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半沢直樹を見て想う「銀行の古き良き時代」

ドラマ「半沢直樹」の時代設定

ドラマ「半沢直樹」。来週最終回に向けて、最高に盛り上がってきました。
平日の仕事でたまった不満やストレスを、日曜の夜に「半沢直樹」を見て一気に解消する生活パターンが出来上がってきてましたので、
終わってしまったら、このストレスはどこで発散したらいいんだろうと、早くも不安です。

私は元銀行員です。昨年3月まで30年以上銀行(いわゆるメガバンク)で働いてきました。


半沢直樹が銀行に入行したのは、

原作だと1989年(平成元年)、ドラマの設定では1992年(平成2年)だそうです。

私は1988年(昭和63年)の入行。半沢くんは、直(チョク)の後輩の世代です。

ちなみに、ドラマの年代設定は2020年だそうです、入行が89年であれば

半沢直樹は現在54−55歳。92年としても50−51歳ですから、普通に「片道切符の出向」を迎える年代です。

半沢直樹の銀行員(バンカー)としての仕事に誇りを持ち、筋を貫こうとする姿に胸を打たれます。

でも、今の銀行員にそこまでの自負があるんでしょうか?

実際は、大きな時代の流れの中で
銀行はその存在価値を失いつつあるのではないかと銀行OBとして心配です。



高度経済成長期からゼロ金利時代へ

昭和30年代後半からの高度経済成長期において、銀行の存在価値はとても大きいものでした。
表現は乱暴ですが、「集金マシン」としての機能を社会的に果たしていました。
国民のお金を預金として集めて、企業に貸し出すことで産業の成長をサポートし、
日本全体の経済の発展に貢献してきました。

ところが、銀行が本来貸したい「優良企業」は自分で直接社債や株式を発行してお金を調達できるようになりました。

元々、銀行は「新興企業」にお金を貸すのを嫌がりますが、その「新興企業」自体も、ITの進展によってビジネスを立ち上げるのにそれほどお金を必要としなくなりました。だから銀行は今預金をあずかっても借りてくれるところがない。

マイナス金利の時代ですから、国民から預金をもらっても銀行としてはそんなに嬉しくない。

銀行は元々預金と貸出金の金利差によって利益=「金利差収入」を上げていましたが、今は「手数料収入」に重点を置くようになってきます。

変容する業務内容、金融商品の”売り子”となったバンカー

2000年前後に各銀行が順次合併しメガバンク(三菱UFJ、三井住友、みずほ)が誕生した頃、各行内で組織改革が行われました。

ホールセール(企業)部門とリテール(個人)部門の分離です。

リテール部門はその後新しい業務として

「投資信託販売」

「生命保険販売」

を手がけるようになりました。いずれも「手数料収入」商売です。

ここから銀行にとっての「預金」の意味合いが変わってくることになります。

昔は、預金をいただくだけでありがたかったんですが、

今は預金は投資信託や保険を買ってもらうための資金として見られています。

退職金とか大口の入金があったら、すぐに銀行から電話がかかってきます。

彼らの目的は、あなたに退職金で投資信託や一時払保険を買ってもらうことです。

購入する人が納得しているのなら仕方ありませんが、

大抵の場合は世間相場対比とても高い手数料をとられます。

銀行の担当者が先週の「半沢直樹」の放送を雑談ネタにして近づいてくるかもしれませんが、「手数料が欲しい」だけの銀行員はあのドラマに出てくる誇り高きバンカーとは全く異質の存在です。

気をつけましょう。





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