自粛要請の報道について

密閉空間、密集場所、密接会話を避ける、夜間の外出を避ける、自宅で仕事をするといった行動の自粛に対する政府や自治体からの要請が相次いでいます。報道を見ると、この要請で困る人やこの要請を守らない人についての紹介が多いように思います。

確かに、そのような要請をされても守れない人や困る人も多いと思います。一方で、かなり多くの人がこの危機的な状況を理解して自粛をしています。実際に、在宅勤務をしている人や遊びに行く計画を変えた人はかなりの人数になっていると思います。

困っている人や自粛していない人を報道することの意義はよく理解できます。しかし、自粛を守っていない人を批判的に紹介することでさえ、行動経済学的には逆効果なのです。そういう人たちの様子を報道することの意味は、守っていないことが社会規範なのだと多くの人に認識させてしまうことです。その報道を見た人は、守っていない人があんなにいるのなら、自分も守らなくてもいいだろう、と思ってしまいます。もし、都市封鎖という事態を私たちが防ぎたいのなら、社会のことを考えて行動して自粛している人たちがどれだけ多いかということを積極的に報道すべきではないでしょうか。都市封鎖をしてしまうコストはとても大きいです。

私たちが戦っている相手はウイルスなのです。

行動自粛の効果が統計として目に見えるようになるのは2週間後です。今努力したことがすぐに目に見えないというのは、行動変容を妨げる大きな原因です。自粛をつらいことにしないで楽しみにする。自粛したことの数を目に見えるようにして、努力の成果を見える化するというちょっとした工夫をしてみましょう。

さまざまな事情で人との接触を続けなければならない人もいます。その分、人との接触を減らせる人は、そうした人たちの分まで減らしたいものです。

多くの人が在宅勤務やオンライン会議を体験することで、働き方改革をすすめるきっかけになるかもしれません。報道機関の皆様には、ぜひともそのような取り組みに光をあてて頂きたいと思います。

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