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東京大学大学院を受験した話

大阪府立大学で情報工学を専攻しているB4です.
この夏,東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻を受験し,合格しました.
院試対策をする際に,過去に受験された方のブログが非常に役に立ったので,自分も受験体験記のような形で院試に関する情報を書き残しておこうと思います.
自分の院試全体について徒然と書いているため,少し文章がくどいかもしれませんが,ご了承ください.

受験のきっかけ

僕が東大を受験しようと思ったきっかけは主に以下の4つです.

1.東大に対する憧れ
2.宇宙科学研究所で研究したい
3.環境を変えたい
4.自大の院試免除が貰えなかった

1はただただシンプルに東大という大学に行ってみたいというだけです.学部入試で東大を受験して落ちた過去があるので,大学院からでも東大に行ってみたいという気持ちがありました.
ただ,今の大学で所属している研究室と工学系の課外活動団体の環境が非常に良かったこともあり,いわゆる ”学歴ロンダ” をしたいとは思っていませんでした.

2が受験理由としては最も大きなものでした.
大学では情報工学を専攻していますが,宇宙も好きで,宇宙科学研究所には情報と宇宙の両方に関わる研究室があったので行きたいと思いました.その研究室に行くには,東大の電気系工学専攻に入らないといけなかったのです.ただ,現在の環境でも情報と宇宙の両方に関われていたので,どうするかずっと悩んでいました.東大の院試に関する情報をちょくちょく集めつつも,東大は今年の受験ではTOEFL iBTの受験が必須で面倒だったことと,自大の院試免除をもらえるかもしれないという期待から,最初は大阪府立大学の大学院にそのまま進学しようと思っていました.

3と4が最終的に東大受験をしようと思ったトリガーとなりました.
現在の環境はとても良かったのですが,居心地の良さに甘んじてしまっている部分もあったので,なんとなく,新鮮な環境に身を投げてみたいなあと少し思っていました.
そんなことを思っていたB4の5月末,院試免除をもらえないことが確定し,東大を受けるかどうかに関わらず院試勉強をしなければならないことになってしまったのです.
それが分かった瞬間,環境を変えたいという気持ちと,どうせ勉強するなら東大も受けるかという気持ちから,急に東大を受験しようという思いが湧いてきて,急遽,東大受験を決めました.
東大の出願期日の約1ヶ月前のことでした.

東大受験を決めてから

まず,行きたいと思っていた研究室の先生にメールをし,オンラインで話を聞くアポを取りました.6月下旬に時間をとってもらうことができ,東大受験をすることを確定させました.

また,すぐに試験対策に入りましたが,急に受験を決めたため,時間に余裕がありませんでした.
東大工学の院試は8月末だったので,3ヶ月しかありません.
今年度の試験科目は,
・専門科目
・TOEFL iBT
・面接
です.(コロナのためか,数学はありませんでした.)
専門科目と面接は8月末~9月頭に行われますが,TOEFLは事前にスコアを提出しなければならないので7月上旬頃までに受験する必要がありました.
また,6月は研究や輪講で忙しかったため,6月に研究と並行してTOEFLの勉強,7,8月で専門科目の勉強を行うことにしました.
また,電気系工学専攻は出願時に修士の研究計画書を提出する必要があるため,6月下旬は研究テーマについて調べたり,研究計画書を執筆したりといったこともしなければなりませんでした.

各科目の配点と合格ライン

配点は正確には公開されていませんが,過去の合格者の点数や,成績開示票に記載されていた満点の点数から,
TOEFL(200)
数学(300)
専門(400)
面接(200)
と言われています.
今年度は数学がないので,そこがどうなるのかはとても気になりました.
院試の面接は,変なことを言わなければ問題ないと言われることが多いですが,電気系工学専攻では点数化して筆記の点数と同じように合否の判定に用いられます.
合格ラインは55%程度であることが多いようです.

TOEFL iBTの勉強と受験

TOEFL iBTはこれまで受験したことがなかったため,それなりに対策する必要があったのですが,対策する時間はそんなにありません.
英語は比較的得意なほうだったので,英語力を向上するための勉強はせず,TOEFLの形式に慣れるための対策だけに集中して行いました.
対策に費やした実時間は20時間程度です.
TOEFLの公式問題集を複数図書館で借りて,付属のソフトウェアを使ってPCで本番同様の模擬試験をひたすら解き,形式になれたり,時間配分の感覚を掴んだりしました.目標は東大院試の合格者平均と言われている75点前後としていました.

6月最終週に1度目を受け,70点以上であればこれを提出するつもりでしたが,初めて受けるTOEFL iBTの独特な試験環境に集中できなかったり,ライティングの対策不足だったりで結果は64点でした.受験料が3万円近くするので少し悩みましたが,即翌週の試験を申し込み,スピーキングとライティングの対策を1週間追加で行いました.

7月頭に受けた2度目では,試験環境もどんな感じかわかっているので1度目よりも集中することができ,対策を行ったスピーキングとライティングの成果も出て79点を取ることができたので,これを出願に用いました.
過去にTOEFLを受けたことのある先輩や友人には,試験環境を一回経験している分2回目はスコアが結構あがると言われていたのですが,まさにその通りでした.

専門科目の勉強(方針,参考書)

電気系工学専攻の試験科目は
1.電磁気学
2.電気回路
3.情報工学I
4.情報工学II
5.固体物性
6.制御・電気エネルギー工学
の中から2科目選択です.
僕は電磁気学,情報工学しか履修しておらず,電磁気学を受けたのも3年前でかなり忘れていたので,3,4の情報工学で受験することにしました.
余裕があるのであれば,複数科目対策しておいて,当日問題を見て解く問題を決めたほうがいいと思います.

情報工学の内容ですが,情報理論,信号処理,論理回路,アルゴリズムの4分野でした.
7月頭から勉強開始したため,対策期間は2ヶ月もありませんでした.
その上,これらの科目には授業を受けてから触れていなかったため,基礎の確認から勉強しなおしました.
信号処理が苦手だったので,情報理論,論理回路,アルゴリズムの3つで点数を稼ぐという方針を立て,7月下旬までは参考書を使いながら基礎を勉強しなおしました.

参考書ですが,自大の授業で使っていた教科書に加え,
東大院試@電気系いんふぉ 参考書と勉強法(専門、情報)
で紹介されている参考書や
東京大学授業カタログで調べた東大の授業で使われている教科書を追加で購入して使用しました.

7月下旬からは過去問を解いていき,解けなかったところを参考書で演習するという形で行いました.
過去問を集めるのは少し大変で,結局何年か分は入手できなかったのですが,現在は東京大学電気系工学専攻ホームページで2012年度以降が全て公開されています.
ちなみに,東大の情報系のメインは情報理工学系研究科なので,情報系で電気系工学専攻を受ける人はおそらくそんなに多くありません.電気系工学専攻はいわゆる”電気系”の人が多く,情報工学の試験問題の過去問や問題に関する情報はあまり転がっていません.(過去問の答えも全く見つかりませんでした)

8月上旬にある程度過去問を解き進めて行っていた時,あまりにも自分の出来が悪すぎて間に合うかどうか非常に不安に感じました.やはり勉強開始が遅すぎました.
それ以降は過去問で出来なかったところを重点的に演習を行い,8月下旬に差し掛かる頃,1年分だけ模擬試験用に残しておいた過去問を解くと,情報理論,論理回路,アルゴリズムは概ね解けるくらいにはなっていました.
悪くても6割,よければ完答できるくらいだったので,ある程度目処が経ちました.
信号処理はやはり苦手なままで,分野によっては手がつけられて,半分くらい解けるかなという程度でした.さすがにもう時間がないので,手がつけられるところを確実に解けるようにしつつ,残りの3科目で信号処理をカバーできるようにしようと思っていました.

大まかな目標としては,
情報理論,論理回路,アルゴリズムで平均7割(=210点)
信号処理は4割(=40点)
合計で250/400(=62.5%)
程度を目指すことにしました.

大阪府立大学の院試

滑り止めとして,現在在学中の大阪府立大学の院試も受験しました.受験したのは工学研究科の知能情報工学専攻(現 大阪公立大学情報学研究科 基幹情報学専攻)です.
東大の院試の6日前に府大の院試がありました.府大の院試の詳細情報については省きますが,問題は非常に簡単な方で,1週間集中して勉強すれば大抵合格できると言われています.

僕は東大の対策で精一杯だったのと,府大の院試は簡単だから大丈夫だろうという甘い考えでいたので,府大の対策は直前3日間しか行いませんでした.

対策について
府大の院試の科目は,数学(微積分,線形代数,確率統計),専門(アルゴリズム,論理回路,ソフトウェア,コンピュータアーキテクチャ),面接です.
数学は高校数学でもある程度太刀打ちできる程度の難易度だったので,基本的な内容を覚えていればほとんど対策は要らないと思います.僕は線形代数の内容がすっぽり抜けていたので,基本的な内容を少し復習しました.問題は統計で,確率統計の片方の授業を取っていなかったのでほぼわかりません.諦めることにしました.
専門は,アルゴリズムと論理回路は東大向けに対策していたので良かったですが,ソフトウェアとコンピュータアーキテクチャは直前になってようやく手をつけました.ソフトウェアは過去問を見る限り授業でやったことそのままだったので良かったですが,コンピュータアーキテクチャはそもそも授業で内容が頭に入っていなかったため,全くわかりません.諦めることにしました.

試験本番
数学は統計以外はある程度解けました.
専門は過去問演習を通してやっていなかったため,のんびりといていたら時間が足りなくなり,コンピュータアーキテクチャはどちらにせよ解く時間がありませんでした.ソフトウェアは完答しましたが,論理回路とアルゴリズムは想像していたよりも難しく,半分くらいしか解けませんでした.
結構やらかしたなぁと思いつつも,なんやかんだ大丈夫だろうと甘く考えていました.

翌日は面接です.
面接は志望動機等の基本的な内容を問うパートと,試験問題の内容について問うパートに分かれていました.
そこまで気負わずに挑んだのですが,1つ目のパートにおいて,
「もしこの試験に落ちたら,進路はどうしますか?」
と聞かれました.この質問を聞かれると筆記の出来がやばいと言う噂を先輩から聞いていたのでめちゃくちゃ焦りました.
2つ目のパートでは,案の定,コンピュータアーキテクチャと統計の出来が悪いことについて問われましたが,時間が足りなかったで押し通しました.それ以上深く聞かれることはありませんでした.

結局,余裕だと思っていた府大の院試は,もしかしたら落ちてるかもなという感触で終わりました.
ただ,最悪冬院試で再度府大を受ければいいと思っていたので,そこまで焦ることはせず,滑り止めがないかもしれないから絶対に東大に合格できるようにしようと思い,残りの数日間,東大に向けて勉強を続けることができました.

東大院試本番

筆記試験
出来を簡潔に述べると,
情報理論,アルゴリズム,論理回路は完答
信号処理はあまり対策できていないところが出てほぼ手がつかず
という感じでした.
信号処理があまり解けないことはわかっていたものの,最悪の状況でした.しかしながら,残りの3つを全て解けるという嬉しい誤算があったため,全体的には目標通りくらい取れているのではないかと思っています.

面接
面接で聞かれる内容は事前にある程度知らされており,以下の通りです.
・志望理由
・卒業研究について
・修士論文の研究計画について
・修士修了後のキャリアパスについて
これに加え,基礎的な学術内容について問われることがあると言われていましたが.具体的にはわかりませんでした.
過去に受験した人の情報では,研究の内容についてかなり根掘り葉掘り問われると聞いていたので,かなりビビってました.
自分の研究について答えられなければ,研究を適当にやっているとみなされると思い,卒業研究の内容についてはきちんと答えられるように準備しました.

面接本番はZoomで行われました.
一人当たり30分の時間が確保されており,そのうち実際に面接が行われるのは10分程度かなと思っていました(過去に受けた人で10分程度と言っている人がいたので).しかし,実際には30分丸々質問攻めでした.

まず最初に5分程度で事前に知らされていた質問項目について話すように言われました.
その後,最初に問われたのは筆記試験で出来の悪かった信号処理に関する質問でした.かなり多くの質問が出されましたが,一部しか答えられず,かなり辛かったです.
その後は,卒業研究と修士の研究計画について,研究内容の周辺知識についてかなり色々と問われました.質問自体は研究に関連する基礎的知識を問うものだったので,卒業研究に関する内容はある程度答えられましたが,修士の研究については卒業研究とはジャンルが違い,なんとなくやりたいことをまとめただけだったので,知識不足なところが多く,全然答えられませんでした.
修士の研究のジャンルが卒業研究と異なる場合は,その研究に関連する論文等をたくさん読んでないときついと思います.

試験全体の所感
筆記はそれなりにできたので合格できる可能性はある程度あると思いますが,面接でどれくらい減点されたかの想像がつかず,面接の点数次第かなぁと思っていました.

院試の結果

府大と東大両方とも合格しました.
東大の電気系工学の場合は研究室の配属結果も翌日に通知されるのですが,研究室は第1志望ではなく,第8志望の研究室に配属となってしまいました.
点数開示は後日される予定なので,公開されたらまた載せようと思います.

追記
かなり遅くなりましたが,院試の点数開示結果を掲載します.

東大
口述試験は質問に全然答えられなかった割に半分近くあるので,志望理由と卒論内容,研究計画についてある程度まともに説明できていれば,半分程度は取れるのだと思います.
専門科目は4科目中3科目は完答したつもりだったので,想像以上に低い結果となりました.情報理論が前の設問の計算結果が次の設問の計算に影響してくるような問題だったので,おそらく序盤で計算ミスをしてガッツリ減点されていたんじゃないかと思っています.
英語はTOEFL iBTの点数そのままです.
自分が調べた限りでは,過去の合格者の専門の最低点は44%でしたので,この点数でも合格できたことに正直驚きました.おそらくボーダーあたりだと思います.

府大(現 大阪公立大学 情報学研究科 基幹情報学専攻)
専門科目は1科目ほぼ白紙なので100点分はなく,残りの科目で全体の5~6割取れているので想定通りです.
数学は想定よりかなり低かったです.1年生の時に授業でやってからほぼ勉強していない状態で受けたので,計算ミスが多かったのだと思います.確率統計の統計は白紙なので,50点分はそれでなくなっています.
英語のおかげでなんとか6割超えられていますが,英語ができていなければ落ちていたかもしれないなと思っています.

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振り返り/反省

自分の場合はかなり直前に東大の受験を決めましたが,これだけ時間が短くてもなんとか合格はできました.これは電気系の専門科目が多くないことと,今年は数学がなかったおかげでなんとかなっただけであって,他の専攻で専門科目が多い場合や,数学がある場合はもっと計画的に勉強を始めないと厳しいのではないかなと思います.

専門科目について,総合的には点が取れたとしても,出来が悪いところは面接でどんどん突かれる可能性が高いので,やはり全ての科目をきちんとできるようにしておく必要があると感じました.

電気系工学の場合は面接で点数をつける分,研究内容に関しても鋭い質問や具体的な質問がたくさん飛んでくると思われるので,自分の研究に関連する内容をきちんと理解し,説明できるようにしておくこと,修士で行いたい研究は,関連研究の論文をたくさん読んで,今すぐにでも研究に入れるくらい周辺知識を固めておくべきだと思いました.

最後に

最後まで読んでくださりありがとうございました.
また何か思い出したことがあれば追記していこうかなと思います.
もし院試について何か聞きたいことがあれば,TwitterのDMに気軽に連絡ください.




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