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1991年の旅

24歳、9連休のゴールデンウイーク、
オフロードバイクへ野宿道具(キャンプ道具ではない)を積んで、
和歌山発、九州、四国 7泊8日の旅へ出かけた。
コンセプトは、お金をかけずに旅をする。当然自炊。
でも、食堂にも入るし、宿にも止まる。そんなゆるい旅。
珍しくも奇抜でもない旅。

旅の話の前に・・・バイクに乗り出した動機。
学生の自分にはお金がなかった。免許がなかった。バイクには興味があった。
バイク(中古)ならなんとかなるよな・・よしそうしよう。
バイトを始め、お金を貯めてまずは中型免許を取った。
バイク屋の店頭で中古のあちこちレーサー仕立てにイジった鈴木ガンマ250を
見つけた。本当は400cc 4気筒のレーサーレプリカが欲しかった。
パワーあるから2サイクルもありだな、と自分を納得させた。
当時25万円くらいだったか。
喜々としてあちらこちらを走り回るのだが、足の向くのはコーナーの続く峠道ではなく、1.5車線ガードレール無しの山道。そんな道が楽しかった。
ん?これは乗るバイクを間違えたか?
1年ほど乗ってから、デビューしたての山葉DT200Rへと乗り換えた。

林道をこれまたテールを流しながら走るのがカッコええんや!!と頑張って走るが、俺は一体何をやっているのだ?と。
走ることそのもの、ここではないどこかに行く事。それが面白い事に気づく。
幹線道路を外れた田舎道、スピードを出すことなく、林道を走る事が面白い。

遠くの知らない道、長距離を走るのには数日かけて走る事になる。
宿泊費もバカにならん。テントを張って自炊すれば少ない費用で旅ができる。
野宿ライダー 寺崎勉氏の本からそれを知る。

ここから再び旅の話。
4月27日  20時 大阪南港発の阪九フェリーに乗り込んだ。


当日は仕事を終え家に帰ってさっさと夕食を済ませバイク荷物をくくりつけた。
何回か野宿ツーを経験している。荷物は間違いなし。


北九州 門司から杖立温泉から久住高原、高森を抜けて椎葉、人吉、えびの高原
桜島から佐多岬。林道、県道、三桁国道を走り繋ぐ。
ひとり旅はいろんな出会いがある。

初日、久住高原沢水キャンプ場に着く頃には雨が降り出していた。
夕食の買い出しは済ませてある。
管理棟は無人、タダである。
その軒の下で家族大勢でバーベキューをしている人たちが居た。
同じ軒下でテントを張っている珍しい人に小さい子供達は興味深々。
テント内で何やらかんやらしている俺を覗きに来る。
夕食の支度でも・・・とおもっていたら、バーベキュー家族から夕食を頂く事になる。「残り物だけど食べて」とお肉と野菜におにぎりまで。
感謝感激雨あられ。買ってあったビールとともに頂いた。

バーベキューのみなさん


「これからどこまで行くの?」
「佐多岬まで。明日は霧島あたりで泊まろうかと」
「今の季節、霧島で野宿したら凍えるで」
「えっ!そうなんですか!考えます」
なんて話をしながら。

そして、日暮れとともに大家族は帰っていった。
雨は降り続く。

お腹いっぱいになったな〜などと思っていたら、遠くにヘッドライトの灯と共に
1台のバイクが近づいて来た。
ホンダの250ccに乗る彼は、カッパは着ているものの雨が中に滲みて濡れ鼠。
空いている軒の下にテントを張る。

敷物は新聞紙だよ


夕食は?の問いに、雨で買えなかったとの事。
夕食をご馳走してもらった俺の食料はまるまるある。
なかなか世の中うまい具合にできているではないか。
彼は夕食を食べながら、俺はウイスキーを飲みながらいろんな話をした。
海外青年協力隊に応募した(彼が)とか、彼女が居るとか居ないとか、
バイクツーリングとはなんぞや、どこから来てどこへ行くとか・・・。
この季節、霧島野宿は厳しいとか・・。

翌朝、彼とは別れて走り出した。
その彼の名前も出身地もなんもかんも今は忘れた、残っているのは写真だけ。

九州最南端佐多岬まで行って、そこから宮崎県海沿いを北上して、
フェリーで四国に渡った。時間も遅かったので最寄りのビジネスホテルに泊まる。
四国では四万十川、四国カルスト、与作国道、ちょっと剣山の道中。

四国カルストでのこと。

四国カルスト


東屋で昼食のカップラーメンを用意していた。
たまたま近くにいた家族づれの方に、お兄さんおにぎり食べる?って。
おすそ分けしていただいた。
旦那さんは30代くらいか。奥さんキレイだったな〜。
お子ちゃま可愛かったな〜。
「若い頃、ツーリング一人旅してみたかったんだよね〜」
「でも、機会逃しちゃってね〜お兄さん見てたら羨ましいわ」と。
そういえば花もらったんだ。
ウエストバッグに挿してこの先走ったな。

ウエストバックに花を挿して走る


別に旅(ツーリング)に出会いを求めているわけではない。
ただ単純に遠くの知らない道、景色を見たいだけ、走りたいだけ。
テントで朝目覚める。今日も走れるんだ!
日が暮れかかる夕方、家に帰らなくていいんだ!
という喜びでいっぱいの日々。

一人旅ではあるが、どこかで絶対に人と関わることになる。
どういう関わりにするのかは自分次第。
礼を受けたり授けたり、持ちつ持たれつ、困った時は助け合う。
ライダー同士ならなおさら。
背伸びなんかしない、自分以上自分以下でもない、そんな旅をしたように思う。

とある小学校の校庭にて


どこまでも走り続けたくなる。時間の許す限り。気ままなひとり旅。
当時独身、彼女なし。周りからは彼女どこに隠してるんだ!などと言われていたが、いないものはいない。
帰るところがあるのが旅。
休みが明けたらまた日常が始まる。
新しい何かを体験する。自分に新しい情報がインストールされる。
自分ではわからない何かバージョンアップが行われているのではないか。
何がどうなったか自分では気づかない。
どこかで変わった自分が役立つ時があったのだろうか?
それもわからない。
この旅の後、今の奥さんと付き合うことになり、3年後結婚。

それから20数年、あいも変わらず今もバイクに乗りつづけている。
子供が当時の自分の年齢に近づく今日この頃、
飽きもせず、小さな旅を繰り返してる。

今いる場所に不満があるわけでもない、むしろ安心感のある場所。
でもここではない何処かを目指して走り続ける日々。
答えはどこにもない・・・。



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