SDGsプロジェクション

SDGsは「未来志向・発信型の三方よし」を可能にする指標

SDGsという言葉自体は、ニュースや新聞で良く見るようになったが、なんとなく輸入品感が否めない。「スターウォーズ」を初めて観た時に抱いた、(これ、めちゃくちゃ面白いんだけど、アメリカ人の映画って感じだなぁ…)という感想と似ている。


そんな生活者の心を察してか、「SDGs=三方よし」と言い切り、挙げ句、愛国心バンザイの風潮に乗っ取り「日本企業は三方よしだからSDGsを昔から先取りできてるよね!」と自画自賛する文脈もすくなくない。
SDGsを実践する企業や団体についても、三方よしと摺り合わせつつ、SDGsそれ自体は持て余し気味だと感じることもある。本当に「SDGs=三方よし」と単純化して良いのだろうか?

私がSDGsを知ったのは、藝大の社会人講座・DOORの特別講義だ。JFA(日本サッカー協会)によるSDGsに基づいた社会貢献活動を紹介する動画制作が課題で、「そもそもSDGsってなに?」というところから講義は始まった。
SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、2015年9月の国連サミットで採択された。国連加盟193か国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げられ、17の大きな目標と、具体的な169のターゲットで構成されている。

うむ。たしかにSDGsとは三方よし「の・ようなもの」ではある。ただ大きく異なるのは、三方よしが企業に脈々と流れる哲学だとすれば、SDGsはそれを測る指針になりうるということだ。
実際、講義に来てくれたJFA職員も、SDGsという指標があることで「いま私たちが行う社会貢献活動は、どういう意味を持つのか?」を自問自答できるようになったと話していた。また、それらの指標で活動を明確に説明できるようになれば、「SDGsで言えば、〜に向かう活動です!」と未来志向での発信が可能となる。
先の記事でも、SDGsの組み込み方について、以下のように述べられている。

SDGsの17項目の多くは、人間社会の本質的欲求と理解でき、マズローの5段階の欲求にも当てはめられる。すなわち、我々が、ビジネスモデルを作る時に貢献すべき項目として参照し、検討プロセスに組み込むことができる。結果として、企業の文化になりうる。(SDGs 三方良し NEC会長 遠藤信博 2019/2/25付日本経済新聞[有料会員限定])

つまり、SDGsというとなんだか取っ付きにくい感じもするが、既にある事業や文化を改めて測り直す指標となり、そこを起点に客観視することで、未来型での発信も可能となるのだ。

勤務先である出版社においても、SDGsは有効だろう。かねてより、私のボスは、“版元だけが儲けるのではなく、読者や著者や書店、本にかかわる全ての人を考えて仕事をするように”と口を酸っぱくして言う。良い話だし感覚的には共感できるのだが、実務に落とし込むには、やや曖昧模糊としている。あるいは、個別具体的になりすぎて、各論に終始してしまう。
ここにSDGsという指標を用いることにより、旧態依然とした閉鎖的な出版業においても、「未来志向・発信型の三方よし」を組み立てやすくなる。残念ながら、小社においてSDGsを掲げるのはもう少し先になりそうだが…。

今後も、SDGsに積極的に取り組む企業や団体の事例から、未来志向かつ発信型の三方よしを学んでいきたい。

(ヘッダー写真は、SDGs採択時、国連の壁にプロジェクションマッピングで祝賀した模様:UN Photo/Cia Pak)

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