24時間で法人設立!? 2月に更新された「法人設立ワンストップサービス」は、今までと何が違うのか?
通常業務をしながらの会社設立は、やっぱり大変!
取引先の信用が上がり仕事の幅が増える、フリーランスでは認められない経費を計上して節税につなげる……。フリーランスにとって「法人設立」によって生じるメリットは少なくありません。
しかし、いざ法人を設立しようとすると最初に立ちはだかるのが、その“手間”です。
具体的には、まず会社の基本規則を定めた「定款」を作成し、公証役場で印紙代を4万円支払って認証してもらって(合同会社の場合は不要)、法務局で登記代15万円(株式会社)or 7万円(合同会社)払って登記します。
その上で、登記の証明書や印鑑証明書を法務局に提出したり、法人設立届書や青色申告の承認申請書を税務署へ、役員報酬を出したり、社員を雇ったりする場合は、年金事業所や労働基準監督署へも提出が必要な届け出があります。
以上のおびただしい数の手続きを一人で行うだけでも大変なのに、フリーランスが法人化する場合、多くの人が通常業務を一人でこなしながら行う人が大多数でしょう。つまり、フリーランスにとって、書類作成、各種機関の窓口訪問など、会社を設立することは大きな負担なのです。
そうした負担を一気に解消してくれるのが、内閣府が提供している、法人設立に必要な手続きをオンラインにて一括でできる「法人設立ワンストップサービス」です。
上記の通り、法人設立ワンストップは2020年1月から、一部始まっていました。IC カードリーダ等を利用すれば、登記後の手続きが行えました。
ただし、公証役場や法務局、税務署には、法務省の提供するシステムから申請するか、窓口に足を運ぶ必要がありました。
機能拡充し、登記もできるように!
2021年2月下旬から、これまでできなかった定款の認証や法人登記も含めたすべての手続きを、ワンストップで行えるようになりました。
これによって何が便利になるのか。改めて整理すると、以下の2点になります。
(1)複数回の手続きが不要になる
定款を公証役場で認証してもらい、法務局で登記し、各種書類を作成し、各種機関に提出する、などといった複数の手続きを、オンラインでまとめて行えるようになります。
上記のように、公証役場の面談は、オンラインで実施可能です。
(2)提出先ごとの手続きや役所に出向く必要がなくなる
これまでは書類を提出する際、一部の届けに関しては、わざわざ別のシステムを使用したり、機関の窓口に出向く必要がありました。しかし今後はすべて1つのサービスからオンラインでできるので、その必要がなくなります。
前述のように、フリーランスが法人化する場合に立ちはだかる壁は、通常業務を続けながら手続きしないといけないことでした。
それが、今回の機能拡充にともない、法人化の手続きをオンラインで完結できるようになったことで、従来のように役所の窓口が空いている時間に合わせなくて良くなったのは、大きな魅力と言えるでしょう。
具体的な申請手順は?
では、この法人設立ワンストップサービス。具体的にどのように行えばいいのでしょうか。以下に順を追って説明しましょう。
(1)「法人設立ワンストップサービス」のホームページにアクセス
まずは内閣府が提供するウェブページにアクセスします。そこで「かんたん問診・申請」をクリックすると、法人設立に必要な手続きが表示されます。
法人設立に必要な大量の手続きの中から、自分に終わっていない、やるべき手続きを確認できます。
(2)申請情報の入力
次に、それぞれの手続きに必要な申請情報を入力します。
そこで利用するのがマイナンバーカードです。
ICカードリーダを用意するか、スマートフォンに「マイナポータルアプリ」をダウンロードすることで、自身の個人情報を読み取ることができます。その上で不足している情報を埋めていき、申請書を完成させます。
(3)電子署名を付与して送信
すべての申請情報を登録し、申請書を完成させると、マイナンバーカードで電子署名を付与して、送信ボタンをクリック。これで申請書の提出は終了です。
(注)マイナンバーカードの電子署名のパスワードは、マイナンバーカードの4桁のパスワードとは異なります。マイナンバーカードの申請時に登録した英数字合わせた6桁以上のパスワードになります。入力を5回間違えるとパスワードにロックがかかってしまいます。解除には、自治体窓口に出向く必要がありますのでお気をつけください。
(4)申請した手続きの進捗状況を確認
各々の手続きの進捗状況や、提出先の機関からの連絡も、法人設立ワンストップサービスのページで確認できます。すべての手続きの進捗状況を示す「ステータス」が「終了」になると、申請の手続きは完了です。
実際、法人設立ワンストップはどのぐらい便利?
実際、最近、法人化した協会事務局メンバーが、登記後の手続きに法人設立ワンストップサービスを利用したところ、20時間後に手続き完了の連絡が来て、とっても感動したのだとか。
とはいえ、利用時の課題もあったと振り返ります。それは、申請時の入力項目が専門的な用語が多く分かりづらかった点です。幸い、そのメンバーは民間の法人設立サービスを使って登記手続きを行っていたため、登記後の書類も自動作成済みでした。そのため、申請書を見ながら、入力項目を埋めていけたそうです。
「法務や税務の資料を読みこなせる人でないと、法人設立ワンストップサービスを利用して、すべて一人で法人化するのはハードルが高いでしょう。ただ、民間の会社設立サービスを活用したり、申請以外の書類作成を税理士や行政書士などのプロにお任せできたりしたら、自分で法務局などへ足を運ぶ手間が省けるため非常に魅力的だと感じました」
法人化を迷っていた人は、便利になったこの機会を活かして、具体的に考えてはいかがでしょうか。