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トレードに入る前のチェックリストを作ろう!

盛岩外四(もりいわ がいし)です。2019年もあと少しで終わろうとしています。今年前半の大きな行事としては天皇陛下の退位と即位があり、後半は気象災害が各地を襲い、大きな傷跡を残しました。被災された方々には心よりお見舞い申し上げます。

さて、今年は新年早々、FPOさんからアレキサンダー・エルダー博士の新刊『ザ・トレーディング』をいただきました。この本は、博士の処女作にしてマーケットの世界で最高の評価を得ていた『投資苑』の大改訂版であり、博士自身も「自分のトレーダー人生にとっての集大成」と位置づけている本です。

改訂といっても、ほぼ内容を刷新し、より実戦的な内容に生まれ変わっています。特に、トレーダーの皆さんにとって役立つのは、博士が日々のトレードで実践している戦略とリスク管理、そして博士の真骨頂であるトレーダーの心理分析でしょう。長年のトレード経験から絞りに絞り込んだ戦略は一見の価値がありますし、その姿勢も学ぶに値します。翻訳は前著と同様、マーケットに精通し、国際機関の世界銀行に勤務する福井強さんが担当。20数年を経て、とても読みやすくなり、普段、あまり本を読まない盛岩も耽読してしまいました。

あまり本を読まないといっても、読むときはとことん読みます。およそ3カ月で5回は熟読したでしょうか。500ページを超える大著ですから、相当な時間がかかりました。しかし、人様が精魂込めて書いた本は、1回読んだ程度で理解できるものではありません。回を重ねていくうちに、読み落としていたところ、理解が甘かったところに気づき、新しい発見もあり、毎回新鮮な気持ちで読むことができました。

エルダー博士は『ザ・トレーディング』の中で、おすすめの本を紹介しています。それは、外科医のアトゥール・ガワンデ氏が書いた『アナタはなぜチェックリストを使わないのか?』です。エルダー博士もこの本を参考に、トレードに入る前に必ずセルフチェックをおこなっています。

わずか1〜2分で完了するセルフチェックは、とても重要です。翻訳者の福井さんとお会いしたとき、ご自身も毎日、仕事に入る前にセルフチェックをしているとのこと。彼の仕事は、債券や為替のトレーディングです。つまり、相場のプロ中のプロです。この本の中では、大規模建設や医療の現場、旅客機のパイロット、そして投資の世界という、どれも複雑にして、即断即決を求められる場面があり、同時に予期せぬ出来事が起こる世界で、各現場の専門家がいかにして効果的なチェックリストを作成したのか、が書かれています。

ザ・トレーディング』を読んだ当初は、「なんか、しょうもないこと書いてんなー」と、この項目を軽んじていました。しかし、回を重ねるごとに興味が湧き、最終的にはガワンデ医師の本を読むに至りました。さらに興味深かったことは、1〜2分で完了しなければならない、たかだか5〜10個のチェック項目に絞り込むプロセスです。同時に、いざ自分のチェックリストを作ろうとすると、これが思いのほか難しいのです。

医療、建設、航空、市場の各分野は、まかり間違えば、人の命にかかわったり、多額の資金を失ったりします。その中で、毎日のルーティーンとしてチェック項目を10個以下に絞り込むのは、実は至難の業なのです。当たり前のことばかりチェックしても仕方がありませんし、かといって、起きえないことに気を回しても意味がありません。つまり、実戦を通じて、必要不可欠なことをピックアップしなければならないということです。あれもこれもとやっていれば、チェックするのに時間がかかり、長続きしません。かといってごく当たり前のことばかりでは、チェックリストを使う意味がありません。

チェックリストを作成するポイントは、自分の性格を知り、自分のトレードの要点を理解することです。同時に、不測の事態にも備えていなければないけません。チェックリストを作成し、使いこなしている人たちの話を聞くと、「自分と、相手とする対象(市場や患者など)を熟知し、起きうるあらゆることを想定し、1回の作成で完成まで持っていこうとしないことだ」といいます。チェックリストが完成したとき、「自分もようやく一人前になったなー」と気づくでしょう。

皆さんも是非、トレードに入る前のチェックリスト、1つトレードが終わった後のチェックリストを作ってみてください。チェックリストは、人によってさまざまです。誰にでも通用するものでは意味がなく、自分専用でなければなりません。まず、今日からセルフチェックを始めてください。そして、気づいたことを箇条書きにしてください。スタートはそこからです。始めなければ、何も始まりません。

それでは、良いお年をお迎えください。
盛岩 拝

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