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業務委託契約書の違いと選び方

ひとことで「業務委託契約書」といってもさまざまな種類のものがあります。
コンサルタント、エンジニア、デザイナー、ウェブサイトの制作、写真やイラスト、ライティングなどの職種や仕事内容によって契約書の内容も変わります。

個別事情に合っていない契約書を作成してもトラブル防止につながりにくいので、意味がなくなってしまう可能性もあります。

今回は業務委託契約書の種類による違いや選び方をご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。


1.業務委託契約書の種類

業務委託契約とは、発注者が受注者に対し、一定の仕事を委託して受注者が報酬を引き換えに仕事を行うことを約束する契約です。

企業が社内業務の一部をフリーランスなどへ外注する際に、業務委託契約を締結するのが一般的です。

たとえば以下のような業務を外注する例がよくあります。

  • HPの制作

  • ウェブサイト運営のディレクション

  • コンサルタント

  • アプリ開発、システム開発などのエンジニア

  • デザインや写真、ライティングなどの発注

契約時に「業務委託契約書」を作成しておかないと、後に契約条件について認識の齟齬が発生したときに大きなトラブルに発展してしまうリスクが高まります。フリーランスとして上記のような仕事を受注している方は、ひと手間かけても必ず契約書を作成しましょう。

以下では業務委託契約書の種類をいくつかご紹介します。


1-1.報酬の定め方による分類

業務委託契約書は「報酬の定め方」によって分類できます。
典型例として、以下のような定め方があります。
時間単価
受注者が業務を遂行するために「何時間仕事をしたか」によって報酬を定める方法です。
時給を取り決めて、「時給×稼働時間数」の金額を発注者が受注者へ支払います。
取引期間が長期にわたるケースや成果物が発生しない取引に向いています。
成果物単価
イラストや写真、文章などの成果物が発生するケースでは、成果物を基準として単価を定める方法がよく利用されます。
成果物は1つとは限りません。単価を取り決めて、納品された物の数だけ報酬額が支払われるケースもよくあります。
プロジェクト単価
受注者が一定のプロジェクトを担当する場合、プロジェクト単価を設定するケースがあります。
たとえばコンサルタントとしてプロジェクトのサポートを行う場合などです。
プロジェクトを完了したときに報酬が支払われるケースが多数ですが、分割払いを設定する場合もあります。
月額固定
継続的に業務を発注する場合、月額の固定料金を定めるケースもあります。


1-2.受注者に有利か発注者に有利かによる分類

業務委託契約書は、発注者が有利になるものと受注者が有利になるものにも分類できます。
たとえば「著作権を譲渡するかどうか」「損害賠償や違約金の規定があるかどうか」「受注者による再委託が認められるかどうか」などの点で、どちらが有利になるかが決まります。
フリーランスが業務委託契約書を用意するなら、基本的に「受注者有利」のものを利用するのがおすすめです。


1-3.職種や業務内容による違い

業務委託契約書は、受注者の職種や業務内容によっても分類できます。
たとえばコンサルタントであればプロジェクト単価や月額の固定単価を定め、契約期間の定めもおくケースが多いでしょう。
一方、デザインや写真、ライティングなどの場合には成果物単価とするのが一般的です。単発取引なら契約期間も定めません。


1-4.継続契約か単発契約かによる違い

業務委託契約書では、継続的な契約か単発契約かという違いもあります。
継続的な契約の場合、たとえば半年や1年などの契約期間を定めるべきですし、期間満了時の更新についても定めておくのがよいでしょう。
単発であれば契約期間を定める必要はありません。

1-5.基本契約か個別契約かの違い

業務委託契約には、基本契約と個別契約があります。
基本契約では、業務内容や報酬計算方法、支払い方法、著作権の取り扱い、契約期間や損害賠償などの基本的な内容を定めます。
一方、個別契約では個別の業務内容と具体的な報酬計算方法などのより細かい内容を定めます。
必ず両方作成しなければならないわけではありません。基本契約のみ作成するケースもよくありますし、両者をまとめた1つの契約書を作成する場合もあります。

以上のように業務委託契約書にはさまざまな種類があるので、受注する仕事内容に応じて適切なものを選択しましょう。


2.規定内容による業務委託契約書の違い

業務委託契約書の規定内容により具体的にどういった違いが生じる可能性があるのか、以下で代表的な条項の違いをみてみましょう。

2-1.報酬の定め

報酬については、時間単価、成果物単価、月額固定制などの定め方があり、それぞれ計算方法や支払われる金額が大きく変わってきます。
また成果物やプロジェクト単価などの場合、先払いか後払いか分割払いなど、支払われるタイミングの違いもあります。
初めて取引する相手や個人など、支払いに不安のある相手方なら、先払いを受けておくと安心でしょう。

2-2.著作権の譲渡について

著作権を譲渡するかどうかも非常に大きな問題です。
受注者にとっては著作権を譲渡しない方が有利です。
特にデザインやイラスト、写真などを納品される方は、著作権を譲渡すると相手がその後どんなに利益を上げても権利を主張できなくなるので注意しましょう。
著作権を譲渡するなら、相応の単価を定めるようおすすめします。

2-3.再委託の可否について

受注者が第三者へ再委託できるかどうかも問題となります。
自由に再委託できる方が受注者にとって有利ですが、発注者側にとっては受注者が誰に再委託するかわからないので不安材料となるでしょう。事前に書面により発注者の同意を得た場合に再委託できる、とするのが一般的です。

2-4.損害賠償について

損害賠償や違約金についてどこまで定めるかも重要です。たとえば受注者のみに賠償義務が規定されていると不利になってしまうので注意しましょう。

2-5.解除の条件

どういった状況となれば契約解除が認められるかも契約書によって大きく違います。
債務不履行があった場合に解除できるのは当然ですが、それ以外にも「破産や民事再生、仮処分を受けた場合」などに契約解除できるなどとするパターンもよくあります。
業務委託契約書へ調印する前に、解除条件についても確認しておきましょう。

2-6.検収に期間をもうけるかどうかの違い

成果物を納品する契約の場合、検収に期間をもうけるかどうかが問題となります。
検収期間を定めないといつまでたっても報酬を支払ってもらえない可能性があるので、1、2週間程度の期間を設定してもらうのがよいでしょう。



3.タイプ別・業務委託契約書の選び方

以下ではフリーランスのタイプ別に業務委託契約書の選び方をご紹介します。

3-1コンサルタントなど、成果物がない場合

コンサルタント、アドバイス業などで成果物がない場合には、プロジェクト単価や月額固定報酬制、時間報酬制を採用しましょう。
契約期間や更新、途中解除についても定めておくべきです。


3-2.エンジニアなど完成に時間がかかる場合

エンジニアがシステム開発を行う場合など、成果物はあるけれど時間がかかり高単価になる場合には、時間報酬制や成果物単価の報酬制を採用しましょう。
成果物単価とする場合には、着手金、中間払い、完成後の報酬の3分割にするなど支払い回数を分けると、不払いリスクを軽減できます。


3-3.デザイナーなど成果物を納品する場合

デザイナーやカメラマンなどの成果物を納品される方は、成果物単価とする業務委託契約書を選びましょう。検収期間や著作権譲渡の有無、権利移転時期などについても定めておく必要があります。

フリーランスの受注内容や仕事の形態により、適正な業務委託契約書の類型が異なってきます。どの類型がいいとわかっても、実際に契約書を作ることは大変です。
freeeサイン公式テンプレートでは、上記の類型に応じて弁護士監修のテンプレートをご用意しています。こちらを参照して、自分にあった契約書を見つけてみてください。

著者紹介
福谷陽子 ライター 元弁護士
弁護士時代は契約書の作成、レビューや中小企業へのコンプライアンスに関するアドバイス、労務管理など企業法務に積極的に取り組んでいた。現在は法律知識やスキルを活かして各種メディアや法律事務所の依頼を受けて専門記事の執筆・監修に精力的に取り組んでいる。

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