17.農地戦略①


今から4年ほど前、サラリーマンだった私は兎にも角にもまずは農地を確保しなければと、グーグルマップで使われて無さそうなハウスを見つけては、週末に現地を確認しにいく日々を送っていた。

草木が生い茂っている露地だったり、明らかに数年は使われていないサビだらけのハウスだったりと、候補地はいくらかあったが、実際に賃貸契約の交渉をしようと思ってもまったくとりあって貰えなかった。

恐らく農業経験のない地域外の人間を警戒していたのだろう。

そんな中、現在借りている農地は義父の紹介で契約したもので、地主は既に農業からリタイアしている高齢者の方である。地主の親戚に頼んで米を栽培してもらっていたが、その方も高齢になり、もう管理できないということで、私が貸してもらえることになったのだ。

一般的に、農業を開始するにはその地域で農業研修を積んで、そこで築いた人脈を元に農地を紹介してもらって、借りて、資金が準備出来るようになったら購入する、という流れになる。

このように農地を借りるということは一筋縄ではいかず、人脈と信用がないと農地を借りることは出来ない。

また、購入するにしても一定以上の面積(私が就農した古賀市では5000m2以上)を耕作し、地域の農業委員の許可がおりないと農地は買えないものなのだ。

将来的にチェーン展開を考えているが、この農地の確保は非常に悩ましい課題となっている。

そもそも、借りるか買うか、この2択も一長一短ある。

借りる場合その価格は1000m2で年間5000~15000円程度である。しかし、ハウスを建てるとなると、契約期間が短くても10年間となるため、その間売却出来ないかリスクを考えると貸主としてはあまり気が進まないようである。

一方で買う場合は、その価格はマチマチである。都市部近郊で1000m2で100万円程度だという話があれば、少し離れると1000m2で50万円という話もある。安く購入しても30年借りて元がとれると考えると、その間の事業環境の変化や天災等のリスクを考えると借りる側としては購入するメリットは小さい。

さらに農地の種類によっても価格は変わってくる。一口に農地と言っても農振農用地か?第一種、第二種、第三種のどれか?市街化調整区域か?などで大きな違いがある。

農振農用地の場合、転用は禁止なので分かり易いが、第一種農地の場合は原則禁止という、曖昧な区分となる。

第一種農地の場合、例えば自治体が工業団地にする、宅地にすると決めた場合、農業以外での開発が認められることも多く、そうなるとその農地は高額で売却出来る。

こういった例が多いため、都市部近郊の農地を保有する地主としては簡単には農地を手放すことはないし、長期間貸すことに対しても慎重になる。

こういった状況に加え、当該地域の需要を考慮した上で、適切な栽培面積を見極めて農地を確保していく戦略を考えていく必要がある。


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