試される日米同盟、破局か、存続か

崩壊の危機にあった日米同盟

2015年に集団的自衛権の限定行使を認める法案が国会を通過した。この法案に対し、メディアや野党は戦争法案だと言って揶揄していたが、この法案によって日米同盟が崩壊の危機を食い止めることができたと言っても過言ではない。それまで、日本の法体系は集団的自衛権を他国と共に軍事行動を行うものであると解釈しており、その行使を禁止していた。そして、それはアメリカの軍艦が他国に襲われそうになっても守らないということを同時に意味するものでもあった。また、アメリカの船舶への燃料の給油というような行為さえも集団的自衛権の解釈では違法とされていた。

そのため日米同盟は2015年まで瀬戸際の状態にあった。アメリカ軍が自衛隊の目の前で攻撃されて死人が出ても何もできない状態にあった。また、それだけではなくアメリカの世論が激高して、安保条約解体を叫び出したとしてもおかしくなかった。だが、安保法案によって初めて日本周辺でアメリカと有事において共同防衛をすることが可能になった。この法案を通したことにより安倍政権の政治的資本は使い果たされた形にはなったが、それをするだけの意味のあるものであり、欲を言えば冷戦が終わって日米安保の意義が失われた瞬間に果たせれなければいけないものでもあった。

ガラパゴス化した憲法論議

そんな危機的状況を打開することができた日本ではあるが、国内で行われている議論が日米のさらなる緊密化を妨げている。左翼は未だに安保法制が違憲だといい、3つの核保有国に囲まれているという日本の安全保障環境を理解しようとしない。また、右翼も憲法9条の改正にこだわるがあまり、軍事予算の増強、自衛隊の労働環境を改善するといった国民投票を行うことよりはるかにハードルが低く且つ日本のためになることに目を背けている。

この両極端に共通することは考え方が内向きであり、明確な国家ビジョンを持たないことにある。そもそも憲法9条の下で自衛権を行使できないことは憲法に書かれていない、法的根拠がないことであり、且つ国連憲章には国家が持つ固有の権利だと認められる。また憲法9条改正は法律を運用させるための手段であり、目的ではない。9条改正の目的は日本または日本の同盟国が攻撃された場合に滞りなく自衛隊が動ける状態を作ることにあり、それは9条の憲法解釈で事足りることである。現に憲法発布がされてから9条は解釈により運用されてきている。

このように日米両国の絆をさらに深めるための手段は存在する。しかし国民の反発を恐れている与党を含めた政治家たちは正論を言わず、上記のような憲法論議をする国民たちを甘やかしている。そして、この状態が続くことは日本の国益に反することであり、最大の脅威である中国を利することに繋がる。

最大の脅威である中国

上記で述べたように日米同盟の一義的な目的、ソ連による日本の共産化を防ぐことは達成されている。しかし、新たな脅威が現れた。それは中国である。そして、2015年の安保法制は高まる中国の脅威に併せてつくられた法案でもある。2000年代に入り中国の軍事費は以上なペースで増加しており、近隣諸国に恐怖感を与えている。また、習主席はオバマ大統領との会談時に中国は太平洋に面していないにも関わらず「太平洋には中国と米国を受け入れる十分な空間がある」と言及し、アメリカの覇権に対抗する姿勢を示している。それを実現するかの如く、近年中国は南シナ海を人工島で埋め尽くしており、太平洋に進出するための足掛かりを得ようとしている。それだけではなくある会議で中国の国防大臣は「台湾を分裂させようとするなら、中国軍はいかなる代償は払ってでも戦うことをためらわない」と台湾に武器支援を行うアメリカに向けた攻撃的な発言をしている。

そして、軍事面だけではなく経済面でも一帯一路構想や5Gの導入を通じ経済面でも急速に力を伸ばしてきているのが中国であり、これらの事例から明らかにアメリカに取って代わって覇権国になろうとしている意志が見える。

日米共同で中国に対抗するべし

そのような脅威が間近に迫っていることを考えると今の国内での議論が不十分であることが実感される。いくら集団的自衛権の限定行使を認められたといっても有事に自衛隊がどう運用されるかはグレーな部分が多く、最悪の場合アメリカ世論の反日感情を助長する可能性はぬぐい切れていない。

ならいっそのこと中国に与せればいいではないかと言い出す人がいるかもしれないが、日本人の価値観を守るためにはそれは否定しなければならない違憲である。中国は表現の自由がなければ思想の自由もない。そして、ウイグル自治区ではナチスが運営していたものより大規模な強制収容所にウイグル人を押し込み人権をはく奪している。中国の側に立つということはこれらすべてのことを認めるということであり、それは許されない。

だからこそ日本はアメリカと協力して中国の拡大を封じ込める必要がある。アメリカは世界で唯一中国によって否定されてい基本的人権を守ろうとしている。貿易戦争により、アメリカの企業が中国の犯罪に加担することを防ぎ、香港人権法やウイグル人権法の施行により制裁をかけてまで中国人の人権を守ることを宣言している。方や人権が大事と言いながら中国と経済的に急速接近しているヨーロッパ諸国とは大違いである。

日本はどちら側に立つか?答えは明確であり、そのためにもさらなる軍事面、政策面でのさらなる緊密化が望まれる。それゆえ、国民の間で日米関係を深化させるために今より発展した議論が必要であり、日米同盟の新たな定義が必要とされている。



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