部活動を恨んだ男
「学生時代は部活しかしてこなかったのではないか...。」
学生時代についてはそんな印象しかありません。
いろいろなものを犠牲にし、取り組んだのは紛れもない事実。
それはまさにプロ並みの競技への向き合い方だったと言えるでしょう。
その真摯なまでの部活動への取り組みだけは、誰にも負けない自負が今でもあります。
そして、その部活動に対する真摯なまでの取り組みが、幸か不幸か報われることとなったのです。
『全国大会優勝』
そしてその後、「Japan」を背負い、世界大会に出場したことは一番の思い出として今でも胸の奥に深く刻まれています。
しかし...。
栄光と挫折は表裏一体。
このことはよく知られるところです。
部活動というものを取り上げられた後の私の人生はというと、その成功体験を引きずるが故に、なかなかうまくいかないものとなっていきました。
社会に出て仕事をやらせれば、他の人と比べてもなかなか成果が出せない自分に絶望感を抱いたものです。
すっかり自信を失なった当時の私は、実生活でもまともに順応できなくなり、息苦しさすらを覚えた時期もありました。
「オレはあれだけの成功をしているのに、なぜこの仕事ではうまくいかないんだろ...?部活動の時と同様の努力をしてるのに...。」
そう苦しむ度に、
「あんな栄光に満ち溢れた経験さえしてこなければ、こんなに苦労はしなかったのにな...。」
苦しむ日々を送るうちに、やがて軽いうつ病を発症させます。それもいい大人になってからだから大変困ったものでした。
それだけが要因ではありませんが、この時期に仕事も恋人も失ったのです。
全てを失い、目の前に絶望感しか広がっていなかったあの暗雲立ち込めた光景は、二度と見たくないものとして度々思い返します。
そんな長く暗いトンネルを抜け出すのに、どれだけ苦しかったでしょうか。
長い人生の中でつまずき疲れ果てる度に、あらゆるものを犠牲にしてまで取り組んだあの部活動を恨んだのです...。
それからというもの、すっかり競技が大嫌いとなり、そっとシューズを脱ぎ捨てたわけです。
それは必然だったのかもしれません。
学生時代とはいえ全国制覇という成果を出したわけですが、はたから見ていると、成功者に映ったのかもしれません。
しかし当事者としては決してそうとは言い切れなかったのです。
全国優勝してしまったからこそ幸せではなかった...。
そう言い換えることもできるでしょう。
学生時代の部活動で成果ばかりを追求しすぎると、人生において果てしなく重い副作用がつきまとう...。
このことを学ばせてもらったのは、後に指導者の立場となって大変意義があったものだったといえます。
これこそが部活動をとおして得た最大の学びだったのです。
人生はプラマイゼロ。
私が部活動から導き出した人生哲学がまさにこれなのです。
大きい栄光を積めば、その後大きな挫折を味わうことを覚悟せよ。
努力を重ね、謙虚に生きる。
人生はゆっくりでも立ち止まってはいけない。いまは部活動をしているわけではないのだ。
時はたち、違う時代を生きている。
そのような心の整理ができ、部活動から得た栄光という名の副作用をいつしか克服できていたのです。
人生はマラソンのようなもの。
人生は山あり谷あり。
とよく表現されます。
今後についてもそのように自分に言い聞かせ、何事においてもバランス感覚を忘れずに生きていきたいと思います。
あらためて栄光に包まれたあの部活動を受け入れられるよう、そこから学んだ教訓を糧にあらたな目標に向かって生きてまいります。
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