見出し画像

人工知能(AI)は脅威ではない|マネーコンサルタント・頼藤太希 第4話(最終話)

第3話では、「コア・サテライト戦略」について解説していただきました。「攻め」と「守り」のバランスの重要性をあらためて理解できました。
最終回では、頼藤さんご自身のことについて深掘りしていきます。

マネーコンサルタント・頼藤太希
【第1話】投資を身近にできるかは”手触り感”がカギ
【第2話】「貯蓄から投資へ」の一歩は、家族間でお金について話すこと
【第3話】資産運用では“攻め”と“守り”のバランスを考えることが大切
【第4話】人工知能(AI)は脅威ではない

頼藤 太希
(株)Money&You代表取締役。https://moneyandyou.jp/

慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。女性向けWEBメディア『FP Cafe®』や月200万PV超の『Mocha(モカ)』を運営。執筆、書籍の出版・監修、講演などを通じて日本人のマネーリテラシー向上に努めている。
【今回のポイント】
✓「コア・サテライト戦略」は保険会社など機関投資家も実践している。
✓サテライト資産の運用については、ルールを事前に決めておくことも重要。とにかくやってみて、失敗から1つ1つ学んでいくしかない。
✓コミュニケーションやカウンセリングに関わる部分は、今後もAIには代替されにくい分野。
✓アメリカでファイナンシャルプランナーという職種は、弁護士や医師のように社会的地位が高く、プロフェッショナルとして尊敬される仕事。

―頼藤さんはファイナンシャルプランナー(マネーコンサルタント)になる前はどんなお仕事をされていたのでしょうか?

外資系保険会社の資産運用部門でリスク管理の仕事をしていました。10兆円を超える資産に対して、金融工学を用いたリスク管理を行っていましたが、「いかに資産を減らさず増やすか」という命題が課せられた仕事でした。このように、お金のことを真剣に考える資産運用部門で働いていた経験から、お金と向き合う大切さを学びました。

でも、これまで話してきた通り、ほとんどの日本人は、お金の教育を受けずに社会に出るので、金融リテラシーを会得していません。金融リテラシーが乏しいと、お金に振りまわされてしまい、自分らしい活き活きとした生活を送ることが困難になります。私は、日本人の金融リテラシーを向上させ、自分が本当に願う人生を歩むことができる社会を実現するべく、起業しました。

現在、多くの方に勧めている「コア・サテライト戦略」は保険会社など機関投資家も実践しているものです。「いかに資産を減らさずお金を増やすか」とはいわば「負けにくい資産運用」なわけです。個人投資家は、総じて「減らしたくないけど増やしたい」とてもわがままな性格ですから「コア・サテライト戦略」はピッタリだと思います。

ただ、お金を大きく増やしたいなら、人生のどこかで大きくリスクはとる必要はあると思います。若い独身の方なら、資産の半分程度がサテライト資産でも良いと思いますよ。人生も投資も、勝負所ではしっかり勝負する経験をしないといけません。もちろんコア資産をしっかり構築した上での話ですがね。

―プロもコア資産とサテライト資産のバランスを考えて投資しているのですね。しかし、投資初心者には、特に攻め要素の強いサテライト資産の投資はハードルが高いように感じます。何かポイントはありますか?

そもそもですが、サテライト資産はリスクが高い(変動幅が大きい)傾向にありますので、相場が大きく下がったときに、しっかりと手元に資金があることが大事です。ただし、大きく下げたところを狙った逆張り投資はギャンブル的要素が大きいので、ある程度相場が戻ってきたところを狙った「順張り投資」、トレンドに途中から乗って途中で降りる「コバンザメ投資」を活用するのが良いと思います。

あとは、「20%値上がりしたら欲張らず利益を確定させるために売ろう」や「10%下がったら一度仕切り直すために損失を確定させるために売ろう」などといったルールを事前に決めておくことも重要です。言うのは簡単なのですが、これがなかなかできないものなので、サテライト資産の投資については、とにかくやってみて、失敗から1つ1つ学んでいくしかないですね。

―ルールを事前に決めておくのが重要なのですね。ただ、ルールを愚直に守るのは難しそうです…。頼藤さんももちろん投資はされていますよね?

もちろんしていますよ。コア資産としては、預貯金、コストが安いインデックス型投資信託やバランス型投資信託積立、純金積立、企業型確定拠出年金、小規模企業共済(=小規模法人の役員や個人事業主で、退職したり事業を廃止した場合などに解約し、それまでの積み立ての掛金に応じた共済金を受け取ることができる制度)などをやっています。

サテライト資産は、日本株、米国株、FX、ソーシャルレンディング、アクティブファンド、仮想通貨などいろいろやっていますよ。

―ちょっと話は変わるのですが、今後、弁護士や会計士などの専門職がAIに代替されるのではないかとしきりに報道されていますよね。進化が目覚ましいAIの台頭については、ファイナンシャルプランナーという専門職についている頼藤さんとしては、どうお考えなのでしょう?

脅威には全く感じていないですよ。例えば、AIは、大量のデータを分析し、それに基づいて投資判断したりレポートを自動作成したりできるでしょうが、それを誰にでも分かりやすく説明することは人間のほうが得意だと思います。

また、相談者の想いを適切に汲み取ることも人間にしかできないことだと思いますね。コミュニケーションやカウンセリングに関わる部分は、今後もAIには代替されにくい分野なのではないでしょうか。

―確かに、お金に関することは、AIではなく生身の人間に相談したい気持ちがありますね。ところで、アメリカではファイナンシャルプランナーは日本よりも身近な存在として日常生活に根付いていると聞きました。この差は一体なんなのでしょうか?

アメリカでは、ファイナンシャルプランナーという職種は、弁護士や医師のように社会的地位が高く、プロフェッショナルとして尊敬される仕事だと言われています。それだけ社会的認知も高いということです。また、日本と違いアメリカには、コストを払ってプロの知識やアドバイスを最大限活用するという土壌がありますね。時間をお金で買うという意識なのかもしれません。

日本人は、プロを使う前に、とりあえず自分でやれば良いのではないかという節約志向があるように感じます。日本でも、中立的なアドバイス、顧客の立場のアドバイスを求めてファイナンシャルプランナーに相談するという方は徐々に増えてはきていますが、まだまだこれからですね。

―日本には中立的な情報やアドバイスにお金を払うという文化はまだ根付いていないですよね。情報は「タダ」だと思っている人は多そうです。最後に今後のビジョンを聞かせてください!

お金の話を口にすることが当たり前の世界を目指していきたいです。足元でも教育事情、教育費の話はママ同士で熱心にされています。これと同じような感覚で、どの株・どの投信の成績が良いのか議論したり、どのファイナンシャルプランナーに相談するのが良そうか話したり、節税術を教えあったりするような世界になったら良いなと思います。

―長い時間、ありがとうございました!

【編集者の感想】
頼藤さんのインタビューを終えて、日本で投資文化を広めることの難しさを改めて感じました。問題は根深く、構造的で、思っている以上に時間がかかるのかもしれません。しかし、若い人は「気付きはじめている」という言葉には微かな望みを感じ、頼藤さんが「投資はやったほうが良い」と真っ直ぐと仰っていたことには勇気づけられました。
投資にはリスクがつきものです。ただ、人生にもリスクはつきもので、「リスクなくしてリターンなし」ということは変わらないのではないしょうか。しっかりと「コア・サテライト戦略」の考えに基づいて投資していけば、長期的視野に立てば、成功体験を積める可能性は高いのではないでしょうか。お金にまつわる悩みが増え、中立的なアドバイスが求められるなか、「ファイナンシャルプランナー」という仕事がこれからさらに注目される気がしました。(おわり)

取材・文・編集/野水瑛介(FOUND編集部)、写真/荻原美津雄

株式会社FOLIO
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2983号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
取引においては価格変動等により損失が生じるおそれがあります。
リスク・手数料の詳細はこちら
・本コンテンツは一般的な情報提供を目的としており、個別の金融商品の推奨又は投資勧誘を意図するものではありません。
・掲載した時点の情報をもとに制作したものであり、閲覧される時点では変更されている可能性があります。
・信頼できると考えられる情報を用いて作成しておりますが、株式会社FOLIOはその内容に関する正確性および真実性を保証するものではありません。
・本メディアコンテンツ上に記載のある社名、製品名、サービスの名称等は、一般的に各社の登録商標または商標です。