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インシュアテックが発展途上国に与える影響

金銭的なリスクを商業的に分配するという概念は、少なくとも古代メソポタミア時代から存在していました。紀元前1750年のハムラビ法典では、商船が海で遭難した場合の費用を補償する規定が設けられていました。このように保険は世界で最も長い歴史を持ち、最も変化の少ない産業の一つです。

9つの技術的進歩

Deloitte社は、保険業界で起こっている市場構造の破壊的変化を評価するために、最も重要な9つの技術的進歩をあげています。

1.価格比較サイト(Price)

2.モバイルインターネットでのやり取り

3.サイバーリスク保険

4.テレマティクスベースのサービス

5.価格比較サイト(Value)

6.ソーシャル・ブローカー

7.ピア・ツー・ピア保険

8.シェアリングエコノミー保険

9.自動運転車保険


インターネットアクセス

リストにはありませんが、上記トレンドに内在しているのは、これらが発展途上国でどのように展開されるかということです。

これらの多くはインターネットへのアクセスに依存していますが、その普及状況は世界的に非常に不均一です。
例えば、Pew Research社の調査によると、インドとバングラデシュでは求職者の大半がインターネットを利用して仕事を探していますが、インドでは20%、バングラデシュでは11%と、人口のごく一部しかインターネットにアクセスしていません。その人口はこの二カ国だけで14.9億人おり、インシュアテックのユーザー層を大きく拡大することに繋がります。

ソーシャルメディア

タイ、フィリピン、インドネシア、ナイジェリアなどの多くの途上国では、ソーシャルメディアを利用していると答えた人の数が、インターネットを利用していると答えた人の数よりも多いという奇妙な現象があります。
これらの国では政府の規制により、インターネットにアクセスできるのはソーシャルメディアだけという可能性もあります。

いずれにしても、インシュアテックスタートアップは、ウェブやネイティブアプリへの投資と、Facebook Messengerのような特定のソーシャルメディアチャネル内で動作するアプリへの投資価値を精査する必要があります。

インシュアテックが持つ市場をリセットする力

このような数字を見ると、インシュアテックがリープフロッグ効果を加速させられることがわかります。リープフロッグ効果とは、固定化されたビジネスモデルや既存の市場リーダーを克服する必要がないために、発展途上国が先進国を飛び越えてより高度なテクノロジーを一足跳びに採用する現象を指す言葉です。新興企業にとっても、新興企業のパートナーである大手企業にとっても、これは保険に対する固定概念を覆すリセットボタンを押すようなものです。
途上国でのマイクロローンに続き、マイクロインシュランス事業者は、低所得地域で生命保険や健康保険などの保険を提供するために、国連の支援を受けています。例えば、AIGウガンダは、10年前にはすでに利益率が18%で、保険金請求率は31%以下でした。

次のステップとして、所得格差が大きく、起業家精神が根付き始めている地域では、ピア・ツー・ピアやシェアリング・エコノミー型の保険を提供する企業が登場することになるでしょう。世界経済フォーラムでは、このような変革のモデルとして、ケニアやジャマイカでの取り組みを紹介しています。

世界の人口の80%以上が発展途上国に住んでいます。それらの国々は、不確実性が最も高い場所であり、人々がリスク分散することを最も必要としている場所でもあります。通信インフラや金融インフラの進歩は文明の歴史上かつてないほど速いスピードで進んでおり、自己改革を劇的に行うチャンスです。これは大げさな話ではありません。インシュアテックの可能性を示す単なる事実にすぎないのです。

(本記事は、Plug and Play HQに掲載されている記事を元に作成したものです)