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丹田は3つある!最高のパフォーマンスを発揮する「体の使い方」

 緊急事態宣言が開けて、イベントが目白押しの年末に向かうなかで、今まで自粛していたイベントが解禁されていくことでしょう。プロによる公演だけでなく、みなさんが趣味でやられている歌、ピアノ、ダンスなどの発表会も開催されるのではないでしょうか?

 大勢の人の前に立つことがひさしぶりで、つい緊張してしまうこともあるかもしれません。ほどよい緊張感は大事だと言いますが、がちがちに緊張することなく、リラックスしていつもどおり、できればそれ以上の力を発揮したいですよね。

 緊張したときの対策として、よく、「人」という字を3回手に書いて飲み込む、といったおまじないや、セールスパーソンの間では、鏡にうつる自分の姿に向かって、「私はトップセールスだ!」と何度も叫ぶアファメーションなどといった暗示が勧められます。

 明治大学教授でベストセラー作家である齋藤孝さんは、テレビでもおなじみの文化人。もはやテレビに出るからといって、緊張などされないのでは、と思いますが、齋藤先生が、「緊張してしまったときの対処法」を教えてくれました。齋藤先生によると、緊張してしまったときは、【体の使い方を変えるといい】そう。

『雑談力が上がる話し方』『大人の語彙力ノート』『読書力』などのベストセラーを著し、「読み・書き・話す」ことのプロである齋藤先生ですが、実は、「身体」にも非常に重きを置いています。本日は、齋藤先生による【緊張を解く方法】と【リラックスして自分を表現する方法】を『10歳からの伝える力』から抜粋・編集してご紹介します。

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緊張しない「体」の使い方

 どんなに準備をしてきても、発表の本番はどうしたって緊張してしまうよね。それは仕方のないことだし、前にも言ったけど、適度な緊張は悪いことではないんだ。ただ、あまりにも緊張しすぎているなとかんじたら、おへその下に手をあてて、深呼吸をしてみよう。緊張するというのは、意識の上に「気」が上がってしまっている状態。だからおへその下に手をあてて、ふーっという息とともにその「気」を下におろすんだ。それだけでも気が落ち着くよ。
 人の体には「丹田」と呼ばれるところがあって、そこには気力が集まる場所とされているんだ。特におへその下には「臍下せいか丹田」と言って、ここに意識を集中すると、健康になり、「勇気」が湧いてくる、と言われている。僕はこの臍下丹田を含め、丹田には3つあると思っているんだ。
 孔子の『論語』って聞いたことあるかな? 孔子は中国の春秋時代の思想家で、儒教の始祖なんだ。孔子は『論語』のなかで、
「知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者はおそれず」
 と述べ、「知・じん・勇」を儒教の「三徳」としている。知者は知恵があるので迷いがなく、仁者じんしゃは誠実だから憂いがない、そして、勇気ある勇者はおそれることがない、ということだね。
 その「知(知性)」の丹田は前頭葉、つまり「おでこ」にあり、「仁(誠意や優しさ)」の丹田は「胸」、そして「勇(勇気)」の丹田は「おへその下」にあると僕は思っているんだ。
 だから、発表前に「緊張しすぎているな」と思ったら、まずおでこに手をあてて「頭はちゃんと働いているか、何を話すかちゃんと整理できているか」というのを確認し、次に胸に手をあてて「みんなにわかりやすい話になっているか、誰かが傷つくような内容になっていないか」とふり返る。そして最後におへその下に手をあてて、「勇気を持って自分を表現しよう」と集中する。
 そうやって3つの丹田に手をあててから、息をふーっと吐いて、軽くジャンプして、「よしっ」と言うように手をぐっと握って前に出ると、声が出やすくなるよ。

人間国宝直伝!すべての感情表現は○○を開くことから始まる

 歌舞伎役者で人間国宝の坂東玉三郎さんに、僕は以前、「すべての感情表現は、胸を開くことから始める」と教わったことがあるんだ。胸を開くというのは、自分をオープンにするということ。歌舞伎での演技のことだけではないんだ。自分をオープンにして相手に向き合う。それがあらゆる表現において大切なこと、ということだね。
 だから、発表の前には、胸をぐっと開き、自分をオープンにするという動作をしよう。それだけで、リラックスして感情を表現できるようになるんだ。ステップとして、まず軽く数回ジャンプをして、ハッハッと息を吐く。身体じゅうの酸素入れ替えるようなイメージで。最後にふうっと大きく息をついて胸の前で手を合わせ、「殺されるわけじゃないし、嫌われるわけじゃない」と心のなかで言って、合わせた手を左右にパーンと開く。そのときにぐっと胸を開くんだ。
 そして聴衆を左右に見て、見渡す。アイドルがコンサートで、左右や二階席に向かって「元気~? 今日はありがとう!」とやるように、端から端までアイコンタクトをするイメージで見渡す。話を始める前、あらかじめ自分が真ん中に立つ前にそれをやっておくんだ。よく「緊張するなら聴衆をかぼちゃだと思え」などと言うけど、僕はそう思う必要はないと思うんだ。どっちみち、人はかぼちゃには見えないからね(笑)。みんなを見渡して、「みんな見てくれているんだ、嬉しいな」と受け止められるくらい、神経を太くしておこう。

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▼『10歳からの伝える力』のまえがき全文はこちら

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(編集部 杉浦)


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