ぼくの料理が「美味いか」ではなく、そこに「腹の減っている人が」がいるかどうか
自分の店、自分の城を構えることを目標に日々技術の研鑽をしている料理人は本当に多いと思います。
昔より言われている「技術至上主義」
美味しい料理は確かな腕によって作られる。
間違いではないと思います。
一流の料理人の作る一皿は素晴らしい衝撃と官能的な余韻に浸ることは言うまでもありません。
私たち料理人は自分の先輩の背中を追って、会ったことのない本の中のトップシェフの背中を追いかけて、若い頃から技術の研鑽に励んでいますし、
その状況こそが料理人のモチベーションだったと言わざる得ません。
しかしそこに本当にお腹が空いている人がいるのでしょうか?
料理人として再確認しないといけないと思います。
私たち料理人は常に「より美味しく」を求めています。
ただ世間では食事はお腹が減っている時に行うことが普通です。
つまり、需要に対して供給が正しく作用しているのかどうか。
自分たちの作っている料理はその土地やその周辺の人に求められているのかどうか。
を常にかんがえていかないといけません。
ミシュランの格付けには「理由」があります。
一つ星は、近くに訪れたらいく価値のある優れた料理
二つ星は、遠回りしてでも訪れる価値のある素晴らしい料理
三つ星は、そのために旅行する価値のある卓越した料理
です。
ミシュランでさえ一つ星は「近くに訪れたら」と書かれているように、その料理目的の旅行ではないといっています。
ぼくを始めきっと多くの料理人はミシュランの星に興味はあるけれども、実店舗を持つとしたらレストランという形態ではない人が多いと思います。
そんな私たちが最も重視していないといけないのは「お客様の反応」だと思います。
そこに腹が減っている人がいないと料理は売れません。
料理が売れないと味を知ってもらえません。
味を知ってもらえないと、自分が作りたい料理を一生懸命やっていても意味がありません。
「腹が減っている人がいるか」というのは極端な例ですが、これが商売の本質だと思います。
ぼくが知っているレストランのシェフは星があってもなくても常にお客様のニーズを把握しようと細かいところまでも気を使っています。
インスタのチェックや最近の流行。下がってきた皿に残っている料理はないか。食事をしているお客様の表情や声質。全てに全神経を集中しています。
そんな大変なことをしてやっと「再来店」という一般的には「当たり前」と思われる状況を手に入れます。
レストランを経験して本当に思うことは、お客様のニーズを無視したような料理人は本当に成功しないということ。
やりたいことをやりたいままやっても「独りよがり」になってしまうし、こうゆう状況はお客様の前に立たない料理人にとても多いとおもっています。
私は結婚式場で働いています。
結婚式場と言えど一人の料理人。
当たり前に料理の勉強はしますし、トップシェフたちの仕事ぶりを尊敬し、日々の賄いで腕を上げようとしています。
料理業界の仕事で結婚式場は低くみられがちです。
やっぱりレストランが1番かっこよくて、結婚式場やホテルの宴会は安定求めたおっさんが働いているという認識はまだまだあります。
結婚式場はお客様の顔がなかなかみづらい現場です。
でもどんなところにいても料理人は料理人。
選んでその場にいるのだから、文句は言えないし、その場で100%のモチベーションを生めないと他では通用しないと考えています。
私の働いている結婚式場ではソースのベースとなる「ジュやフォン」からきちんと取ります。
既製品は使わないし、大変な作業もたくさんあります。
意外かと思いますがそんなクラシックなことをしている結婚式場もあるのです。
ですがそんなしっかり基礎からやっている結婚式場でも勘違い料理人はたくさん出てきます。
結婚式場というのはカラクリとして料理の利益率がとても高く設定されています。
料理の原価率は11%くらいで、はたからみたらボッタクリです。
私たち料理人はそれでも真剣に取り組んでいますが、冠婚葬祭ではこれが当たり前なようです。
これもまた一つの付加価値だと思います。
結婚式場の利益の大半は料理で計上されます。
結婚式場のお客様は、門を一歩潜ると「食事しない」という選択肢はなく、出されたものを当たり前に受け取ります。
私たち結婚式場の料理人が勘違いしやすいのは
自分の出したい料理をみんな食べてくれるという環境です。
本来なら好き嫌いで分かれる料理も、結婚式場なら誰から構わずに出します。
食べたくなくても出てきます。
好みじゃなくても出てきます。
お腹が空いてなくても出てきます。
この「当然のように」自分の料理が誰かに食べられるという環境が料理人の感覚を狂わせます。
そして「自分の料理はニーズに合っている」と勘違いするのです。
きっと結婚式場の料理人が店を持ったらすぐに潰れます。
それこそ「独りよがり」の料理人だからです。
ぼくも自分でECサイトをやるまで気がついていませんでした。
自分が誰のために料理しているのか。
どんな人のために腕を振るっているのか。
料理人にとっての「料理」とは自分のためではありません。
必ず食べてもらう「誰か」がいます。
私たち料理人が本当に追求するべきは技術よりも世間のニーズだということを心の底からりかいしなければいけないとおもいました。
働きたい飲食店を目指して目標に進んでいます。