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日々の事20

読んだ本

アンソニー・ホロヴィッツ『メインテーマは殺人』を読んだ。以下寸評。

著者のアンソニー・ホロヴィッツは近年の「このミステリーがすごい!」常連で、2019年『カササギ殺人事件』から3年連続で著書が1位になっている。本作は2020年の1位であり、これに続く2作目『その裁きは死』は2021年の1位だ。
このミスがどのくらい権威があるかどうかさておき、3年連続で首位はおそらく前人未到ではないだろうか。国内だと東野圭吾あたりが達成してそうだが(調べてない)、国外作家では異例。
本作に先駆けて2作目を読了していたので(そしてあまりにも出来が良かったため)1作目のこちらへの期待はかなり高かった。
こういった書きぶりからお察しだろうが期待以上の面白さだった。

自らの葬儀の手配をしたまさにその日、資産家の老婦人は絞殺された。彼女は自分が殺されるのを知っていたのか?作家の〈わたし〉、アンソニー・ホロヴィッツはホーソーンという元刑事から連絡を受ける。この奇妙な事件を本にしてみないかというのだ。かくして〈わたし〉は、きわめて有能だが偏屈な男と行動をともにすることに……。

あらすじからして面白い。しかも特筆すべきは、著者のアンソニー・ホロヴィッツ自身が作中での語り部という点だ。こうした著者自身がフィクションの中に登場する手法と言えばエラリイ・クイーンの『災厄の町』が思い浮かぶ。

エラリイは探偵役だが、本作のアンソニーはあくまで作家だ。本作の探偵役は元刑事の食えない男・ホーソーンであり、二人の関係は本作中でも暗示されているように、シャーロックホームズとワトソンの関係だ(実際アンソニー・ホロヴィッツはコナン・ドイルの正式な後任としてホームズの正統続編『絹の家』と『モリアーティ』の2作を書いている)。
本作では現実と虚構が入り混じり、私小説なのかもしくは実話なのかわからなくなる瞬間がある。そういった構造自体は『カササギ殺人事件』でも用いられているところから著者の得意なプロットなのかもしれない。
事件の内容自体はネタバレになるので詳述は避けるが、個人的に面白いと思ったのは、事実を余すところなく正確に記述しているという点だ。まさにフェアプレイに満ちたミステリであり、ミスリーディングは一切無く(登場人物たちが間違った方向に進むことはあれど)ちゃんと読めば事件の真相に読者自身も辿りつけるようになっているところだ。
これは著者がアガサ・クリスティーの愛好家であるところにもよると思う。ミステリによっては最後まで読んでもしっくりこないものがわりとある中で、ここまで緻密に事実を提示しながら、かつ、謎解きの面白さも残しているのは驚嘆に値する。「ストンと落ちる」感じがミステリでは大事だと思っているので、そういう意味では最後の一行まで文句無し。
この「ホーソーン刑事」シリーズは構想としては10作ほどの長編シリーズになる予定らしいので今後も目が離せない。間違いなく2020年代を牽引していくシリーズになるに違いないだろう。

今日のこと

簡単な買い出し以外はご時勢的にも基本自宅にこもりっきりで過ごしているから、この「今日のこと」で用意できる話題というとニュースか、雑誌のネタくらいなものだ。いわゆる日常があまりに静的である。ただ、別に虚無感みたいなものは無い。元々一人が好きだし、逆に毎日誰かと会うとかいう生活の方が辟易する。
それに、現代の「情報」価値はほぼ日時更新と言っていいほど瞬間で変わる。昨日「バズってた」ものが次の日には忘れられている。そんな中で共有できるほど価値の高い情報とは何なのか。難しい。

まあそんなことはどうでもよくて。今は盆栽を始めようとしている。盆栽でなくてもいいんだけど、何か植物育てたい。冬場に考えることでないが。春先までに道具揃えていく所存。

今日はここまで。

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