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ユダヤの知恵から日本の将来を考える

自民党総裁選が終わって、いよいよ今月末に総選挙です。

国民国家の一員としての自覚が思い出される時期になると、いつも思い出す歌があります。忌野清志郎がRCサクセション時代に歌っていた『明日なき世界』という歌です。

東の空が燃えてるぜ
大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しの出来る年齢
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
鉄砲かついで得意になって
これじゃ 世界中が死人の山さ

奴らは俺がおかしいと言う
でも本当のことは曲げられやしねえ
政治家はいつもゴマカシばかり
法律で真実は隠せやしねえ
そりゃデモをするだけで 平和がくるなんて
甘い夢など見ちゃいねえさ

RCサクセション『明日なき世界』

デモをするだけで 平和がくるなんて
甘い夢など見ちゃいねえ

清志郎は選挙に行くことを推奨した選挙ソング『目覚ましは歌う』という唄もあります。キヨシローはラブソングが素晴らしいのですが、政治的なネタを歌う社会派シンガーでもありました。

そして、もう一つ、これ。三島由紀夫が東大全共闘と東大駒場キャンパスで討論した伝説的な映像が思い出されます。

私はこのドキュメンタリーの最後に三島由紀夫が締めくくる「これはあなたがたに論理的に負けたということを意味しない。つまり諸君が天皇を天皇だと、ひと言言ってくれれば、俺は喜んで諸君と手をつなぐのに、言ってくれないから、いつまで経っても殺す殺すと言っているだけのことさ。それだけさ」という言葉に痺れます。

内田樹は「三島と全共闘には米国という敵があった。ある意味”反米”という意味では共闘していた」といった主旨の解釈を『街場の天皇論』(東洋経済新報社)で述べていました。

三島由紀夫は市谷駐屯地で自衛隊に檄を飛ばしたあとに、割腹自殺しましたが、生前に三島は「アメリカが日本の肩越しに中国と外交する時代になるだろう」と今の状況を予言していました。

さて、日本という国はどこへ向かうのか。先進国として世界のリーダーシップをとることができるのか。

そんな思索を深めるにあたり、参考になる本があります。『ユダヤ 賢者の知恵』(石角完爾・著)という書です。一部引用してご紹介します。

世界でリーダーとなる資格を得るには?

世界でリーダーとなる
資格があるのは、
圧倒的な軍事力と
宗教力のある国家である。

 軍事力もなければ宗教力もない国は体力(軍事力)も理念(宗教力・正義力)もない。
 宗教力はカトリック信者の総本山の国バチカンが一番だ。次に、北ヨーロッパの国々のプロテスタント国が二番。スウェーデンというとノーベル賞の国として何となく尊敬を集める。ノルウェーもノーベル平和賞という宗教力を持っている。サウジアラビアもイスラムの盟主の力を持っている。インドは何と言ってもヒンズー教の国だ。
 ロシアはロシア正教会、ギリシアはギリシア正教、イギリスはイングランド国教会と、いずれも宗教力をもっている。
 どの国家もそれなりに宗教の力でその範囲では指導力を持っている。
 一方、軍事力で世界のリーダー(嫌がられるが)たる国は、アメリカ、中国とロシアだ。
 それぞれが持つ正義を振りかざして戦争をする。
 宗教力もなく軍事力もない国はどうするか?
 経済力ではリーダーシップを取れない。「理念なき経済大国」は単なる「成り金国家」だからだ。
 日本が宗教力(理念)を持つ機会はあった。
 それは、あの平和憲法を単なる憲法に終わらせずに「宗教力」にする機会があったのに見逃したからだ。
ほとんど軍隊と同じものを持ちながら、空母、水中発射核弾頭付潜水艦、核装備がないために軍隊になれない「自衛隊」という中途半端なものを持っているために、もはや平和憲法を宗教化することはできまい。
 人類史上、ユダヤ人のチャールズ・ルイス・ケーディス大佐の作った日本国憲法ほどの平和憲法は、類を見ないものであるのに、それを理想化し、宗教化することができなかった日本は理念国家になる大きな機会を失った。
 日本の指導的政治家が日本国憲法第9条を宗教理念化して世界に向け、体系的な発信(第9条の理論的体系化とその英語による継続的発信)をすることはなかった。現行平和憲法を改廃してしまえば、宗教力・理念力のない国になってしまい、攻撃型戦力があっても正義なき武装国家、つまりヤクザ国家になる。
 攻撃型核武装をすることと日本国平和憲法とはまったく矛盾しない。両方は矛盾なく両立する。
 世界でリーダーとなる資格のある国は、次の二つがある国である。

①圧倒的な軍事力(=攻撃型軍事力)
②宗教力(=理念力)

 経済力はリーダーの要件ではない。
 単なる金持ちはリーダーになりえない。
 平和憲法を宗教化できなかった日本は、それでは何をもって宗教力とするか?
 そこにユダヤ教の知恵が参考になる。

平和憲法を単なる憲法に終わらせずに「宗教力」にする」という発想は1ミリもなかったので、ちょっと打ち震えるフレーズに感じます。

憲法9条に関してはこれまでたびたび政争の具にされることはあれど、国民の間で議論されたことはいままでほとんどありません。

世界で唯一被ばくした国家として「平和憲法を宗教力にする」という発想はいまからでも遅くないかもしれません。いや、もう遅いか。

世界のリーダーになるためのユダヤの知恵

 ユダヤ人では「口が一番重要」と教える。
 口とは何か?
 発言力である。発言力とは説得力である。言葉で人を動かす能力をいう。そのためには「Because =なぜなら」を長々と言わなくてはならない。「なぜなら」でもって人を説得することである。それこそが発信力となる。ただ「NO」と言うだけでは人はついてこない。

「NOだけ言うのはお馬鹿さん」
「Because が言えてお利口さん」
 なのである。

 同時に「YES」と言ったら必ず実行しないと人は納得しない。
 口下手な人はBecause が言えない。何でも「YES」と言うために、実行しないものの方が多い。それではますます信頼を失う。
 ユダヤ人の格言はこうだ。

①何でもまず「NO」と言え。なぜなら「NO」と言ったあと何日経っても「YES」に変更できるし、「YES」に変更しても相手は怒らない。
②「NO」と言う時には、「Because」を長々と説明しないといけない。断る以上は相手を納得させる「Because」を言え。
③「YES」と変更したあとは、必ず実行しろ。

 ①②③を守れば、世界のリーダーになれる。
 なぜなら、発言する国、実行する国になるからだ。
 何にでも軽々しく「YES」と言うため、実行が伴わない。
 だから、軽い国、信用できない国となってしまう。

そういえば、田原総一郎さんが三橋貴明さん、藤井聡さんと対談した動画で、田原さんが「バイデン大統領に呼ばれた菅総理はアメリカから『中国がこれから台湾を軍事攻撃する可能性がある。その時に日本は太平洋の安全にために戦え』といわれて、YESと言って帰ってきた」との逸話がありました。

「YES」と変更したあとは、必ず実行しろ。

やばいです。かなり、やばいです。

一方、日本はすでに北方領土など、悩ましい領土問題を抱えていますが、それについての「ユダヤの教え」はこうなります。

領土問題は「理屈」では勝てない

国際社会で理屈や
正義論は通用しない。
通用するのはすべて
武力と金、そして
仲間の力である。

 たとえば尖閣列島問題について「日本固有の領土だ」というのが日本の主張。その法律的な根拠は、アメリカから沖縄を返還された時に尖閣も返還されたということらしい。一括して返還されたという理解だ。
 これに対して中国の主張は「1000年前は中国の領土だった」と言う。
 はてさて、どちらが正しいか?
 1000年前か、それとも戦後のことを引き合いに出す方が正しいのか。

 私たちユダヤ人は数千年前のことを引き合いに出す。
 中国よりももっと古いことを引き合いに出す。つまり領土問題は「何千年前、1000年前、何百年前は私たちの領土だった」とみなが言うのである。
 ユダヤ人は4000年前のことを覚えている。4000年前のことを勉強するためにヘブライ聖書がある。4000年前の苦労を民族の苦労として今でも嘆き悲しむ。それを忘れないためのいろいろな行事、儀式、勉強を毎日する。
 こういう尺度から言えば、中国の主張の方が正しいということになってしまう。
 領土とは結局は武力でもって実効支配をしている国のものだということになるのが歴史上の事実である。モーゼに連れられてユダヤ人たちがエジプトから脱出し、40年間砂漠をさまよって神から与えられた約束の地カナンに何千年も前に入った。
 つまり実効支配をしたのである。その土地に定着して実効支配をする。軍事力、武力を使ってそこに国旗を打ち立てる、兵を置く、住み着く。こういうことでない限りは誰もそこを領土だと主張できないのは冷静な歴史の教えるところである。
 このように日本以外の世界では数千年、1000年、2000年、3000年、4000年前の歴史をもってどこの領土だったかと決めるのが普通である。それが嫌なら日本は海上保安庁ではなく自衛隊の武力で尖閣を実効支配することだ。
 理屈ではなかなか説得力を伴わないのは北方領土の問題とて同じである。北方領土は我が国固有の領土であった。ところが今はロシア人が住み着いて軍事基地化してしまい、実効支配をしている。日本人は一歩も入れない。
 とすれば、国際社会の冷厳な見方からすれば、それはロシアの領土ということになる。日本固有の領土でありながらロシアが実効支配する地域、これを国際社会ではロシアの領土という。
 国際社会、特に国と国との間の関係は武力を伴わない理屈や正義論が通用しないところである。
 通用するのはすべて武力、金の力、そして仲間の力である。

 金の力は今の日本の経済的困窮を見ればまったく未来に光が見えない。新型コロナウイルス対策で軍備に回す金はない。それどころか借金漬けの国だ。金の力はまったくない。失われた30年、そしてコロナで失われた永遠になろうとしている。次に仲間の力であるが、日本はEU諸国のように仲間を持たない。ASEANの盟主と言ってみたところで誰もなびいてはくれない。周りのアジア諸国は第二次世界大戦の嫌な思い出があるからだ。

バッサリと斬られてしまいました。

アメリカがオバマ、トランプ以降「世界の警察」を降りた今、中国、ロシアという大国をお隣に抱える日本。マジ、やばくないですか。

とりあえず、選挙権はしっかり行使しようかと思います。
たったの1票ですが。

【著者プロフィール】
石角完爾(いしずみ・かんじ)
千代田国際経営法律事務所代表。Technion Japan CEO。米国認定教育コンサルタント。京都府生まれ。北ヨーロッパ在住。京都大学在学中に国家公務員上級試験、司法試験に合格。同大学を主席(当時歴代最高得点)で卒業後、通商産業省(現・経済産業省)を経て弁護士となる。田中角栄の個人的推薦でハーバード大学へ入学。ハーバード大学ロースクール修士号取得、ペンシルバニア大学証券法修士課程修了。1978 年ハーバード大学法学校博士課程合格。ウォール・ストリートの名門法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、帰国後、千代田国際経営法律事務所を設立、代表に就任。ベルリンのレイドン・イシズミ法律事務所の代表パートナーとなる。日本におけるマイケル・ジャクソンの顧問弁護士を務め、国際弁護士としてアメリカ、ヨーロッパを中心にM&A のサポートなどで活躍。息子がオクスフォード大、娘がハーバード大に入ったことから、教育コンサルタントの資格をアメリカで取得。2007 年、5 年にわたる厳格な修行のもと、難関の試験及び厳格な割礼手術を経てユダヤ教に改宗しユダヤ人(ウルトラオーソドックス派 ハバド・ルバヴィッチ教団所属)となる。日本人男性では50 年に一人と言われる。現在、イスラエルのテクニオン工科大学の公式機関Technion Japanを経営し、その豊富なユダヤ人ネットワークからイスラエルの最新技術と日本企業をつなぐ技術商社として日本・欧米・イスラエルを中心に活躍中。世界のユダヤ人の中で最も知られた現存の日系ユダヤ人。著書多数。

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(フォレスト出版編集部・寺崎翼)


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