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創業80年の老舗企業が段階的にオンライン化を進め、コロナ禍の大赤字から業績回復をした話


コロナで大赤字に

創業80年の老舗化粧品メーカーA社は全国に50店舗のエステサロンを展開し
化粧品の研究開発から製造販売まで一気通貫でサービスを提供されていました。

A社は前年の決算では、コロナの影響で大きな赤字でした。

A社の新規集客の7割はオフラインでのイベントによるプロモーションで行っていたのですが
コロナの影響でイベントは中止、サロンも休業せざるを得ない店舗が増えたことが業績悪化の原因です。

集客ができる状態に戻しスタッフのモチベーションを高め
お客様へまた高品質なサービスを提供できるようになることが直近の課題でした。

ターゲティングをやり直す。しかし…


まずはA社の課題を洗い出します。

上述の通り、大きな売上低下の要因は、オフラインのイベントプロモーションができなくなったこと。

さらに現状の集客状況を分析します。

年齢層別に分析すると、集客できていたのはF3(50歳以上)とF2(35~49歳)層であり
F1層(20~34)はオフラインのイベントで足を止めていただける機会が少なく集客できていなかった事が分かります。

エステサロンにはF1のスタッフも在籍している。
F1のお客様は、F1のスタッフの方が美容に関する相談しやすいのではないか?と思いますし

実際にいくつかの店舗の内装を確認しましたがF1層でも入りやすいような店舗設計でした。

そしてF1の集客といえばやはりネット広告
集客戦略のオンライン化でターゲット拡大を行い、売上回復を見込めるのではないか?と思い
A社本社でネット広告の提案を行います。

しかし反応は

「現場スタッフが使いこなせない」
「二重管理は予約がバッティングする可能性がある」
「自社システムの改善が必要だから難しいのではないか」

など、前向きな意見はいただけませんでした。

しかしA社が業績を回復させるためには取り組まないと行けないことは明確でした。
どうやってこの取り組みをスタートできるか?考えました。

V字回復プロジェクトを始めるために

いただいた意見を整理すると3つに分類できました。

スキル:「必要なのは分かったけど難しそう」
リスク:「お客様にはご迷惑をおかけしたくない」
キャパシティ:「誰がマニュアル作成や研修をする?」

そしてこれはあくまで本社からの意見です。
実際に業務を行うことになる店舗にいらっしゃる方々のご意見をいただくことにしました。

分かったことは、今回集客のオンライン化について提案をさせていただきましたが
A社ではこれまでWeb会議すらしたことない会社であったので
そもそも業務のオンライン化自体に非常に後ろ向きでした。

私の提案ではネットでの集客と業務のオンライン化という
2つの新たな取り組みを提案していたということもあり、ハードルを感じられた理解しました。

集客だけではなく、現場スタッフの業務のオンライ化の浸透が必要でした。

3ステップに分けてPJを進めます。

ステップ① 従業員の不安を取り除く
ステップ② 本業のオンライン化
ステップ③ ネット集客やシステム改修

ステップ① 従業員の不安を取り除く

本社には
「まずはステップ①でスタッフの様子を本社で見ていただいて、
 これなら行けるなと思ったらステップ②に進むことを認めていただけませんか?」
と説明しご理解いただきました。

まずは本業ではなく間接業務のオンライン化を進めます。
目的はスタッフのオンライン体験を積み、不安を取り除くことです。

具体的には社内の研修やエリア毎の定例会などWeb会議で実施いただきました。
円滑に進むよう、事前にWeb会議の入り方の説明書なども用意し進めます。

また、この施策を進めるにあたり
オンラインと相性が良さそうなスタッフを選考し推進役とさせていただき
店舗内では先生役として理解を浸透させていただく体制にしました。

間接業務のオンライン化が徐々に進み始め、エラーなく運営できるようになった頃
社内でも影響力のあるエリアマネージャーの方から本社のメンバーに
「このやり方通りにやれば誰でもできる!」と後押ししてくださったことを皮切りに
施策は次のステップに進みます。

ステップ② 本業のオンライン化

本業であるお客様へのサービス提供の部分でもオンライン化を促進します。

ステップ①である程度慣れていただいていたこともあり
使い方マニュアルさえあれば、大きな問題なくマスターいただけました。

・非接触型のオンラインアドバイスのメニュー導入
・セルフケアの動画配信
・ECサイトの管理者を店舗毎に配置し、店舗毎で分析できるようになる

ステップ③ ネット集客やシステム改修

ようやくネット集客に着手できます。
問題は予約管理機能で、ネット広告から入る予約情報と
現状の予約を管理しているデータが紐付かないので
予約がバッティングすることなどが懸念されていました。

これはシステム会社と打ち合わせを重ね
システム間のデータ連携を行うことや、運用上のルールを徹底することでクリアできました。

またこれは2重管理の回避に加えCRMも強化できるので
ネット広告の運用次第ではリピートを促進できるなどLTV向上の強みもありました。

業務フローまで設計した上でネット集客を再度提案。
課題はクリアできているので、導入することになりました。

取り組みの結果と振り返り


まだ年度が締まってはいないですが、集客課題が改善され
このペースだと黒字化が見込めているということはご報告いただいております。

また店舗からは「新卒のスタッフが同世代のお客様が増え楽しそうに働けるようになりました!」
というお声があったことが嬉しかったです。

振り返ると当初は集客のオンライン化だけを提案していましたが
A社内では「使いこなせないのでは?→リスクに感じる」という心理状態だったと思います。

新たな取り組みを行うときは、その対象業務だけ切り取るのではなく俯瞰して考え
今回で言うと「間接業務→本業」のように進め方の順番が重要だという学びにもなりました。


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