“フリーランス健康診断行かない問題”に喝!「健康管理もフリーランスのお仕事です」産婦人科医・高尾美穂先生インタビュー
健康診断、毎年きちんと受けていますか?
「忙しいから」「健康には自信があるから」とつい後回しにしているフリーランスも多いはず……。
そんなフリーランスの健康意識に「本当に心配だよ!」と喝を入れてくれたのは、産婦人科医でスポーツドクターの高尾美穂先生。「体が資本」とはよく言いますが、健康なときは当たり前すぎて、「ケア」の重要性を忘れてしまいがちですね。高尾先生が語る、健康意識を変えるためのヒントは、すべての働く人にとって必読です!
健康があってこその「パフォーマンス」です
私の周囲にも、フィットネスインストラクターをはじめ、フリーランスで活躍している方が大勢います。彼らと接していて強く感じるのは、「もっと自分の体を労って!」ということ。
「ちょっとくらいの不調なら、気合いで乗り切れる!」
「何年も健康診断を受けていないけれど、健康そのものだから大丈夫!」
「自分の代わりはいないから、調子が悪くても頑張らなきゃ!」
自分の名前で仕事をするフリーランスとって、健康はすべてのパフォーマスの土台のはずです。それなのに、自分の心身には目も手もかけずに、無理を無理とも思わずに頑張ってしまう。そんなフリーランスの友人たちを見ると、私は不安でたまらなくなるのです。
クライアントとの円滑なコミュニケーションも、高いクオリティも、納期の遵守だって、すべては健康があってこそできるもの。
フリーランスとして活躍し続けるには、雇用されている人以上に健康管理に自覚的にならなければいけません。
元気だからこそ健康診断へ行くんです
いま、何の不調もないから健康診断はスルーしても大丈夫?
健康診断は、自覚症状が出る前の不調の芽を見つけるチャンスです。不調がないからこそ、行くのです。
もしすでに不調が出ているなら、それは早急にメンテナンスが必要、ということ。健康診断ではなく、診察を受けなければいけません。
目の前の仕事を優先して、つい自分のことは後回しにしてしまう気持ちもわかります。しかし、会社員が毎年、会社から健康診断の受診を義務付けられるように、フリーランスにとってもヘルスケアは仕事の一部です。自分の体のこととはいえ、自分では気づけないこともたくさんあるもの。定期的に健康診断を受け、自分の健康状態を把握することが大切です。
「我慢は美徳」ではありません
フリーランスには、我慢強い人が多いように感じます。
責任感の強さから、「自分が頑張ればなんとかなる!」と無理をしてしまう人も少なくないようです。
しかし、この考え方は、実はとても危険です。
確かに、目の前の仕事は滞りなくすませることができるかもしれません。けれど、無理をした皺寄せは、必ずどこかに出てくるものです。
食生活や睡眠リズムが乱れれば、疲れはとれにくくなり、同じ仕事をするにも長い時間がかかるようになるでしょう。家庭がある人なら、子どもへの接し方にも影響が出るかもしれません。
そして、「我慢すればどうにかなる」という考え方は、自分の体への感覚を鈍らせます。
なんとなく調子が悪いかも。
……いや、でも我慢できる。
きっとなんとかなるはず。
こうして見て見ぬ振りをしていくうちに、どうしても打ち消せないほど不調が大きくなってしまうことだってあるのです。
よく「短時間睡眠でも全然平気です!」「夜型なので、夜遅いほうがやる気が出るんです」なんて声も聞かれますが、あなたは「大丈夫」と思っても、あなたの心身は「大丈夫」ではないかもしれません。
健康を過信せず、心身が発しているサインに気づくことが、ヘルスケアの第一歩です。
フリーランスだって「アウトソーシング」すべきです
自分のキャリアを自分で築いてきたフリーランスは、自己責任の意識が強いですね。
そして、自分自身を、仕事を請ける「アウトソーシング先」だと考えています。
でも、フリーランスだからって、すべてを抱え込むことはありません。必要なら、フリーランスもどんどんアウトソーシングをすればいいんです。
ビジネスでトラブルが起きたら、弁護士に相談するでしょう。
財務について、税理士にアドバイスを受けている方も多いと思います。
同じように、体のことについて知っていそうな人に相談するって、至極普通のことだと思いませんか?
「ちょっとの不調」も、繰り返すならば専門家への相談が必要です。
頭痛、腹痛、吐き気などの身体症状はもちろん、イライラ、不眠、無気力などのメンタルの変化も同じです。
おかしいなと思うことが1度ならず、2度3度とあるならば、自己判断で対処するのではなく、必ず医療機関を受診しましょう。
フリーランスこそ、人とのゆるやかな関わりを
会社のような組織に属していれば、「いつもと違うな」というときに、心配してくれる上司や同僚もいるでしょう。
しかし、ひとりで仕事を完結させるフリーランスの場合は、なかなかそういう機会もありません。
以前と比べて怒りっぽくなったり、ミスが増えたり、納期遅れが頻発したりすれば、そっと発注がなくなっていく。そんなシビアな世界でもあると思います。
けれど、クライアントからすれば怠慢や能力の低下と受け取られることも、実は心身の不調のサインかもしれません。
たとえば、更年期の不調は、集中力や記憶力の低下となってあらわれることもあります。また、男性もストレスなどによって男性ホルモン(テストステロン)の分泌量が低下すると、女性の更年期と似た症状に見舞われることもあります。
自分だけでは気づきにくい変化に気づいてもらえることも、コミュニティが持つ力のひとつです。
周囲とのゆるやかなつながりがあることは、長生きの条件にも挙げられています。しかも、それはワクチン接種や禁煙よりも重要度が高い、というデータも出ているほど。
人との関わりを持たなくても済んでしまう時代になっていますが、人間にとって社会とのつながりはすこやかに生きていくための大事な条件です。
フリーランスこそ、仕事のほかにも何らかのコミュニティに関わることを意識しましょう。趣味でもボランティアでも、パラレルワークで組織のなかで仕事をするのでもよいでしょう。
人との関わりのなかで情報もキャッチアップしながら、よく働き、よく遊び、幸せに生きるためのメンテナンスも続けていってもらえたら、と思います。