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幸せにちょっと近づくStory「星の王子と砂漠の井戸」第1話<星の王子降臨!?>


これは私が以前モロッコを旅した時の経験をもとに
自立や絆をテーマにした物語です。
誰もいない、
渇いた砂丘の真っ只中で、
必死で砂をかき集めていた。

集めた砂を掴み、
少し開いた手の隙間から
サラサラ落ちる砂を見る。

何かを探すかのように。


そんな事を何十回、
何百回と繰り返したが、
何も見つからず、

途方に暮れて遥か彼方まで続く
砂の海をただただ見つめていた。




サクッサクッと砂を踏みしめる音だけしか聞こえない。


荒涼とした、ただ砂が果てしなく広がる、
とてつもなく寂しく、
とてつもなく美しい世界。


ラクダ引きの引くラクダに乗り、私はサハラ砂漠の真ん中にいた。


「とんでもない所まで来てしまったな」


初めての海外一人旅でモロッコのサハラ砂漠に来るなんて、

我ながらチャレンジャーだなと思いつつ、

でもそのくらい思い切った行動でもしなければ
私は変われない気がした。


悟史は今頃どうしているだろう?
私の事、少しは心配してくれているだろうか?


「一人でモロッコに行きます」

とだけLINEを送って、悟史をブロックしてしまった。



ブロックしたのは返事が来ても来なくても、
事実を見るのが怖いから。

筋金入りの自分のヘタレっぷりに自己嫌悪が増した。

「マダム!」


ラクダ引きのおじさんが声をかける。


モロッコやフランスでは大人の女性に対しては
失礼のないように「マダム」と呼ぶそうだけど、

マダムって呼ばれるのは何だかおばさん扱いされているようで、
未だ受け付けない。



私まだ27なのに……。


「マダム! ラクダハラクダ、ハーツカレタ!」


おじさんは私を喜ばせようとしているのだろうが、

このダジャレは感傷的な気分をぶち壊す。


お尻も痛いしもーーーー!!


これが現実である。



「良い大学に入って良い会社に入ることが幸せへの道よ」

私は私にそう何度も言い聞かせた母の希望で有名大学に進学し、
広告代理店に入社した。

ここまでがむしゃらに勉強をして、必死で仕事をしてきた。

「そうしなきゃ!」「そうしなさい」「そうじゃないとだめ」

どこからか聞こえてくるそれらの声は
いつしか私をがんじがらめにした。

更に「倉田さん凄い!」「倉田さん素敵!」
と言った賞賛は私に追い打ちをかけ、
私は呪縛から逃げることができず、段々と疲弊していった。

疲れていた私は不満やイライラを悟史にぶつけていた。

「そんなに辛いなら仕事辞めたらどうだ?」

「辞めたら私、何者でもなくなる」

そんな会話を繰り返す度、悟史は

「自分の世界を見つけなさい」

と私に言ったが、

私にはその意味がよくわからなかった。



いや、わからなくもなかったが、
何をどうしたら良いのかわからなかった。

いっその事結婚という形で職場を去れば、
箔がついたまま辞められるし、
「妻」という肩書きもできるかな、
なんて考えていた矢先、悟史は私に言った。

「このままではお互い駄目になる。

奈美は奈美の場所を奈美自身で見つけなきゃいけない。

それには俺がいたんじゃ駄目なんだ」



そう言って私の元を去って行った。

今から二ヶ月前の事である。

何もかもわからなくなった私は結局仕事を辞め、

もはや何者でもない、無価値な人間に成り下がった。

そして自分の世界を探すために、ここまでやって来た。

童話の「星の王子さま」が好きで、
いつか来たいと思っていたモロッコ、サハラ砂漠。

物語の中に出てくる砂漠に隠された井戸、
もちろん井戸とは比喩的表現だが、
その井戸が私にとって何かの答えに繋がる気がしていた。

しかし、はるばる地球の果てのサハラまで来たのに
ベタな現実は付きまとい、何も見つかる気がしない。

「幸せってどこにあるんだ……?」

思わず呟いた。



一時間もラクダに乗ってキャンプ地に着くと、

そこには白いテントが5、6棟建てられていて、

テントの中にはベッド、バストイレもあり、思ったよりしっかりした作り。

ランタンの灯りと、赤いラグがエキゾチックな雰囲気だ。


「素敵……」少しテンションが上がった。


夕食までの時間、私は夕日を見るために近くの丘に登った。


さっきはラクダに乗っていたからわからなかったけど、

サラサラの砂は足を踏み入れると膝くらいまで埋まり、
足が取られてなかなか進めない。


はぁはぁと息を切らして丘の上まで登り、

砂の上に腰を下ろすとヒュルルーーという風の音以外何も聞こえない。

「はぁーーっ」と後ろに倒れて寝転がった。



目の前は壮大な宇宙の青とオレンジ色のグラデーション。



そのスケールの大きさに対して自分のちっぽけさに涙が出た。

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ふと人の気配を感じて飛び起き、後ろを振り返ると、
一人の青年が立っていた。


ゴールデンレトリバーみたいなふわふわの茶色の髪の毛に白い肌、

長いまつ毛はクルンときれいにカールしていて、
くちびるはバラのように赤い。


「あ、星の王子さまが大人になって戻ってきた?」


そんな風に思わせる風貌だった。



「びっくりした……」

王子は言った。

第二話につづく☆


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これは小説であり、より良い生き方を歩むための考え方を書いた本です。
自分らしく生きるためには、時に周りと戦わなければならない。
小説の登場人物が自分らしさを取り戻すために奮闘する姿を描く事で、
世の中に対して疑問を投げかけると同時に、
あなたらしく生きる事を後押しする物語です。

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さーんきゅー
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経歴:広告代理店内で映像編集→編集ノウハウ本出版→カフェでバイト→今はモロッコ雑貨店の店主 。https://www.meziyan.com/ noteでは日々思う事をベースにした物語やコラムを書いてます。Kindle小説「陽菜13歳・ため息盛り」出版。飼い猫「こゆき」を溺愛♡