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伝統的オリーヴ畑の放棄

この時期イタリア南部プーリアの日の出は7時頃。すでに近所で、オリーヴの実を落とす電動熊手のモーターの音が響いています。今週末は雨になるとの予報なのでその前に出来るだけ収穫しておこうと皆思っているようです。

オリーヴに関するニュース専門のネットメディア、 オリーヴオイルタイムスOlive Times(https://www.oliveoiltimes.com) によると、世界中で550万ヘクタールの伝統的オリーヴ畑が放棄される危惧があり、その傾向は増えているとのこと。これは我が家周辺でもちらほら目にする情景なので、無視できません。世界一のオリーヴオイル生産国で、イタリアの3倍近い量を産するスペインではその面積は130万ヘクタールに及ぶと言うこと。世界的にオリーヴオイルの消費は伸びているのに、これはどうしたことかと疑問に思うかも知れません。 ポイントは”伝統的”オリーヴ畑と言う点です。

樹齢数百年の巨木でも立派に実をつけるオリーヴで、その姿は芸術品のように美しく、独特の風景を作り上げています。自然と人間の共存のシンボルのような植物であると思います。人間に与える栄養的なメリットと味、風味の良さが近年の消費量の増加に繋がっていることは紛れもない事実。
ところが皮肉なことに伝統的な栽培方法ではその消費量に追いつかなくなってきていると言うことなのです。 伝統的なオリーヴ畑と言うのは100年以上前に植え付けられたものがほとんど。水の乏しい地域や丘陵地、個人所有の区画の狭い土地にあったりします。そこには天候不順や害虫対策、また少人数でも収穫しやすいように実りの時期が少しづつずれる多種の土着品種が植えられている場合が多いのです。生育過程でそれほど手のかからない作物であることもあり原産地の地中海気候地域ではオリーヴは古代から生活の一部で非常に身近な存在です。収穫は手を使って人力で行われてきました。今でも大型機械が入りにくい場所にあるので、それほど機械化が進んでおりません。

この30年ほどで世界中のオリーヴオイルの生産量は2倍以上増えました。機械化できない土地とそこに長年生きてきた土着品種は放棄され、管理しやすい場所に、その土地に合うようなオイルを多く含む品種改良されたオリーヴの木が植えられると言う傾向が進んでいます。スペインではイタリアに先んじてその傾向が強くなってきているとのこと。

イタリア国内では400種類以上のオリーヴが栽培されていると言われています。ワイン同様南北に長い国土でそれぞれ生産されてきた土着品種の個性が際立っているところが魅力でもあります。価格安定化、生産効率向上の名の下に失われていく”伝統”とともに変わって行くのは単にオリーヴオイルと言う商品だけではなく、種の多様性(ダイヴァーシティ)の問題でもあり、価値観や生活様式、人間関係などその食物との長い歴史の関わりでもあると感じます。

大橋美奈子 Facebook
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minako@da-puglia.com

大橋美奈子さん経歴

 演劇の勉強で欧米に留学し、欧米の料理に馴染みました。主人のジョバンニ・パンフィーノはスイスの有名ホテル学校を卒業後、レストランビジネスに入り、 高級ホテルやイタリア高級レストランのビーチェのヨーロッパの店舗で働いた後、 東京椿山荘に開業した超高級ホテルのフォーシーズンの高級イタリアンとして開業したビーチェの指導責任者としての勤務経験がある外食のプロです。
 そのジョバンニ・パンフィーノと,日本で知り合い結婚し長女を授かり育てていたのですが、数年前に子供の教育と生活環境を考え、主人の故郷であるイタリア・プーリアに本格的に移住したのです。母が料理学校を主催している関係で食に興味を持ち、自ら自家農園で野菜を育て、自家製のオリーブオイルで体に優しい料理を楽しんでいます。現在はプーリアで生活をしながら、イタリアの情報発信をしたり、コンサルティング、輸出入ビジネスを行っております。

 また、時々イタリアの食ツアーを開催しています。これから私が惚れ込んだイタリア・プーリア地方の自然を堪能する食情報をお届けします。

 ブーツの形をしたイタリア半島のちょうどとがったヒールの辺りがプーリア州です。私たちが日本とプーリアの架け橋になろうとダプーリアという会社を起したのは15年前です。その頃と比べ、日本でも随分認知度が高まったプーリアですが、この数年主に欧米人のヴァカンス先として大変注目を浴びています。
https://www.facebook.com/1438029856464276/photos/a.1438031556464106.1073741828.1438029856464276/1523683344565593/?type=1&theater

 プーリア州の中心部にあるイトリアの谷(谷というより盆地という方がふさわしい)にあるこの地に東京から移り住んで6年、兼業農家的生活も板に着いて来ました。プーリアといえばイタリアの食料庫といわれる程の一大農産地でオリーヴオイル、ワイン用のブドウをはじめ多くの野菜や果物がイタリア1番の生産量を誇ります。

 また、この地特有の地元でしか食べられない産物も沢山あります。プーリア料理の身上は新鮮な食材をシンプルに食す事。この地で生産されるチーズやワインもその料理と切っても切れない関係にあります。そんなプーリアの我が家の毎日の食卓に上る食べ物、飲み物たちをご紹介させていただきます。
 我が家では7対3の割合ぐらいで一般的に言うところのイタリア料理(プーリアの郷土料理)と日本食、その他(私が個人的に好きなアメリカン及びアジアンテイストな創作料理)を食べています。

有限会社ダプーリア 
http://www.da-puglia.com/

大橋美奈子プロフィール 
http://www.da-puglia.com/archives/000047.html

プーリア州の説明
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%AA%E3%83%A3%E5%B7%9E

ダプーリア
大橋美奈子


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