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アメリカに渡った日本人女性『バイリンガル』【読書感想】

久しぶりに小説を読んだ。読み終わって、目をつぶって、思い浮かぶのは、アメリカに渡った日本女性たちの姿だ。

聡子は勉強のためにアメリカに渡って、そこでテッドと出会う。その後結婚して、ブライアンを産む。その後離婚して日本に戻ってくるけど、これだけを読むと、幸せそうに思う。

舞台は70年代で、私は生きていなかったので、どんな社会の雰囲気だったのかはわからないけど、今より国際交流が少なかったと思う。ドルが高かったと思うし、留学するっていうことも今と比べると、すごいエネルギーの必要なことだったと思う。そして、きっとその時の日本人にとって、アメリカは日本よりはるかに発展した国で、そういう国にいって勉強できること、そういう国のパートナーがいることが、一つのステイタスだったように思う。

実際にそういう考え方に影響を受けて育った私世代の中にも、アメリカ人と結婚し、整った(?)顔立ちのハーフの子どもを誇らしく思っている人もいる。

でも、その一方で、涼子や芳子のような人もいるのだ。日本にいた米兵と結婚して、アメリカに渡る。涼子の場合は、夫が働かず、日本に帰るお金もなく、瀕死の状態に陥った。その後、その状態から助けてくれた人に縛られることになる。芳子は英語を話せるけど、字が読めず、社会的弱者になる。その状態から抜け出すことがなかなか難しい。夫の仕事上お金が経済的にも余裕はなく、夫は字が読めない辛さを理解してくれない。

彼女たちのことを考えれば、日本より豊かなアメリカに行って、アメリカ人の夫と一緒に生活しても、バラ色の人生というわけでなかったのだ。

誘拐事件を扱ったミステリーでもあるし、タイトルの通り言語に関する知識を得られる小説でもある。私はどちらのトピックに関しても、興味深く読んだ。特に、聡子が30年前の話を語りだしてからはあっという間に読むことができた。でも、もう一つ、アメリカに渡った日本女性の姿にも、焦点が当てられていた作品だと思う。

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