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ヘルパー日記2

私が勤務した事業所の場合
登録ヘルパー・・・時間給・身体介護1時間○○円、家事援助1時間○○円と決まっている。
         働く時間は自分で選べるため、週一回2時間だけ働くという人もいる一方 
         毎日びっちりスケジュールを入れて働く人もいる。
         一日4,5軒、週5日働けば常勤パートより収入が多くなる。が、きつい。
常勤パート・・・時間給であることは登録ヘルパーと同じだが、1日8時間の給与は保証される。
        キャンセルがあった場合、事業所で事務の仕事をこなす。有給、特別給与あり。
正社員・・・月決め給与・有給、特別給与あり。サービス責任者(ヘルパーの勤務表や、
           介護保険の実績表を作成する。トラブルが発生したら対処する)はこれにあたる。
私の場合、登録から始め、常勤パートになった。

 Kさんは、バス通り沿いの5棟もあるマンションの一室に住んでいた。バス停からも近く、訪問ヘルパーにとってはありがたい場所だった。バスを乗り継いでやっとバス停に降りても、そこから徒歩20分という場合もあるからだ。バスを乗り継ぐのは連絡がスムースにいくとは限らないし、バス停が離れていたりするとややこしく、時間がかかる。初回訪問はサービス責任者、引継ぎの場合は前任者と一緒だから安心だが、一度では覚えきれない場合もある。会社の詳細な地図を見て頭に入れて出かけるのだが、時間は迫るは、場所はわからないは、で大汗をかいたことも一度や二度ではない。(スマホのナビなどない頃です)

 さて、Kさんはまだ60代、手すりにつかまってやっと歩ける程度、お宅でのサービス内容は入浴介助、着脱介助、お風呂掃除だった。まず、お宅に着くとお風呂のお湯をはるところから始めた。介護保険のサービスは自立支援といって、ご本人ができることは、手伝わないで見守ることになっているため、Kさんがゆっくり着替えるのを見守り、浴室まで支える。バスボード(樹脂の板のようなもので片方に取っ手がついている。タイトル上の写真)を浴槽の上にはめる。洗い場でざっと体を流したKさんが洗い場からボードに腰かけ、手すりにつかまりながら身体を回転させ、足を浴槽に入れる。浴室に取り付けられた手すりに持ちかえ、少し腰を浮かせたところで、さっとボードをはずし、浴槽の中の低い椅子に座らせる。この動作をヘルパーは介助する。タイミングと、呼吸を合わせることが大切。浴槽に座るとヘルパーも一息ついてちょっとお話なんかも。Kさんは、右肩から背中に見事な入れ墨のある方で、つい聞いてしまった。

「この模様は何ですか?」
「唐獅子牡丹よ」
「なんで右肩なんですか?」
「仁義きるとき右肩出すからな」
「刻むとき痛かったでしょう」
「そりゃあ、まあな」この辺は素直なのでつい
「麻酔なんかしないんですか」と聞くと
「やくざが麻酔なんかするもんかい」という展開になってしまった。

 入浴がすむと、ビニール手袋をはめて身体のあちらこちらの湿疹に薬を塗る。場所によって違う薬なので、覚えるまでメモをみながら間違えないよう必死だった。怖い人かと思ったら、ざっくばらんで感じのいい方で、「ほら、薬そこ塗るのは、そっちの棚にあるよ」などと、教えて下さった。ご本人がべッドに入って気持ちよさそうにウトウトし始めると、浴室の掃除をして終わりになった。

 奥様が毎回テーブルの上に、アンパンと「冷蔵庫の牛乳を飲んでください」というメモを用意してくれていたため、ご好意に甘えご馳走になった。夕方6時ごろだったため、空腹でとてもありがたかった。料理屋さんで働いているという奥様とは一度だけお会いしたが、岩下志摩のような着物姿ではなく、働き者、という印象の方だった。私をじっと見て「あなたはヘルパーやる人じゃないね」と言った。それがどんな意味か未だにわからない。

             ヘルパー日記2おわり



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