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FaY | ラオスの民話  ゾウとトラ


プロジェクト紹介

2021年11月からスタートした、Wisa(日本)&CAF(ラオス・ルアンパバーン県)の協働プロジェクト、「民話と若者」FaY(Folklore and Youth | フォークロア・アンド・ユース)。

本プロジェクト は、Wisa(Wakamono International Support Association)が2021年から開始したラオスの若者とのデジタルユースワークプロジェクトです。ラオス人の子ども・若者たちがお年寄りから聞き取った昔話を文字起こしし、その英語の翻訳をオンラインでつながった日本人の中学・高校・大学生の学生たちがお手伝いします。その後、日本語に翻訳して、イラストをつけていきます。

プロジェクトについての詳細は、こちらのActivo

今回は2022年1月に発表した 「ゾウとトラ」を紹介します。
民話、「ゾウとトラ」は、人間に会いたいと願うゾウとトラが、パ・リューシーとの出会いを経て、とっても残念な思いをする結末のストーリー。
その背景には、どのような歴史や文化があるのでしょうか。

作品紹介

ゾウとトラ イラスト、WISA|FaYプロジェクト

むかし、ある森で、たくさんの動物たちがなかよく暮らしていました。
その森で、人間にとっても会いたがっているゾウとトラが
おしゃべりをしていました。

ゾウがある日、言いました。
「人間はどんなすがたをしているんだろう」

するとトラは、こたえました。
「人間はとっても小さくて、賢いと聞いたよ」

そしてゾウは言いました。
「人間の頭は僕の頭より小さいのに、どうして賢くなれるのさ?」

「人間は賢いから、自分たちで家をつくってそこに住んでいるらしいよ。
人間に会ったら、僕らにも家を作ってもらおうよ」
と、トラはこたえました。

ゾウはトラが言うことに大賛成。
2匹は意気投合し、人間を探しに旅立ちました。

ゾウとトラが道を進んでいると、石のうえにパ・リゥーシー
という名前の聖者が座っていました。

「そこの君たち、どこに行くのですか?」

ゾウはこたえました。「僕たちは人間と会ってみたいんです。
会ってみて、彼らに僕たちの家をつくってもらいたいんです。
人間はとっても賢いと聞きました」。

しかし、聖者は困った様子で、こう言いました。
「人間だって?残念だけど、君たちが人間に出会ったら、
きっと君たちの背中に小さな家をつくってしまうよ」。

ゾウとトラは、なんだか不思議な気持ちになりました。
それでも、2匹は人間をさがしにもう一度、歩きはじめました。

しばらく歩いていると、大きな木が倒れて道を塞いでいました。
トラは、それを見るとすっかり気が変わってしまいました。

「これはきっと、悪いきざしだよ。
ゾウさん、君は先に進みなよ。僕は、もう行かないことにする」

しかし、ゾウは人間の顔を一目見るまで、
森に戻る気持ちにはなれないといった様子です。

ゾウとトラは、別々の道を歩くことになりました。
トラは自分達が住む森に帰ってしまいました。
ゾウは一匹で、そのまま前に進んでいくことにしました。

しばらくすると、服を着て二本の足で歩く、
顔が皺だらけのふしぎな動物が歩いていました。

「ねぇねぇ、きみたち。人間はどんな姿をしているか知ってるかい?
僕は彼らに、家をつくってもらいたいんだ。
人間はどこにいるか知ってるかい?」

そうすると、二本足の動物は小さな声でささやきました。
「おじいさん、どうやらこのゾウは私達が
人間であることを知らないようだ。
そのくせ私達を従わせて家をつくらせるだって?」

そう、ゾウが話しているのは、まさしく人間だったのです。

おじいさんはゾウにこう言いました。
「そうかいそうかい。私達が人間をここまで連れてきてあげるよ。
その代わり、約束してくれないか?」

「どんな約束ですか?」とゾウはいいました。

「私達が人間をここに連れて来る前に、
君の足を木の弦(つる)で縛らせてほしいんだ。
なぜなら、人間はとっても大きな頭をしていて、
君を見たら大きな手でつまみ上げてしまうからさ。
そしたらとっても危ないからね。」

ゾウはそれを聞いて、「しんせつにありがとう」とこたえました。

老夫婦は木から弦(つる)を取ってきて、ゾウが動けないように足と鼻を縛りました。夫婦はゾウに尋ねました。

「少し動いて見せてくれないかい?しっかり結べているかい?」

ゾウはこたえました。「もうすっかり、動けないよ」。

すると老夫婦は、ゾウを大きな木の棒で叩き始めました。
「これが人間だ!私たちが人間なんだよ!」

老夫婦は大きな声で、どんどん激しく叩きます。

「私たちに家をつくって欲しいだって?ゾウのくせに、生意気な子だね!」

ゾウは「痛い痛い」と泣き叫びました。
そして、人間のために何でもすると誓いました。

その後、老夫婦はゾウをたたくのをやめ、縄をほどきました。
それから、ゾウの背中によじ登り、ゾウを歩かせて自分たちの家に帰りました。

その日から、ゾウの背中には人間が座る椅子、
太陽の光と雨風をしのぐための屋根がつくられました。
ゾウを叩く鋭い鞭が、椅子の後ろに取り付けられました。

こうしてゾウの背中には、人間が造った小さな家が建てられました。

おしまい

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