闘病日記(10) パーフェクトトライアングル

このテキストは音声入力で書いている。後遺症で、きき腕の右手が使えないことと、眼振動がひどいためキーボードやパネルへのタッチ入力が難しいからだ。傍目から見ると誰かと電話ごしに長時間会話をしているように見えると思う。さて、そんな闘病記だが、今回は特にいつにもまして記憶を頼りに書いていることを強調しておきたい。リハビリテーションの専門的な話になるので。万一、記述内容に誤りがあったら文責は自分にある。
 発病し入院して初めて知ったのだが、リハビリテーションは「理学療法士」「作業療法士」「言語聴覚士」の3名がチームを組んで行う。自分もこの3名の方にお世話になったが、みんな素敵な人たちだった。今後この闘病記に登場することもあるだろうから紹介させてもらいたい。

「理学療法士」のTさん。
理学療法士は、体の中でも大きな筋肉、大きな関節をどのように正しく動かすかを教えてくれる。また、それらの動作をどのようにつなげて一つの「行為」へと到達するかを教えてくれる。練習時には安全に取り組めるように細心の注意を払ってくれる。特に自分の場合は「立つ」「歩く」の2つがます大変だった。入院したばかりの頃、全く立つことができず、「このままずっと車椅子の生活になるのかな?」と弱音を漏らすと「そんなことないよ。歩けるようになる。私が歩けるようにするけん。頑張ろう。」と励ましてくれた。どれほど心強かったか。

「作業療法士 Nさん」
作業療法士は上半身の細やかな動き(何かの作業を伴う場合が多い)の専門家だ。例えば目の前の、少し離れた場所に置かれたものに手を伸ばし、それを掴み取るとする。この過程には実にたくさんの動作が含まれている。腕を軽く上げる、ひじをそっと伸ばしていく、目標物が近づいてきたら指をかすかに開ける、目標物に到達したらそっと目標物をつまみ上げ手のひらに乗せる。と言うように多くのステップを踏むことになる。発病する以前は無意識にできていたことが全て意識をして繰り返すことが必要となってくる。途中で投げ出してしまいたくなることも多々あったが、Nさんのリードより最後まで訓練を続けることができた。

「言語聴覚士 Mさん」
言語聴覚士はその名の通り言葉と聞くことの専門家だ。しかし、聴覚に関しては訓練で取り戻すことはかなり難しいとのことであった。だからといって聴覚をおろそかにしているわけではなく、毎回聞こえ方について話を聞いてくれたりアドバイスをしてくれたりした。自分の場合、耳元でずっと大きな波が打ち寄せるような耳鳴りがしていたが、Mさんが「耳鳴りは、ずっと同じものが続くことがポイントです。同じ継続音には、脳は慣れることができます。少しずつ良くなっていくように感じるはずです。」とアドバイスをしてくれた。そして実際Mさんの言うとおりになった。言語については「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」の音が全滅だった。それらを毎回訓練した。また、栄養士の人と連携しながら「食べる」「飲み込む」と言う事についても観察とアドバイスをくれた。

どの療法士の方もそれぞれに素敵な人たちだった。そしてチームワークが完璧だった。Tさん、Nさん、Mさん、それぞれにお世話になったリハビリテーションで起きたこと、話したこと、苦しんだこと、喜んだこと。思い出すことがたくさんある。それらについてはまた次回以降で。

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