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【お知らせ】 初の著書『すこやかな服』 9/1よりweb予約はじまりました 【冒頭公開】

私、マールコウサカが本を書きました(まじ大変だったけど出来上がり超感動しました)

タイトルは『すこやかな服』です。
そして早速9/1からweb予約が始まりました。

foufouのこれまで、そしてこれからのこと、僕がファッションメーカーをやる上でずっと大切にしていてこれからも変わらない姿勢の話を書きました。

こちら全国の書店さんでの販売もございます。9/29頃から店頭で販売開始です(お取り扱いについては直接お店へお問い合わせください)

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『すこやかな服』について

この本はビジネス書でもなければファッションブックでもありません。foufouを構成しているいろいろな要素を分解し、削ぎ落とし本当にずっと残していきたい考えや姿勢を書き出しています。

例えるならまるで樹齢数百年の樹のようにその地に腰を据えて存在するイメージ。foufouにとって雨の日だろうと風の日だろうと、そこから一歩も動かず佇んでくれているのです。

文章だけではなく、上質な紙にカラープリントでこれまでのビジュアルの中から印象的なものを載せているのでぜひそちらもお楽しみにください。

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本は出して終わりではなく、本と付き合い続けていくことで長く大切に読み続けてもらえるものにしていきたいです。

今、foufouを知っている人はもちろん、これからfoufouを知る人にとっても時代を超えて楽しんでいただけるように言葉を選びました。コンセプトは「灯台のように現在地を示し、行き先を照らす本」です。

今回は予約開始を記念して第一章「foufouのこれまで」から冒頭を公開いたします。

はじめに

2016年の夏、実家の6畳程度の自分の部屋で専門学校の課題もやらずに、糸まみれになりながら数着の服を作った。

数日後、東京・丸の内で当時福岡から出てきたばかりの写真家、井崎竜太朗氏にお願いし、寝ずに作った服を撮影した。7月のうだるように暑い日だった。

自分のインスタグラムに作った服を載せたら反響が少しあったので、無料で使えるオンラインストアに登録して商品を並べた。それっぽい感じがしてきた。

販売開始の21時、たった数着の服は一瞬で完売した。「注文が入りました」というメールがスマホの画面にいくつも表示されて鳥肌が立った時の感触を今でも覚えている。

あの瞬間の感動は今思い出しても、これまでのどんな経験より震える。
僕はこの時無限の可能性に気づいてしまったような気がする。インターネットを使って、会ったこともない遠くの街に住むどこかの誰かに、服が売れた。僕は何かの賞をとったこともなければ、アパレル業界でずっと働いていたわけでもない。名も無い服飾学生だった自分の作ったものを必要としてくれる人がいたこと。それだけでも何だか生きていてよかったなと思えた。これまでの人生が初めて肯定された瞬間だった。

10人が必要としてくれたものはきっと、100人が必要としてくれる。
100人が必要としたものはきっと、1000人が必要としてくれる。

小さな丘をヨイショヨイショとハイキングを楽しむように登ったら、その奥に大きな山を見つけた気分。

その山は美しく霞んで見えた。
この丘の頂上でさえこんなに心地がいいのに、あの山の上からはどんな景色が見えるんだろう、どんな感情になるんだろうと思ってしまった。
しかし、この先の山を登るには、あまりにも自分の装備が足りないことに気づいた。
それでも登らずにはいられなかった。論理的に説明することはできなかったけれど直感に従うしかなかった。始まってしまったのだから!

コツコツ地道に続けていけば、もしかしたら1万人が必要としてくれるかもしれない。
それだけ服が売れたら、きっとそれで生きていけるかもしれない。
ましてこんな形のブランド聞いたことがない、これが仕組み化されたらすごいことなんじゃないか?

コンセプトは始める前から決まっていた。ずっと思っていたことだ。
2011年の東日本大震災以降、「量より質」といわれる時代で、いいものを持ちたい、そんな気持ちはきっとみんなあるはず。
しかし、アパレルにおいては安価でも品質もよく、〝こだわりのあるいいもの〞と言われるものの良さと、そうじゃないものとの明確な違いが素人目線ではわかりにくいのが事実だ。

さらにECモールの出現によって選択肢が増えすぎて逆に自分で選ぶことが難しい。
それに思想や価値観には共感できても、この時代に1ルック20万円くらいする服を毎シーズン買ったら、メーカーにとっては正しく作られたものを販売できていい気持ちになれるのかもしれないけれど、自分の生活が健康的じゃない気がする。

値上がりし続ける消費税や電気代、不安な将来への貯蓄。現実的なあれこれを考え始めると、服が大好きという人ならともかくとして「いい服を買おう」なんてかなり優先度が低いのではないか。

とはいえファストファッションだけじゃあファッションの魔法をかけられてしまった僕のような人間は満足ができないんだ。

新しい服に袖を通して鏡の前に立ったときのあの感覚がやっぱり好きだ。美しい服を身に纏うと背筋が少し伸びる。
鏡を見ると、知っている自分なんだけど知らない自分が目の前にいる。「こんな自分もいいかも」と少し気分が上がる。

外に出ていつもの道を歩き出す。布の弛みを感じる、肌に擦れる繊維が心地よい。
どうしてか街の景色も変わって見える。いつもよりキラキラしている!
世界はきっと素晴らしい!

街行く人に挨拶をしたい気分になる。まるで自分は映画の主人公だ!
新しい服を纏った自分を見せたい人がいる、会いにいってしまいたい!

たった一着の服が、自分だけではなく見える世界さえも変えてしまうことを知っている。くるくると回ってダンスするように。

崖っぷちの時代でも関係ない、税金の値上がりも面倒な上司のこともインターネットで起こる誰かの炎上ごともどうでもいい。

自分から溢れ出る高揚感は、日常を揺らす。
日々は揺れて世界は美しくなる。
自分がこの世界の中心。それでいいんだ!

こんな時代だからこそだ、服でファッションしなくてもいい時代にこそだ。
服でファッションを楽しんでもらいたい、僕が楽しみたいんだからきっとそんな人はいるはず。それならなるべく手の届く価格で、なるべくおしゃれでやりすぎない、自分の価値観にフィットした人がものづくりをしているなら、試してみたいと思ってもらえるだろうか。

そして買ってくれた人も作ってる人も売ってる人もハッピーでヘルシーな関係でいれたら最高じゃないか。

そうだ、これがコンセプト。
誰かの「健康的な消費のために」。

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『すこやかな服』
本体価格:1500円(+税)
ページ数:192ページ
発売日:9月29日
出版社:晶文社
✳︎本書『すこやかな服』の著者印税は全額、株式会社ステイトオブマインドの職人育成アトリエの運営にあてられます。

カバー写真:井崎竜太朗
ブックデザイン:川添英昭
編集 : 深井美香(晶文社)



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