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【書評・要約】エキスパートはオワコン? 『僕は君たちに武器を配りたい』

今回は瀧本哲史さんの『僕は君たちに武器を配りたい』を紹介します。

この本は格差社会やブラック企業、ワーキングプアなど昨今の厳しい状況下で生き抜くためのヒント、「武器」について書かれた本です。ちなみにkindle版は現在74%ポイント還元中なので実質約500円と非常にお買い得です。(5/31現在)

結論を一言で

この本の結論は、「スペシャリティになり、資本主義を自分らしく生きろ」です。以下引用を交えて解説します。

人材のコモディティ化

現在の就職市場は人材がコモディティ化していると著者は嘆いています。そもそもコモディティ化とは商品に個性がなくなってしまうことです。例えば歯ブラシやせっけんなど、どれを選んでもさほど違いがないようなものを指します。

経済学の定義によれば、コモディティとは、「スペックが明確に定義できるモノ」です。例えば3㎝で5gのねじなどです。こういったコモディティ化したものは、資本主義下では新規参入により競争にさらされ、買いたたかれてしまいます。競争については私の『Zero to One』の記事やSCP理論の記事も参考にしてみてください。

これを人に当てはめても同じことが言えます。昨今重要だと騒がれているTOEICや会計の資格、ITスキルなどは明確に定義できてしまいます。そのうえ一時は有利だと騒がれていましたが今や皆がそれを目指し、目新しさはありません。そのため買い手側(企業)は合理的な行動として安く買い叩くのです。安く買い叩くとはこの場合、賃金を指します。同じスペックなら安いほうを買うのは当然ですからね。こうして人材のコモディティ化からワーキングプアなど生活に困窮する人たちが出てきてしまうのです。

ではどうすればいいのでしょうか?著者はスペシャリティな人材になるべきだと語っています。

スペシャリティとは

まずはスペシャリティの定義から行きましょう。

スペシャリティとは、専門性、特殊性、特色などを意味する英単語だが、要するに「ほかの人には代えられない、唯一の人物(とその仕事)」「ほかの物では代替することができない、唯一の物」のことである。

替えの利かない唯一の選択肢がスペシャリティですね。例えば画家やある企業の経営者などはスペシャリティといえます。要するに差別化した人材になれってことですね。

そして著者曰くこれからのスペシャリティは4種類あるといっています。それは、

・マーケター
・イノベーター
・リーダー
・インベスター

の4つです。

ちなみに最近よく目指せと謳われている、1つの分野に非常にたけている専門家、エキスパートは今の時代もう稼げないと書いてあります。理由は簡単で、産業構造の変化が激しい現代では1つの専門知識が使えなくなることはざらにあるからです。例えば60年代、石炭の採掘は高給取りでしたがその後石油が現れたことで価値を失いました。また、今後簡単にプログラムを組める技術が出てくることで今人気のプログラマーも危ういかもしれません。

と、暗い話はこれくらいにしてスペシャリティの4つを以下詳しく見ていきましょう。

マーケター

本書でのマーケターの定義は、

マーケターとは、端的に定義すると、「顧客の需要を満たすことができる人」のことだ。大切なのは、「顧客自体を新たに再定義する」ということである。つまり、人々の新しいライフスタイルや、新たに生まれてきた文化的な潮流を見つけられる人のことを指す

です。ざっくりいえばストーリーを作って、商品に定性的な付加価値をつけて差別化できる人です。

そもそも資本主義下ではコモディティ化は宿命づけられています。例えばノートパソコン市場は儲かると分かるや否や各社が参入し、今や価格競争や小型化で各社しのぎを削っています。消費者からすれば違いの分からないマシンが家電屋に乱立してしまっています。

そこで1歩抜け出しているのがおなじみAppleです。持っていてオシャレというブランディングは所有欲をくすぐります。またCMやプレゼンも含めシンプルでスマートという印象が根付いています。

このような夢やイメージといった「ストーリー」は簡単に真似できないため差異になります。だからこのストーリーを創り出せるマーケターはスペシャリティなのです。

イノベーター

これはもはや言うまでもないと思います。イノベーションを生み出せる人は圧倒的差異になります。イノベーションに関する記事として、ぜひこちらも読んでみてください。

リーダー

リーダーは言葉そのまま、チームを統率できる人です。経営者はここにあたります。しかし、リーダーは誰でも望めばなれるものではありません。リーダーにはある種の「クレイジーさ」が必要だといっています。

実際のところ革命的なことを成し遂げるリーダーの多くは、ある種の人格破綻者であるか、あるいは新興宗教の教祖のような自己愛の塊である。そして、そうした強烈なリーダーが率いるからこそ、組織は成功するのである。
自分の人格が少し普通の人と違って破綻しているな、と感じていたり、自分には極端な自己愛があるな、と自覚しているならば、その「負の側面」を逆転させることでリーダーへの道が開かれる可能性がある。

本書ではその例として日産のカルロス・ゴーン氏やマイクロソフトのスティーブ・バルマー氏を挙げ、狂った熱量の経営を紹介しています。このように、リーダーになるにはその素養が必要となるのです。

インベスター

ここでの投資家は株などの金融商品を生業とするという意味ではなく、投資家としての目線をもって生きるということです。上の3つとは少し毛色が違います。

私は本書で、これからは投資家的な発想を学ぶことがもっとも重要だということを繰り返し述べたい。なぜならば、資本主義社会では、究極的にはすべての人間は、投資家になるか、投資家に雇われるか、どちらかの道を選ばざるを得ないからだ。

これは、株式会社も年金も銀行の預金もすべて投資によって成り立っているため、どうせなら自分自身が投資家として積極的に参加したほうがいいということです。

資本を所有し、適切なタイミングでリスクとリターンを見込んで投資する。これはお金だけに限らず勉強などの自己投資や、自分の体、つまりどの会社に入るかもこのように考えるべきなのです。

サラリーマンは最悪の選択肢?

一生サラリーマンでいることは投資家目線だとハイリスクローリターンの選択だといいます。なぜなら、いつ倒産するかわからないというリスクに比べ、もらえる給料は低いからです。そのうえそのリスクは自分で管理できないというのが最悪な選択肢の理由です。

このように、投資家の目線をもって資本主義を生きることで見える世界が変わってくるというのが著者の主張で、上の3つとは明らかに違い、考え方の話です。この考え方が一番大事だと著者は何度も語っています。

手段としての武器

上に上げた4つを目指すことは重要ですが、なることは目的ではありません。あくまで資本主義下で人生を生き抜く手段でしかありません。

リーマンショック以降の日本では、資本主義そのものが「悪」であるかのように見なされる風潮がある。しかし資本主義それ自体は悪でも善でもなく、ただの社会システムにすぎない。重要なのは、そのシステムの中で生きる我々一人ひとりが、どれだけ自分の人生をより意味のあるものにしていくかだ。  

本書の最後は、以下のように終わっています。

★ 本当の資本主義の時代に、「ほんとうに人間らしい関係」を探っていこう。

VUCAの時代に自分らしく生きるために、自分を見つめなおすことこそ本当に大事なことだと最後に再確認させてくれます。

自分にとっての幸せや大事にしているものを守るためにも、本書で紹介されている武器を身に着けてみてください。

まとめ

・人材のコモディティ化を避けてスペシャリティになれ

・4つのスペシャリティの種類

・自分らしく生きろ

以上が瀧本哲史さんの『僕は君たちに武器を配りたい』の要約になります。この本は2011年に発行されたものですが、いまだに人気のある本です。著者の瀧本さんは亡くなってしまいましたが、どの著書も非常に面白いので是非読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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