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雇用形態にとらわれない。社員ではなくファンを増やすSpready流の仲間集めとは

この数年で、数多くのスタートアップが生まれ、資金調達や事業開発に関するノウハウの流通が盛んになりました。その一方で、創業期・成長期における仲間集めのリアルなストーリーは共有されていません。

「founders」は、スタートアップのファウンダーの言葉によって、数多くのファウンダーの力になりたいと考えています。スタートアップの競争力に直結する「人」に焦点を当て、ファウンダーたちのインタビューをお届けしていきます。

今回は、Spready株式会社のCEO佐古雅亮さんと、Co-Founderで取締役の柳川裕美さんにお話を伺いました。ともに人材業界でキャリアを積み、現在、人と企業の新しいつながりをつくるサービス「Spready」を運営する二人が、採用活動に思うことについて迫っていきます。

「偶然の出会い」が人生をつくっていく。Spreadyはその交差点でありたい。

ーー「応援・共感する企業に友達を紹介するコラボレーションSNS」を謳い、今や人と企業がカジュアルに出会う場となっているSpreadyですが、着想や創業の経緯はどのようなものだったのでしょうか。

佐古:僕たちの最大のミッションは「”やりたい”に出会い続ける世界をつくる」というものです。これには、僕自身の経験が大きく影響しています。

いままでキャリアアドバイザーとして多くの方と会うなかで、「これをやりたい」と自信を持って言える人は本当にごくわずかでした。また、仮に「やりたい」と思っても、一緒にやる仲間がいないという問題もあります。

そうした現象が起きている理由を自分なりに分析したところ、「人と企業が出会う機会のほとんどが転職や中途採用に限られている」という点が、大きな課題として浮かび上がってきました。

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Spready株式会社 Founder & CEO 佐古雅亮さん。2008年、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。キャリアコンサルタント、リクルーティングアドバイザーとしててIT・インターネット関連の領域の採用・転職をサポート。2015年10月にスタートアップ支援事業を立ち上げ、当該部門を管掌。2017年10月、同事業の解散に伴い、株式会社ネットジンザイバンク(現for Startups株式会社)に移籍。2018年5月、Spready 株式会社を創業し、CEOに就任。

学生のときは就職活動などを通じていろんな企業の社員と出会える一方で、いざ社会に出ると、同じ会社の人としか会わなくなる。つまり「社会人になると視野が狭くなる」というのが、日本社会の構造なんじゃないかと。

当然、視野が狭ければ人生も充実したものになりづらい。ある学説では「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」と言われているほど、人生というのは「偶然の出会い」が大きく影響して形作られるものです。

多くの人が、社内外問わずさまざまな人と出会うことで視野を広げ、「これをやりたい」と自信を持って言える社会にしたい。そういう考えから、このSpreadyというサービスを思い付きました。

柳川:私たちがやっているのは、雇用でも契約でもない、もっとインフォーマルな「人と企業の新しいつながり」を提供することです。具体的には、スプレッダーと呼ばれる紹介者が、企業側の「こんな人材とつながりたい」というニーズに対して、自分の知人を推薦・紹介する仕組み。

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Spready株式会社 取締役, Co-Founder 柳川裕美さん。2008年、株式会社リクルートエージェント(現:株式会社リクルートキャリア)に新卒入社、法人営業に従事。2012年10月よりゼビオ株式会社でグループ全体の広報・マーケティングを管掌。ゼビオグループ企業のクロススポーツマーケティング株式会社に兼務出向し、ファンコミュニティ/マーケティングに従事。2015年8月Retty株式会社へ転職し人事採用を担当、2018年4月よりコミュニティマネージャーを兼務。2019年1月より現職。

たとえば、電動キックボード事業を始めようとした会社が、事業立ち上げに必要な情報のヒアリングのために募集をかけたところ、趣味でキックボードを自作している人や、スマートロックを扱う企業の社長の紹介がありました。

このように、本来なら繋がることのなかった人がSpreadyというサービスを介して繋がっていく。予想もできない出会いを増やすという意味で、私たちは「セレンディピティカンパニー」を謳い、それぞれが「やりたい」に出会える世界を続けることを、最大のミッションとしています。

ーーそうしたなかで、佐古さんと柳川さんはどのように出会い、ビジョンを共有し合ってきたのですか。またサービスが拡大していくにあたって、メンバーをどのように集めてきたのでしょうか。

佐古:僕は当時サービスの原型を考えている際、知り合いの人事担当者などにユーザーヒアリングをしていたんですが、そのなかで一番良いインサイトをくれたのが柳川だったんです。その頃は、僕が転職エージェントで、柳川がそのクライアントという関係でした。

何度かヒアリングを重ねていくなかで、徐々に仲良くなっていき、Spreadyのビジョンなども話すようになっていったんですが、柳川も企業の採用担当として、偶然にも同じようなことを考えていたんです。

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「募集中のプロジェクト」として掲載されている案件の一例。バナーをクリックすると、会いたい人、話したいこと、困っていること、と具体的な内容が記載されたページに移行する。参加へのお礼については、紹介が成立したタイミングで、スプレッダー及び紹介者に1スタンプずつ付与。スタンプはSpready Reward Program のさまざまな「体験」や「商品」と交換することができる。

柳川:新卒採用担当としてさまざまな学生と向き合うなかで、佐古と同じように「社会に出ると視野が狭くなる」ということを危惧していました。就職活動では目を輝かせて「やりたい」と言っていても、社会に出るとそういった気持ちも徐々になくなってくる。

採用担当として、「つまらない大人、社会をつくっているのは私たちだ」と責任を感じるようになったんです。そのような私のふわっとした課題感と、キャリアアドバイザーを10年以上務めてきた佐古のビジョンがカチッとはまり、Spreadyに参画するようになりました。

もちろん私は別の会社にいたので、最初は土日だけ副業として入って、最終的には一緒に立ち上げまで手伝ったという感じです。

佐古:その後、採用媒体経由で入ってもらったCTOを含め、当時はこの3人体制で、他の社員を探しながらも、副業として従事していただいている方が30人ほどいるという感じでした。

その30人の方々は、それぞれの知り合いとか、それこそスプレッダーの方とか。僕らはそもそも雇用形態にこだわっていなくて、社員も副業もスプレッダーの方も全て含めてステークホルダーと考えているので、本当に多くの人と作ってきたサービスという感じがします。

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 今では会社が大きくなって正社員も増えましたが、サービスが拡大した分だけ関わる人が増え、より多くのステークホルダーが伴走してくれていると思っています。あくまでコミットメントの度合いが違うだけで、みな目指すものは同じです。

本業の余力でもいい。大切なのは、採用前の助走期間。

ーー雇用形態にこだわらず、広くをステークホルダーとして捉える。Spreadyのサービス内容とも通ずるこの考え方について、もう少し詳しく教えてください。

柳川:そもそも、人と企業の結びつき方は無数にあっていいはずなんです。会社のフェーズや課題によっても、大きく変わりますし。

たとえば、SaaSのカスタマーサクセスに対する知見がない状況で、社内に経験者がいなければ、知人や、その紹介で話を聞いたりしますよね。ワンラリーで終わる場合もあれば、継続的に聞きたいときもある。その場合は「副業してもらえませんか」となるし、そもそも一緒に働きたくなったら「入社してもらえませんか」となる。

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逆に、ユーザーヒアリングなどで聞かれる立場になる場合も同じです。何度か話しているうちに、そのサービスを好きになっていって、担当者と食事にいく関係になる。その場でアドバイスなどをしていくうちに、何となく一緒に仕事をするようになったり。私と佐古も、まさにそんな感じでした。

どのようなケースであれ、その企業やサービスの「ファン」でこそあれば、何か協力したいと思いますし、協力している時点で雇用形態というのは本質的には関係ない。それをサービスとして体現したのが「Spready」という感じです。

ーー今後は、どのように仲間を集めていく予定ですか。

柳川:Spreadyは、世の中にあまり類のないサービスです。先人がいないからこそ未来が不透明で、ときにビジョンにしがみつかなければいけないこともある。だからこそ、このフェーズを楽しめて、かつそのビジョンに大きく共感してくれる人が必要になります。

そしてその共感度というのは、原体験に基づいてるか、というのが大きい。「良いサービスだよね」というのは簡単に言えてしまいますが、それをどのように実現していくのかは、実際の経験に基づく共感がないと難しいと思います。

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佐古:もっと言うと、僕らが仲間集めの「見極め」において心掛けていることは、言葉を信じすぎないようにしようということです。では、どうするのか。

たとえば、僕らはSpreadyの他に、Profieeというサービスも運営しています。両方とも個人が気軽に使えるサービスだからこそ、共感してくれたのであれば、ユーザーとして実際にサービスを使ってもらっているか。

あるいはスプレッダーとして登録して、人をつなげるところまでやってもらえているか。つまり、行動ベースで次期採用者の共感度を測るということです。これは、toCのサービスを運営している企業はやりやすいと思います。

やはり転職活動において、初めて会って面接で判断するというのは難易度が高い。なので、副業やスプレッダーなど、何らかの形でステークホルダーとして関わってもらい、お互いの意思やタイミングが合致するタイミングで一緒にやっていこうと。

そういう一連の流れが自然に発生したらいいなと思います。一緒に走る期間があるほうがいい。本業の余力でもいい。そうやって、人と企業の良い出会いが増えていけばいいと思っています。

取材:清水 翔太
編集:安部 紗乙莉

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