本を上げろ、と言われたらいまだにこれは入れると思います。
ちなみに10冊って言われたら皆さん、何を上げます?
担当はパッと思い付くところで、「アクロイド殺し」「シャーロック・ホームズの冒険」「四季(シリーズ4冊)」「燃えよ剣」辺りは上げるかなあ……、という感じです。
あと思い付く候補は、「殺戮にいたる病」「ハサミ男」「夜のピクニック」「大どろぼうホッツェンプロッツ(シリーズ3冊)」なんかも好き。
推理小説系の割合がめちゃ高ですね。
で、オルファクトグラムについてなんですが。
「匂いが見えるようになった主人公」のお話です。
この描写がとにかく丁寧で、凄い。
似たような事を思い付いた事がある人、多分いるとは思うんですけど。
その描写と、その事実を少しずつ主人公が理解していく過程がまあとにかく丁寧。
その分、長い。
でも、文章が読みやすいのとお話の展開が面白いので、サクッと読めると思います。
匂いが見えるってどういう事? って感じですが。
普通の人間のように鼻で匂いを感知するという事が主人公はできなくなり、匂いを視覚情報として「粒子として見る」ような感じるようになってしまう、というお話です。
半透明で宝石のような、原子構造のような、キラキラした様々な色の粒子がクラゲの群れのように空気中に漂っている、という。
その描写の美しさと、「何故そう感じるようになってしまったのか」という推論みたいなところが読んでいて気持ち良い。
一度読んでみて欲しい本。
ただ、ミステリではないかな、と思います。
サスペンスに近い印象。
あまり特定の作家さんを追いかけるタイプではないので、井上夢人さんの本はこれしか読んだ事がなかったんですが。
再々読後に、「クラインの壺」も読んでみました。
こちらも凄く面白かった。
文章が凄く読みやすい方。
個人的には、料亭でのシーン。
あそこもっと読みたかった。
なんなら有名料理人になっていくようなお話も読みたかった。
お勧め度は、5段階で☆5。
●ソードアート・オンライン2
1冊目が凄く良かったので。
しかし2って?続編?
1冊目で凄く綺麗に終わってない??
とも思ったのですが、1冊目の中の時系列で、オムニバス的に色んなキャラと絡んだ新作短編を並べている感じなんですね。
メインヒロイン意外にどんどん女の子が出てくるので、なんとなくちょっとモヤモヤしながら読んだんですが、ソードアートはそういうものらしいので気にせず読みます。
1も面白かったですけど、2も大変面白かったです。
ややこしくなってしまいそうな設定なのに、スルッとまとめられていて、違和感なく読める。
ゲームの中の世界なので設定的には何でもできてしまう「作者の思うがままの世界」感が、なんならファンタジーよりも強く出てしまいそうなのに。
全体にちゃんと説得力があって、ご都合主義感もあまりない。
これを2002年辺りで書いていたというのは、先取りし過ぎですよね。
凄い。
担当も、「オンラインゲームの中に入って出られなくなって云々」みたいなネタを温めていたんですが(多分色んな人が考えてたと思う)、これだけ綺麗にまとめられると脱帽です。
っていうのを、今更2024年に読んで言ってる奴もアレですけど。
お勧め度は、5段階で☆5。
●おいしいご飯が食べられますように
なんか話題の本っぽかったので、図書館で。
(あとから調べたら、芥川賞を受賞されてたんですね)
ただ、わしはちょっと分からんかった……。
個人的には、読んで面白かったものの感想だけ書いていきたい人なんですけど、何読んだか記録していくという目的もあるので、記録。
お勧め度は、5段階で☆2。
あくまで個人的なおすすめ度、です。
刺さる刺さらないは人それぞれなので。
●クマが肥満で悩んでます
図書館で見て、ジャケ読み。
面白かったです。
動物系のこういう本は、安佐動物公園のスタッフの方が書かれた、
「キリマンじゃろ」「ヒヒ通」
とかが凄く良いんですけど。
エンリッチメント、って言葉、知ってました?
ここの試し読みで冒頭がちょっと読めます。
子どもの頃から、NHKとかが作る動物系の番組とか好きだったんですけど、あれに共通する面白さってなんなんだろう。
お勧め度は、5段階で☆4。
●ソードアート・オンライン3
1と2が大変面白かったので。
3も凄く良くできていると思います。
なんか巻数が進む度にニューヒロインが出てくるので、モヤモヤするところもあるんですけど。
アスナを幸せにしてあげてくれぇい……。
これは続きもので、4巻に続く!! という感じで一旦区切れるのですが、他に読むものがいっぱいあってとりあえずストップしてます。
Kindleのセールで安くなっていたので電子でゴソッと買ってあるのですが、手元でいつでも読める安心感からなのか、余裕のステイ。
続きものでこんなきっちり引きがあるお話で、間を空けてるって初めての事かもしれない。
お勧め度は、5段階で☆4。安定し過ぎてて4、って感じなんですけど、でも5かな。
何の心配もなく勧められる面白さです。
ラノベが好きな人なら、って感じではありますけど(でも担当はほとんどラノベ読まないのよね)。
●葉桜の季節に君を想うということ
なんの本を読もうかなー、と考える時に、「名作ミステリ」とかで検索してみたり。Amazonレビューを眺めてみたりしているんですけど。
色んなところでおすすめとか名作として作品名を見ていたので、図書館で予約。
物凄く待ちました。忘れた頃に案内が来ました。
そんなに人気あるのね……?? と思いながら読んだんですけど、なるほど確かに良かった。
とある系譜に属するタイプのお話だと思うんですけど、担当はその系譜を割かし色々読んでいるので、どうしても驚きがちょっと少なかったんですね。
そこが勿体なかったです。
2003年の本なんですよね。
その頃に読んでれば、多分もっと刺さってた。
担当の好きな「ハサミ男」が1999年。
やっぱりタイムリーに読んでて、でずっと自分の中で思い出の1冊になってるんですよね。
あんまり事前情報なしで読んで欲しい1冊。
読後感も悪くなく、連休にゆっくり何か読んでみようかな、みたいな時に手に取ってみて欲しいです。
今更この本をこんな感じで勧めてる奴も、レアか……??
お勧め度は、5段階で☆4。
●夜明けの花園
恩田陸さんは、「夜のピクニック」がもう滅茶苦茶好きで。
生涯ベスト10を上げろと言われたら、多分この1冊は入れるぜ、というくらいに好きなんですが。
他には、「六番目の小夜子」ぐらいしか読んだ事がなくて。
作家をあまり追いかけないんですよね。
そういえば家の本棚に、「蜜蜂と遠雷」が入ったままでまだ読んでいないわい……。
で、この本は、正直良く分からんかった……。
で、検索してみたら、シリーズ作の一部なんですね。
情景描写などさすがの上手さなんですが、ハイレベルの詩を突然読まされているような感覚になり、不思議な気持ちのまま読了しました。
ちゃんと1作目から追っかけた方がいいんでしょうね。
装丁がとても素敵。
お勧め度は、5段階で☆2。(現時点で担当が理解できなかったので、すみません……)
●クラインの壺
「生涯ベスト10を上げろ、と言われたらこれは入れるかも」
といううちの一冊、「オルファクトグラム」を書いた井上夢人さんが。最初にコンビで執筆していた時代のペンネーム「岡嶋二人」で、最後に出した本。
「オルファクトグラム」も凄く好きな本なのに他の作品を全然読んでいないので、この機会に。
ちなみに、岡嶋二人作品も初めて読みました。
この本も凄く良かった。
どうも、井上夢人さんの感覚が好きみたい。
文章が凄く読みやすいんですよね。まず、そこが凄い。
そしてネタバレというか、主題なので特に問題ないと思うんですが、題材としては「バーチャルリアリティ」というやつになります。
これを、1989年に書いているという事にビビりました。
1990年代にもまだ入っていない。
ファミコン現役時代(調べたらスーファミの発売が1990年でした)。
そんな時代にこれだけ先取りしたものを書いたのか、という驚きがとにかく大きかったです。
今読んでも、普通に読める。
テクノロジー的なズレも感じない。
たまたま「オルファクトグラム」「クラインの壺」と連続で、『人間の感覚に感するお話』を読んだ訳ですが。
岡嶋二人時代には、「バラバラの島田、人さらいの岡嶋」なんて呼び方をされていたそうで。
岡嶋二人時代の誘拐ものも読んでみようかな、と思いました。
滅茶苦茶良かった。
電車の行き帰りで、割とあっという間に読みました。
お勧め度は、5段階で☆5。です。
●鏡の中は日曜日
大好きな「ハサミ男」、の殊能将之さんの他作品を読んだ事がなかったので。
どストレートにドカンと炸裂するタイプのトリックではないのですが。
スルメをゆっくり噛んで味わうような感じで、ゆったりと噛みしめるタイプの本、だと思いました。
メフィスト賞を取ったデビュー作の「ハサミ男」のインパクトがデカすぎなんだよな、とも思うのですが。
丁寧に作られた1作だと思います。
ただ、気持ち的にはちょっとパンチが足りなかった。
お勧め度は、5段階で☆3から、~2.5くらい。
●おかしな二人
「オルファクトグラム」「クラインの壺」と読んでみて。
何故、岡嶋二人の2人はコンビを解消する事になったのか気になって。
この本を読んでみました。
日本ではコンビの小説家って、多分物凄く珍しいですよね。
漫画家だったら結構聞いた事があるんですよ。原作と作画でやってるとか、公にはしていないけど2人組であるとか。
小説家だと担当は、エラリー・クイーンくらいしか聞いた事がない。
この本を読む前にwikiとか色んな情報をかなりの後追いで読んでいたのですが(なにしろ、解散が1989年)。
原稿自体の執筆は全て井上夢人さんがやられていたそうで。
それって負担量が違い過ぎない?? 解散の理由ってそういうところからなのかな? みたいな感じで、色んな事が気になるようになりまして。
そうしたら、2人がコンビを組んで解散するまでの事を井上夢人さん側から書いた本があるじゃないですか。
もうコンビの解散は25年前の事になるわけですが、読んでみました。
もっとこう、内情の暴露話みたいな辛い感じの話になるのかなとか勝手に想像していたんですが。
凄く面白かったし、ためになる本でした。
小説家志望の人は一度読んでみて欲しい。
ああ、プロの小説家だってこんなに苦労しながら書いてるんだ、というのが分かります。
それだけでも読む価値がある。
冒頭は、何故2人で小説を書く事になったのか、という出会いとコンビ結成から江戸川乱歩賞を取るまでのお話で、ここが特に面白い。
後半はコンビが解散するまでの流れになるのでどうしても重苦しい話になりがちで、やっぱり成功までの流れが面白いのは当然なんですけど。
何か一発当てたい、という感覚のまま、ズブの素人が小説を書き始めて。
コンビ結成から受賞まで7年。書いては賞に送り続けるんですよね。
出会いからだと、9年? 11年?
これって凄いエネルギーだと思うんです。
一発当てたいみたいな発想から、7年。もう普通に働いた方が良くない? とか思っちゃうんですけど。
漫画家目指して賞に送り続ける人たちと同じですよね。結局、やっぱり書き続けるというエネルギーなんですよね。
ただ、小説は賞に送り続けていつか受賞、っていうのはまあまあありそうな気がするんですけど。
漫画って長期間賞に送り続けてそこから大成、って難しいんじゃないかと思うんですよね。
万城目学さんのインタビューを前に読んだ事があるんですけど。
万城目学さんはデビューまで結構時間がかかっていたような、そんな話をされていた記憶があって。
割と小説家の方のインタビューって、「書いてみたら賞取れた」「頭の中に思い浮かんでいるものを順に書いていくだけ」みたいな事言ってる人が多かったイメージなんですけど。
ちゃんとこんな感じで苦労されてる人もいるし、そういう人の方が実際は多いよな、と思って安心したわけです。凡人としては。
でもなんとなく、長期間格闘した上でも小説って出てくる人はいる気がする。漫画は凄く厳しい気がする。
と、勝手に感じてます。
絵というものが目に見える要素で、絵柄に感する部分って若い感性が必要な事が多いんちゃうやろか、という。
年齢が上になってからデビューして売れる方って漫画でもいるにはいるんですけど、結構いきなり描いて売れて、というパターンだと思います。
長期間賞を取れず、歳をとってから受賞して、というのはかなりレアだと。
漫画を読む人のボリュームゾーンが小説全体に比べると若い方に寄っているのかもしれないし、漫画の方が「若くないと難しい」っていう部分はあるんじゃないかなと思います。
(よく、漫画家になるには年齢は関係ないですか、みたいな質問もありますけど)
2人組で長期間、ネタ出しして長編書き続けてって凄い事だと思います。
しかも片方は既婚。
定職につかずに小説家になるために小説を書き続ける人、って現代だと凄いレアなんじゃないかなー、と。
(自分の職種、業界的に、漫画でならそういう人に沢山触れてるからというバイアスかかってるかもなんだけど)
クリエイター目指しているような人には、是非読んで欲しいです。
図書館で見付けたんですけど、電子でこれは一冊持っておこうと考えています。
お勧め度は、5段階で文句なしに☆5です。
2024年に読んだ本で記憶に残る一冊になりそう。
●美濃牛
殊能将之さんが「ハサミ男」でメフィスト賞を取って、2作目の長編。
ハサミ男が滅茶苦茶好きなくせに、その1冊しか読んだ事がなかったので
「鏡の中は日曜日」→「美濃牛」と読んでみている感じです。
なんで刊行順じゃないのかって言うと、図書館で予約したらそういう順番で取り置きが完了したからです。
まず感想としては、長い。
文庫で750ページ以上。770か780くらいあったと思います。
長いよ。
「姑獲鳥の夏」の文庫版が、630ページ。
「魍魎の匣」の文庫版が、1060ページ。
と考えると、750超えって割と途方もない感じがします。
週に2~3冊ぐらいのペースで読んでるんですが、さすがにこの本は1週間ぐらい(仕事に通うウィークデー5日分くらい?)使った気がします。
ただ、あまり長さを感じずに読む事はできた気がします。読みやすい文章だったのと、出てくる登場人物も全体的にユーモラスというかキャラが立っていて、楽しく読める。
でもやっぱり、それでも長い。
できれば最初の事件は全体の4分の1くらいまでに起きて欲しいな、というのが個人的なお気持ちで。なかなか事件が起きないと、それだけでもう何の話を読んでいるのか分からなくなってきちゃう。
あんまりに長過ぎて、1つ目の結構衝撃的な事件が起きてももうインパクトを感じられず。長いお話の中の1ブロック、みたいな気持ちになっちゃいました。人が殺される話を連続で沢山読み過ぎなのかもしれませんけど。
4月からこっち、死ぬシーン何人分読んだのかちょっと数えてみたいですね。
死体の数とか。
多分、色んな作品のオマージュが入っている感じで、一番色濃いのが横溝正史なのかな、と思います。
でもあんなにおどろおどろしくなくて、メインの探偵キャラが飄々としているので、全編にそこはかとないユーモラス感が漂っています。
でも金田一耕助も考えてみたら、飄々としていて、どこかユーモラスですよね。
トリックもちゃんと考えられていて、意外な犯人みたいなのも上手くて、全体的に凄く上手く作られた作品だと思うんですけど。
読み終わってみたら、良くできてるなー、という感じの1作。
読んでいる途中は、お勧め度は5段階で☆2、くらいの気分だったんですけど。
良かったです。最終的に、☆3で。
色んな人の考察とか読んでみると面白いかも。
あと文庫版の解説を書いてたのが池波志乃さんだったんですけど。
文章が滅茶苦茶上手くてビックリしました。
●GOTH(夜の章・僕の章)
ちょいちょい読んでない有名作品がありますけど、人間そんなにあれもこれもチェックできませんよね。
あと、面白かったものを読み返す、見直す癖があるので、漫画も映画も本も新しいものがなかなか取り込めません。
その点、音楽って、ながらで取り込めるからいいよね。
各所で評判を聞きつつも踏んでこなかった乙一さん。
読むなら今なんじゃないか!? と、「通勤中に読書しようぜ運動」熱が冷めないうちに手を出してみました。
ゲームとか映画とか、触る前、見る前から、「こんなかな?」ってなんとなく想像するじゃないですか。
かなり思ってた方向とイメージが違いました。
思ったよりも、しんどい。なんならちょっと、精神的にしんどい、かも。
でも、短編集でそう思われるのって凄いですよね。
担当の傾向として、大掛かりなトリックとか画期的な犯人の隠し方とか、そういうのにグッときてしまうので。
文学的な面白さとして読ませるものはパンチが足りない印象になりがち。
という印象のまま読んでしまった1作。
短編1本がビックリするくらい短いので、この分量でこれだけ表現できるのか、という驚きがありました。
長いものを読むのは最近では苦ではないんですけど(昔は今何ページ読んでるのかページ数をチラチラ気にしながら読んでました)、やたら長いよりはコンパクトな方が好きかも。
「これって推理小説なのかなぁ……?? 文学っぽいな」と担当的には感じる枠なのですが、全体的に結構しんどいお話だと思いました。
鬱々としているというか、タイトルからの印象そのままという感じがします。
精神的に疲れている時に読むと結構しんどそう。
「殺戮にいたる病」は全回フルスロットルで祭りのような狂気を振りまく感じなんですが、こっちのGOTHは花壇にあげた水が静かに土に吸い込まれていくような、そんな静かな狂気という感じです。
森博嗣さんが良く、「殺人犯の考えている事なんて(なんなら隣の普通の人でさえ)どうせ分かるわけがないんだから、動機の独白とか解説部分は無駄」みたいな事を書かれてた気がするんですけど。
そういう感じをヒシヒシと感じしてしまうお話でした。理解不能な人たちの行動をずっと観察する、言ってしまえば「気持ち悪さ」。
ヒリヒリします。
「本格ミステリ大賞 受賞」という響きから想像していたお話の方向とちょっと違ったのと、やや好みと違うという事で。
お勧め度は、5段階で☆3です。
●あわせ鏡に飛び込んで
岡嶋二人→井上夢人、とコンビを解消してソロの作家になった井上さんの本を。
「オルファクトグラム」「クラインの壺」「おかしな二人」と読んで、4作品目。
多分、いくつかゆっくり追いかけると思います。
岡嶋二人名義の、「99%の誘拐」「そして扉が閉ざされた」。
井上夢人名義の、「プラスティック」「ダレカガナカニイル…」「メドゥサ、鏡をごらん」辺りは読んでみたいなと思っています。
井上さんの本は他にも気になるものがちょこちょこあるので、ゆるゆる追いかけたい。
「あわせ鏡に飛び込んで」は、30ページ程度のかなり短い短編が10本収録された短編集です。
「GOTH」の方も短めの短編集が集まっていて読みやすいのですが、こちらの方がノーマル、という感じです。
GOTHは尖りまくってて、触るもの皆傷つける感じなんですよね。全体的に、ジメッと、した感じがする。
「あわせ鏡に飛び込んで」の方はもうちょいフラットな文章で、アマゾンレビューで書いている方がおられたんですが、
と書かれている内容が正に、という印象です。
星新一さんの文章ってカラッとしていて、でも乾きすぎてもいなくて人を突き放すでもなく。
そんな感じの印象。
それよりもうちょっと湿った、お二人の間のイメージ。
オーソドックスな短編集という感じで、読みやすかったです。
例えば担当の好きな森博嗣さんだと、結構短編集は難解に感じる事が多くて。
説明し過ぎない、というところが森さんのスタンスかなと思うのですが、短編集だと次元が1つ上とか、ちょっとズレた別の次元で展開されているように感じる事もあったり、難しいんですよね。
解説を後から読むと(解説もしない作家さんなんですけど)、狙いが分かったりとか。
仕掛けとか、1アイディアを膨らませてるとか、その上で変に外し過ぎていなくて読みやすい。
お勧め度は、5段階で☆3です。人によっては、とか、読む時期によっては~3.5、くらいあってもいいかも。
●地雷グリコ
これは面白かった……!
そして世の中で話題になってたんですね。
あんまり深く考えず、おすすめ本を検索したらその中に入ってたので手に取ったんですが、「葉桜の季節に君を想うということ」とかと同じく、ちょっと古い作品なのかと勝手に思ってました。
現在進行形で話題になってんじゃんね。
どんだけトレンド把握できてないのよ、って話なんですが、面白かった。
半分くらい読んで気付いた。ん?「体育館の殺人」の人?
2年くらい前に本屋で文庫が平積みされて特集されてて、ジャケ買いして読んだ覚えが。
「日本のエラリー・クイーン」みたいな呼ばれ方をされてるとかないとか、そんな情報も当時読んだ気がするんですけど、そこまで「体育館の殺人」が刺さらなかったんですよね。
その後ジャケ買いで「11文字の檻」も買ってたんですけど、これまた同じ作者だとは自分で認識してなかったみたいで。
今回本棚で見付けて、「あれ?全部同じ作者さん?」とビックリしました。
さらに「11文字の檻」をパラパラめくり直してみたら、これ半分くらいしか担当、読んでませんね……??
なんで途中でやめちゃってるのか全然分からないんですけど、読みかけて途中で読むのをやめる、というのは自分にとっては相当にレアな事で。
しかも冒頭読みかけて読めるならまだしも、半分読んでやめるてるというのは何かお疲れだったのかな? と心配になるくらい。
みなさんも一度、こちらの本を読んでみましょう。
「11文字の檻」もきちんと読み直してみようと思いますが、「地雷グリコ」の話。
「体育館の殺人」と結構イメージが違うな、とビックリしたんですけど、検索してみたら漫画原作とかもされてるんですね。
めちゃ多才……!!
「本格ミステリ大賞」を受賞してはいるんですけど、人は死なないです。
安心して読んで。
誰かが大変な目に遭ったりもしない。
イメージ的には、西尾維新さんとカイジとかイカゲームとJOJOを足して爽やかな感じにして出力した感じ。
ジャンプとかで連載できそう。
担当はミステリ好きですけど、ミステリっぽくない作品。でも他の青崎さんのミステリよりも好き。
中高生ぐらいの若い人にも読んで欲しい。いや、若い人こそ是非。そして、活字って面白いんだな、って気付く人が少しでも出ると良いなと思います。
昔のフォーマットで言うと、ちょっとラノベに近いような印象を受けました。最近、ラノベっぽい感じの作品を丁寧な想定で年齢層高めなところに当てていって、それでヒットしているものが結構ある気がします。
ここでお勧めするまでもなく、色んなところに情報が出ていると思いますけど、読んでみて欲しい1作。
お勧め度は、5段階で☆5。
担当的2024年読んだ本、Top 5とかに入りそうなぐらいの良さでした。
●イニシエーション・ラブ
今更感溢れるものを次々に読んでいますが、多分この本が出た頃は週刊アシやってて本を読む時間とか全然なかったんでしょうね。
あとなんとなくタイトルと表紙の感じからして、「ケータイ小説」と呼ばれていたジャンルの一角だと勝手に思ってたのもあります。
別にケータイ小説というものが良いとか悪いとかそういう事ではなく、「担当には合わないジャンルだな」と思って読んでなかった訳です。
作家さんの名前が女性っぽく感じてしまったのも、きっと一因。
でもお勧め本とか検索した時に、「十角館の殺人」「占星術殺人事件」「アヒルと鴨のコインロッカー」「葉桜の季節に君を想うということ」「向日葵の咲かない夏」辺りと一緒に良く出てくるので、1回読んでみなければと思いつつ先延ばしになっていた一冊。
これも「地雷グリコ」と同じく、ミステリなの? という1冊。
ミステリなのかどうか良く分からないし人は死なないし、犯人を探すでもないし。
「何かしら仕掛けがあって読者が騙される」ようなものを、世界はそれをミステリと呼ぶんだぜ、なんでしょうかね?
事前情報ゼロで楽しく読んでいたんですけど、激烈有名な作品なので、な~んとなく物語の構造は推測がついていました。
で、今年はこれ系のお話をたまたま沢山掴んで読んでいたので、まあパターンとしてはこの系統だろうなー、と思いながら読んでいたんですけど、結局最後まで分からず。
ちょこちょこ違和感感じるところはあったので、ここが伏線なんだろうな、と思いながら読んでました。
正確に言うと、テレビドラマの事についてやりとりしてたとこで分かったと言えば分かったんですけど、もう最終盤ですね。
このお話の良くできているところは、二段階に仕掛けがあるところ。
テレビドラマのとこの違和感は、二段階目も一気に明かしてくれるくらいの感じではあるんですけど。
ミステリあまり読まない人とか、普段はあまり本を読まないという人とか、基本は恋愛ドラマなので若年層の女性とか、そういう人でも読みやすそうな本だと思いました。
恋愛描写のところが上手くて、普通に恋愛小説としても読めそうな筆致が凄い。
あと、遠距離恋愛怖いなー、と思いました。
お勧め度は、5段階で☆4~4.5くらい。
●三体(1巻)
こりゃまた、今更なやつが来たな、と思ったでしょ?
実はちゃんと以前に読んでるんですよね。
最初にハードカバーが出た時に知人が面白いと言っていたので購入して。
でも一旦寝かせてしまって、2021年くらいの頃にコロナで暇になって読んだ気がします。
その後2巻の上下をKindleセールで購入したまま、これまた寝かせてしまっていたので、よしシリーズ読破するぞ! と1巻から読み直し。
三体は割と文句なしに面白い本だと思います。
ちょっと前にこんな話が話題になってたんですけど。
首がもげるくらい頷いてしまうんですよね。
SF小説、なんか読めないんですよ。読むのがしんどい。
話の内容とか構造がなんか堅いのかな……??
読者層含めてなんか、「ハードなジャンル」って感じがしちゃうんですよね……。
例えば漫画なら、「攻殻機動隊」とか「銃夢」とか。好きで読んでるんですよ。あんまり思い付かないけど、「Dr.STONE」とか「プラネテス」とか「度胸星」とか?
多分、未来永劫言い続けますけど、「度胸星」はなんとか最後まで描ききって欲しい……。
小説できちんと読んでいるSFって、「虐殺器官」くらいしか思い付かない……??
もしハルヒがSF小説として許されるなら、「涼宮ハルヒの憂鬱」も読んでる。他にも、「銀河英雄伝説」がSF枠なら……。あとは「パサイト・イヴ」「リング」とかもSFかなぁ……?? 「アルジャーノンに花束を」も読んでる。
属にSF小説が好きな層の中で言われる、履修必須みたいなラインナップは全然読んでいなかったり、読もうと思ってもなんか詰まっちゃったり。
担当が考えるSF系の履修必須っていうのは、「夏への扉」「星を継ぐもの」「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「宇宙戦争」とか、そういう作品。
で、三体の話なんですが。まず、導入が読みにくいんですよね(担当はそう感じた、という話なんですけど)。中国が舞台で人名に馴染みがなく、日本以外の国の過去の歴史が絡んでくるので知識もあまりなく。
という感じで、初めて読んだ時は読みかけてちょっと止まっちゃったような記憶があります。
でも最初の章を抜けると、あとは普通の面白い小説。SFという分類を忘れて、「先が気になるお話」という組み立てになっていると思います。
そこにSFとしての科学の知識や用語を上手く入れてきてるなー、というのが全体の印象。
宇宙に関する本とか解説動画を見ていると、想像もできないくらいに宇宙ってクソデカくて謎だらけだなと思うんですけど、その途方もないスケールをザワザワ感とともに読者に感じさせてくる感じが、凄く上手い。
遠いどこかの脅威、ではなく、今この隣にある脅威かも、という感覚。
実写ドラマも配信されていて、Netflixの方ではNetflix版が見れて。
アマプラの方ではテンセント版の方が見れるらしいので、そっちを視聴している人もいるかもですけど(担当はあまりアニメとか実写になったものを追いかけない)。
一時期しこたま話題になったので、ある程度概要は知っているという人も多いかとは思います。
「三体問題」という、古典的な物理学(力学?)上の問題が1つのテーマに据えられたSFなんですけど。当然のことながら、三体問題が何なのか、という事を理解していなくても楽しめる作りになっています。
担当は三体問題、というものについて全く知りませんでした。単語として知ってるのは、「ポアンカレ予想」くらい(昔NHKで見た)。
こういう研究上の重大なテーマを扱うようなSFって敷居が高い感じしちゃうんですけど、とても読みやすい。
こういう学術上の問題をエンタメに上手く落とし込むのって凄いですよね。
2巻以降も楽しみ。
お勧め度は、5段階で☆5。
●向日葵の咲かない夏
おすすめ本として良く名前が出てくる本なので、読んでみました。
なんかもう、出だしから辛い……。
辛い本、しんどい本は、歳を取ったからか読むのが昔よりもしんどくて。
「貧困に喘いでいる」「虐められている」「虐待されている」みたいなのはかなりしんどい。
「職業軍人等が拷問される」「殺され方がエグい」みたいなやつはまあまあ読めるんですけど、特に子どもが可哀想な目に遭っているようなものは本当にひたすら辛い。娯楽として作品を消費しているのに、しんどいよぉ……、みたいな。おじいちゃんになってから、涙もろくなってしまっている気がします。
あとはパッと思い付くとこだと湊かなえさんの「告白」とか、真鍋昌平さんの「闇金ウシジマくん」とか、ああいうのエンタメとして消費するのしんどい。若い時は楽しかった。おじいちゃんになってしまった。
あと、1回しか見てないけど辛すぎてもう2度と見れないというのが、「ライフ・イズ・ビューティフル」です。これは若い時に見たけど、辛すぎる。映画としてはめちゃ良くできていると思います。破壊力が凄い。
で、「向日葵の咲かない夏」についてなんですが。まず、文章が読みやすい。
担当は速読の練習をしていた事がある、ってちょいちょい書いてるんですけど。
頭の中で音読するのを防ぐため、脳味噌が元気な時は2行いっぺんに読んだりします。
できるの?そんな事?? って思ったりしますけど、訓練するとできるんですよね。調子が良い時は3行とかできてたし、ガチで速読が速い人は「1ページ毎に読む」に近い事ができるみたいです。みたい。教室とか通った事がないし達人に実際に会った事がないので伝聞なんですけど、訓練してたら近い事ができるようになってくる感覚がある。これは広い読みとか飛ばし読みとはまた違う技術なんですけど。でも、難しい本は無理なんですよね。知らない専門用語が沢山出てくる本は2行読みなんてとてもじゃないけど無理だし、読むスピードはやっぱり落ちる。
三体は時間かかるところ多かったです。
この本は読みやすい。
2行読みできる。でもちゃんと頭に入る。情景描写が上手いのかな……??
でも、読んでいて「?」は多い。
ミステリカテゴリに入れられている事が多い気がしますが、この作品は、「ホラー・サスペンス」じゃないかなと思いました。
ホラーサスペンス大賞の特別賞取ってますしね。
本格ミステリ大賞の候補にもなってるらしいですけど……。
今年は(というか4月以降)このタイプの作品を沢山接種してきた気がするんですが、やっぱりミステリではない気がするんだよなぁ……。
そして違和感を感じる箇所は多いので、やっぱり色々考えながら読んじゃう。
この本は情報の大事なところが結構伏せられたまま進んでいくので、やっぱり「ホラー・ミステリ」になるんじゃないかなー? と思いました。
悪くはないけど、ちょっと合わなかった。
文章上手いし構成力あるし、仕掛けもやりたい事も分かる!
でも、合わなかった、という感想。
お勧め度は、5段階で☆2.5~3くらい。
「イヤミス」と呼ばれる系譜の作品じゃないかな。
スカっとするもの、カラッとした面白を求めたい。
●毒入りチョコレート事件
7月最後に読んだ一冊。
「毒入りチョコレート事件」と頭の中でごっちゃになってましたね。
もしかするとオマージュ元だったりするのかな……??
4~5月で22作品。6~7月で19作品なので、ちょっと減りましたね。段々速読ができなくなってきてる感じがします。
速読って集中力と体力が必要なんですよね。
先に読んだ、「向日葵の咲かない夏」とはまたちょっと違う感じで、文章の上手い方だなと思いました。
キャラを漫画的に立てる感じ。
文体のイメージとしては、「交換殺人にには向かない夜」を思い出しました。「交換殺人には向かない夜」の東川篤哉さんの作品で一番イメージしやすいのは、「謎解きはディナーのあとで」のシリーズなんじゃないかと思うんですけど。
ああいうちょっとライトで読みやすくて、比喩表現も文学というより漫画表現的な捻りがあって。で、キャラをを立てるような見せ方をしてきて。
もう完全に個人が感じた印象の話なわけですけど。
読みやすいと思いました。
しかし、今年はこれ系の話を掴む確率が激高いな……。結局推理小説で新しい驚きを、ってなると、こういうタイプになりがちって事なのかもしれませんが、沢山読んでると警戒してきちゃうから段々気付いてくるんですよね。
一応、クローズドサークルものの名作、というカテゴリで手に取ったんですが、これはそれより大枠で別ジャンルな気がしました。
クローズドサークルミステリ、っていうのはあれですね。
「絶海の孤島を訪れたら嵐で船は欠航。この島に一行は閉じ込められたのだ……!」
みたいな、外界から隔離された狭い範囲の中で起こる事件を主題としたミステリです。
「そして誰もいなくなった」が最初にやったのかな? と思っていたんですけど、もっと前に何作かそれっぽい作品があるみたいですね。
金田一少年やコナン君と無人島とか行くと絶対ヤバそう、と思わせてしまう、あのパターンです。
物語を作る上での狙いは分かるけどちょっと散漫な感じもするし、という煮えきらない感じ。ちょっと全体的にぼかしの処理がきつくて焦点が合わない、ブラーかけすぎ、みたいな感想。
お勧め度は、5段階で☆2~2.5くらい。
読みやすいし面白くないわけじゃないんだけど、ちょっとパンチが足りなかった。
●六枚のとんかつ
多分、「バカミス」という言葉を最初に作った作品じゃないのかな……??
と思ってwikiとか見てみたら、別にこの作品が先駆けな訳ではないのか……。
ミステリなんだけどミステリじゃない。
おふざけを全力でやっている感じです。
大昔に1回読んだ事があるんですけど、「どんな感じでくだらないお話なんだっけ?」という感覚で読み直し。
いや、失礼な書機なんですけど。「くだらない」って。
メフィスト賞という、推理小説界隈ではそこそこ有名な賞を受賞してのデビュー作なので、本格推理小説を期待していたらそりゃ怒り出す人もいただろうな、という感じです。
短編集でかなり短めの話が沢山入っているのですが、どれもちょっとしょーもない推理ものになっています。
大真面目にこういう事をやる感覚が凄い。
お馬鹿な切り口なんですけど、しっかり作られてもいると思います。
表題作の、「六枚のとんかつ」とか結構好き。
当時は「占星術殺人事件」を読んでいなかったので、六枚のとんかつがオマージュ作品だって全然気付いてませんでしたね(一応作中にもそう書いてあったけど)。
4月に「占星術殺人事件」を読んだ時にトリックが最終的には分かったんですけど、この時の記憶がうっすら残ってたのかしらん……??(でも、子ども向けの推理クイズ本みたいなので見たような気がするんだよな)
文体が読みやすいけど軽過ぎるとも取られかねない感じだったり、あまりにもくだらない切り口のお話があったり。
で、色眼鏡で見られているような気もします。
しかし滅茶苦茶お勧めなのかというとそこまででもなく、でも変わったタイプの推理小説に興味があったら一度どうですか? という感じ。
お勧め度は、5段階で☆2~2.5くらい。
「イヤミス」という言葉がありますが、「バカミス」ね。