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病院薬剤師が語る気になるクスリの話

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第1話「下剤」 第2話「頭痛薬」 第3話「眠気防止薬」 第4話「花粉症治療薬」 第5話「痔疾用薬」 第6話「胃腸薬」 第7話「睡眠薬」 第8話「下痢止め」 第9話「発毛・育毛剤」… もっと読む
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記事一覧

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第11話「水虫・たむしの薬(白癬治療薬)」

高温多湿な日本の風土病~ありふれた身近な皮膚病~今回取り上げるのは「白癬治療薬」。 白癬とは皮膚糸状菌(白癬菌)というカビによって生じる感染症です。 この菌は皮膚の角質層・毛・爪など、ケラチンというタンパク質が豊富な部位に寄生する特徴があります。 皮膚にカビが寄生して生じる病気(皮膚真菌症)は、新たに皮膚科を受診する患者の12%程度を占め、そのうち白癬は実に88%。 わが国ではごくごく「ありふれた」病気です。 そのことは、沢山の「俗称」があることからもうかがい知れま

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第9話「育毛・発毛剤」

「切実」な男の課題、薄毛と脱毛今回のテーマは「育毛・発毛剤」です。 ちょっと古いですが、まずはこちらをご覧ください。 いや~、味わい深いCMが多いですねぇ。 「抜け始めてわかる 髪は長い友だち」 女性陣には理解困難かもしれませんが、このCMコピーが言い表しているように、男性にとって脱毛そして薄毛になるということは、長年の友を亡くすに匹敵するのと同じくらい切ないものです。 最近では「薄毛で放置するくらいなら」と思い切ってスキンヘッドにする方が大勢を占めるようになりまし

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第8話「下痢止め(止瀉薬)」

「切実」ゆえに「誤解」の多い病気今回のテーマは「下痢止め」です。 実は私も「突然の便意」に悩まされたクチです。 (しみじみと)困りますよねぇ・・・。 これが通勤・通学中に起きると、もう地獄です。 首尾よく近くのトイレに駆け込めればよし、しかし使用中の場合はもちろん別のトイレへ急行する訳ですが、その時考えるのは・・・。 「誰にも会うな、誰にも会うな」(苦笑) 無表情&早足でようやく空いてるトイレを発見(やたっ!) ところが不思議ですね、安心した瞬間・・・(ああああ

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第6話「胃腸薬」

現代社会の必需品!?今回は「胃腸薬」を取り上げます。 「パンシロンでパン、パン、パン」 子どもの頃、最も馴染みのあった薬のCMソングがコレでした。 忘年会シーズンになると、薬局・薬店には特設コーナーが出来ます。 確かグルメ漫画「美味しんぼ」でも、「日本人は胃腸が弱いから、どっしりした本格派のビールよりも、スーパードライのようなビールが好まれる」、なんてことが言われていた記憶があります。 飲み過ぎ・食べ過ぎ・ストレス、まさに現代社会の必需品と言えますね。 突然ですが

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第5話「痔疾用薬」

人に言えない「身近な」病気今回は何と何と「痔の薬」を取り上げます。 ある日のこと、交番に落とし物を受け取りに来たうら若き少女。 少女「あの~、黄色い箱の・・・」 警官「はっ、黄色い箱の・・・あ、届いてますよ」 黄色い箱の「ハイボラギノールS坐剤」を取り出す警官。 警官「はい、ボラギノールSでしょ。早く治しなさいよ」 この少女が痔なのだと驚き、岡持ちを落とす出前持ち。 少女「ええ~、やっだー、お父さんのっ」 この「懐かCM」のように、「おじさんの病気」というイメ

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第4話「花粉症治療薬」

労働世代を悩ませる「国民病」この記事を書いているのが2月の始め。 寒いのが苦手の私にとっては待ち遠しい「春」も、花粉症持ちの方にとっては憂鬱極まりない季節のようですね。 毎年繰り返される花粉症の症状はとても辛く、生活の質(QOL)や、日常生活に必要な集中力・判断力・作業能率にも大きく影響します。 海外の調査によると、調査した11疾患の中で花粉症・アレルギー性鼻炎の生産損失額が最も大きかったことがわかっています。 Lamb CE et al:Curr Med Res

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第3話「眠気防止薬(カフェイン)」

多様化するカフェイン摂取と懸念材料今回は「カフェイン」を取り上げてみようと思います。 受験生やビジネスマンは言うに及ばず、長距離トラックの運転手やガードマン、夜勤のある我々医療従事者にとっても必須アイテム。 カフェインが眠気覚ましに効くことは、かなり古い時代から知られており、アラビアの隊商が、ラクダがコーヒーの実を食べると一晩中元気に働いてくれるのに気づいたのがそもそもの始まりとのこと。 ※何とカフェインの語源は「カフェ(コーヒー)にイン(含まれる)物質」なのだそうで

病院薬剤師が語る気になるクスリの話 第2話「頭痛薬(主に解熱鎮痛薬)」

※本文中に登場する「診療ガイドライン」とは、現在の医療水準で推奨される医学的見解をエビデンス(科学的根拠)と共に示したものです。 身近なのに意外と危険な頭痛薬今回取り上げるテーマは「頭痛薬」です。 本当は「痛み止め」という括りでお話したかったのですが、いざ記事を書き進めてみると、かなりハードルが高いことに気づきました。 どういうことか? 実は、一口に「痛み」と言っても、「歯痛」「生理痛」「筋肉痛」「がん疼痛」など幅広く、その「痛み」を和らげる薬もまた多様なのです。