無意識の「認知バイアス」が私たちの目を曇らせる
フォレスト出版編集部の寺崎です。
書籍の編集の仕事をしていると、「著者に立てる人を見極める」という場面が多々あります。要は「この人にこのテーマの書籍企画を依頼すれば、読者が求めているいい本になるかどうか?」という、相手からしたらいささか失礼な視点で分析するわけです。
その時の判断基準となるのが「経歴」や「著作歴」です。経歴が立派であればあるほど、人はその事実に引きずられがち。「学歴」も関連してくるかもしれません。
これは編集の仕事に限らず、たとえば人材採用の場面においても同様です。
人はついつい「バイアス」に引っ張られてしまうもの。そこで、われわれはどんなバイアスで人を見てしまうのかについて『経営×人材の超プロが教える 人を選ぶ技術』(小野壮彦・著)から見てみましょう。
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学歴差別とハロー効果が結びつく怖さ
シンプルでよくある例は、学歴(および職歴)差別からくる、「ハロー効果(一部の特徴的な印象に引きずられて、全体を評価してしまう心理現象)」と呼ばれる認知バイアスによる逸材の見逃しだ。
例えば同じ「中卒」や「高卒」でも、中には、学業は非常にできたけれども家業を継ぐために中卒で職人になった人もいれば、同じく優秀だがコンピュータに没頭して大学に行こうという気持ちを持たなかったから高卒だ……という人もいるだろう。
であるにもかかわらず、私たちは「優秀=高学歴・高経歴」と勘違いしがちだ。
履歴書の大学欄が空白なだけで、「高卒=大学に行けなかった=勉強が苦手=優秀ではない」という短絡思考に陥ってしまう。
このような、「学歴差別」を感覚として持っていること自体が問題だ、と言うのは簡単だが、それは少し浅い指摘である。
本当に怖いのは、学歴差別とハロー効果が、ことさら結びつきやすく、発動しやすいということである。
例えば、学歴が物足りない人に対して、相手から少しでもネガティブな一面(特徴的な印象)が見つかったときに、それが劇的に大きな影響を与え、燃え広がり、他のポジティブを覆い隠してしまうといった現象だ。
これは人事面接エラーの代表例として、時代と文化を超えて君臨し続けているだけに、訓練されていても、頻繁に起きやすい事案である。
本当に優秀な人が選ばれて輝く機会を、ハローさんという可愛い名前の認知バイアスで潰してしまうのは、悲しいことだ。
確証バイアスによる優秀な人材の見逃し
少し似ているが、同じく頻度高く発生している例として、「確証バイアス」による見逃しが挙げられる。確証バイアスとは、「無意識のうちに自分の意見や仮説を支持するような情報を優先的に探す」という例で、大なり小なり誰でも持っている認知バイアスである。
たとえば、営業系カルチャーが濃い会社で働く、熱血漢のマネージャーがいるとしよう。無意識のうちに、積極的で情熱的な発言を部下に求めてしまい、控えめな人物の優秀さを見落とし、活かそうとしない。そんなケースが例としては挙げられるだろう(ちなみにこれは男女問わず発生している)。自分と違って言葉数が少なく、謙虚なコミュニケーションをとる人を、「ダメなやつ」と見てしまう。
この確証バイアスの怖いところは、いったんダメだと感じたら、知らず知らずのうちに、その印象を追認する情報を集めてしまうことだ。
思い込みによるミスジャッジは、確証バイアスによってスイッチが押され、燃え広がる。
こうして、人は自分とタイプの違う優秀な人を、平凡組に押しやってしまい、優秀な人の本当の価値を見落としてしまうのである。
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・・・いかがでしょうか。
思わずドキッとした人も多いのではないでしょうか。こうした「認知バイアス」による人材の見逃しにはご注意ください。
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