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ヘルプ商店街

プラスティックの洗濯ピンチはある日突然壊れる。長年陽や風にさらされて劣化してきたものが、力を加えられて持ちこたえられなくなるのだ。バシン!と音を立てて砕け散った破片を集め、大事に手に包む。なにか切ない。

仕事帰りに寄る商店街は活気に満ちていた。
「お姉さん、今日春キャベツ安いよ、90円、持ってかない?」
八百屋のおやじさんのだみ声に、つい、
「じゃもらおうかしら」
となる。

隣はお惣菜や。手作りの肉じゃがやひじき煮、筑前だき、サバの味噌煮などが一パック100円。ご飯さえ炊けば、夕ご飯はこれで充分だ。

ところが、この商店街に異変が起こった。近くに大きなスーパーが開店したのだ。閉店に追い込まれる店が続出し、たちまちシャッター通りになった。最後まで頑張ったあの八百屋にも、開くことのないシャッターがきしんで降りた。
ヘルプ!と叫ぶように。

バシンとこわれた洗濯ピンチとどこか似ている。力尽きた商店街は、夕日に優しく包まれて眠っているようだ。

         
            おわり(411文字)


たらはかにさんの企画に応募させていただきます。
今週のお題は「ヘルプ商店街」です。
無難になってしまうストーリーに味をつけようと、ピンチにヘルプと
つなげてみましたが、いまいちでございます。😅


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