ソムリエ・スカラシップに参加して

この記事はもちろん沢山の方にお届けしたいとは思っていますが、
特に28歳以下のワイン業界にお勤めの方
(飲食店、インポーター問わず)にお読み頂けたら嬉しいです。

突然ですが、私は「ソムリエ・スカラシップ」をより多くの方に知って頂きたいと思っています。 (残念ながら私は受賞していませんので、次回の参加に向けて一緒に勉強して頂ける仲間を探すという裏テーマもあります..え?)
「なんぞやそれ!」というツッコミがくる前にこのスカラシップについてご紹介します。ソムリエ協会のHPには下記のように記載されています。

【次世代を担う若手ソムリエの育成、輩出】
【若手のコンクール参加機会創出により、知識・技術向上の研鑚、また地域を超えた交流、情報交換の場をつくり、業界全体の活性化を図る】
【スカラシップというネーミング及び主旨は、より幅広く、多くのソムリエの参加を促し、継続的な努力と将来を見据えたチャレンジに期待と支援をしていくため】

言葉の意味通り、「奨学生選抜試験」のようなものでコンクールではありません。
(審査はコンクール形式で行われます)
スカラシップを受賞するとその後は全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝、世界大会へ進めるように「強化選手」として協会からのサポートを受け、セミナーへの参加や海外研修に行けるようになります。
参加費も無料なのでワイン仲間作りにも良いと思います(..え?)

「ていうかお前誰やねん!」というツッコミを頂きそうなので、自己紹介をさせてください。
私は柴田郁也(シバタフミヤ)と申します。
現在25歳で、都内のビストロでソムリエとして勤めています。
先日第10回ソムリエ・スカラシップに参加して、沢山の収穫があり、
「ぜひ色んな人に知ってほしい !!」と思いこの記事を書いています。

ということでこの記事は以下のようになっています。

➊大まかな審査の内容
➋最優秀賞者インタビュー
➌この記事を通してお伝えしたいこと
➍審査の詳細(特にご興味のある方へ)
➎当日までに準備&勉強したこと、当日の所感

➊審査の大まかな内容

下記は第9回の内容ですが、毎年微妙に変わっていきます
【1次審査】筆記、テイスティング [約100名→32名]
【2次審査】口頭試問、小論文、筆記 [32名→12名]
【3次審査】モバイル審査、テイスティング、ボトルワインのサービス、ディスカッション[12名→5名]
【最終公開審査】アペリティフサービス、グラスワイン提案、3種の赤ワインのブラインド試飲、キャリアに関するアクションプランのスピーチ[5名→最優秀賞3名]

直近の第10回はコロナの影響を受けて形式が大幅に変更となりました。
詳細な問題等については➍でご紹介します。
【1次審査】オンライン(メール)審査 [78名→22名]
【2次審査】筆記&テイスティング、口頭試問 [22名→5名]
【最終公開審査】アペリティフサービス、グラスワイン提案、3種の赤ワインのブラインド試飲、キャリアに関するアクションプランのスピーチ[5名→最優秀賞2名]


➋第10回最優秀賞者インタビュー

結果の出ていない人間の記事だとだいぶ説得力に欠けますし、イタイ奴になってしまいますので、最優秀賞のお二方にインタビューをしました。
質問内容
(1)スカラシップに向けて準備してきたこと、
その中で最も時間を割いたことを教えてください。
(2)参加して感じた課題は何かありますか。
(3)スカラシップで学んだことをどのように現場の仕事に活かせますか。
(4)最優秀賞を受賞するために必要なことや心構えを教えてください。
(5)初参加の方へのメッセージをお願いします!

沖中亮真さん(ジェイアール東海ホテルズ)
(1)メンタルトレーニングと発声練習。
筆記、テイスティング、サービス実技の練習は毎日しておりました。
(2)出題者の意図を読み取り、的確な回答をすること。
相手の話を一度で理解し、正しいレスポンスを返す必要性を感じました。
(3)学んだ知識、心構えはそのまお客様への受け答え、
そして職場の方々からの信頼向上に繋がります。
(4)大きな夢を持つこと。そして、このスカラシップを受賞することがその夢への第一歩であると考えること。
(5)このスカラシップを通して得られる仲間、学び、成長は素晴らしいものです。
是非、自分の世界を広げる為に挑戦してみてください!

依田己輝さん(株式会社AULI)
(1)身体を健康に保つこと。メンタルをいい状態に保つこと。
最も時間を割いたことは座学です。
(2)サービス実技と英語力
(3)スカラシップ当日までのプロセス、準備は1つの成功体験として様々な部分に応用できると思う。
(4)大丈夫だと思ったところからもう一歩、もう二歩踏み込むこと。
心身共に健康に保つこと。
(5)得るものしかないです!
自分には無理だと思わずに是非一度挑戦していただきたいです!

【第10回最終審査の5名。左から横田さん(銀座レカン)、沖中さん(ジェイアール東海ホテルズ)、高橋さん(エノテカ株式会社)、依田さん(株式会社AULI)、シバニャン】

➌この記事を通してお伝えしたいこと

さて、私がこの記事でお伝えしたいことはただひとつ
「もっと沢山の方に挑戦の機会をお届けしたい」ということ。
私の初挑戦となった第9回(24歳)を思い返すと、
どんな審査するの?」「意識高そうな人ばかりで怖いな」「英語話せないし」..
きっと私と同じ心境の方はいらっしゃるのではないでしょうか。
おそらく最初は皆さんそのような気持ちで参加されていると思います。
しかし小さな勇気を持って参加すると、素晴らしいメリットを感じます。
沢山の仲間に会えますし、学びの機会がグンと増えます。
そして何よりもスキルアップに繋がります。英語が苦手な方(特に自分ですが笑)は勉強するきっかけになりますし、分析的なテイスティングが苦手な方は基礎を身に付けられますし、幅広い沢山の知識を得られます。

私のような個人店に勤務する身としては、優秀な同世代の方にお会いできるのは本当に幸せなことだと思いました。
そして2回参加して(1回目は2次審査敗退、2回目は決勝進出)感じたことは、
能力・知識の差はあまり大きくないのではということ。
「どれだけ本気で準備したか」それだけなのかもしれません。
2回目の参加は自分にとっては人生で最も勉強した半年間でしたが
(今までしなさすぎでしたが..)他の方にとってはそれが普通のことだったのだと知りました。最優秀賞のお二方は筆記試験はASI(国際ソムリエ)に向けた勉強をしていた為簡単に感じたそうです。

「コンクールと現場は違う」と否定される方のお声もお聞きします。
仰る理由もわかります。しかし日本のソムリエの地位を高めてきたのはコンクールで世界へ進出された方々の功績によるところもあると思います。
私も街場の30席程度の小さなビストロで毎日働いていますし、またそれを誇りに思ってもいます。一度コンクールに参加してからご自身のキャリアプランを考え直す、というのも決して間違ってはいないのではないでしょうか。
(一度参加してみて、ご自身に合わなければそれ以降参加しなくても良いですよね)

この記事をきっかけにスカラシップに興味を持ってくださった方、ご連絡を頂けるととても嬉しいです。グループを作っていますので一緒に勉強させてください!最初はお試し参加でも良いと思います。実際に私もそうでしたし、他にもそのような方がいらっしゃいます。そして将来有望な後輩のいらっしゃる方、ぜひこの記事をご紹介頂ければ幸いです。

➍➎は参加をご検討されている方向けのコアな内容ですので、ぜひご興味のある方はお読み頂ければと思います。

➍審査の内容(直近の第10回の詳細)

私が初参加の時にまず思ったことが、「え?情報なくない?何すればええんや!」
ネットで検索してもどんな問題が出るのか、あまり情報がありませんでした。
所謂過去問のようなものがないと「何からやればいいかワカラン..」状態になってしまうかと思いますので、ソムリエ協会のHPやフェイスブックに掲載されているものも含めて書きます。(いずれ無くなってしまうので...)

⚠️問題等の詳細のSNS公開については皆さんご存知のコンラッド東京エグゼクティヴソムリエであり世界コンクールに日本代表として出場されている森覚審査委員長の許可を得ています。

---1次審査---(2020/11/30)
例年では筆記とテイスティングで100名前後から30名程度が通過します。
今回はコロナの影響を受け、オンラインによる「メール審査」となりました。
4つの課題に90分間で回答し送付という内容でした。
(1) あなたにとって「良いソムリエ」とは何か?明確に答えてください。
(2) 日本ワインを海外に広めるために必要なことは何か?
具体的な方策も含めて答えてください。
(3) 若年層におけるアルコールの消費動向を
日本と海外とを比較し、分析してください。
(4)コース料理5,000円がメインの天ぷら店の
グラスワインを10アイテム提案してください。
(全て字数無制限)

1次審査は78名のうち22名が通過しました。
審査のポイントとしては

(1)あなたにとって「良いソムリエ」とは
・自身の明確な「良いソムリエ像」がある
・ SMARTのいずれかが入っている
・ パッションがある
(2) 日本ワインを海外に広めるために必要なことは?
・骨子となる明確な問題提起がある
・具体的なアクションやプランがある
(3)若年層におけるアルコールの消費動向を日本と海外とを比較分析
・日本と海外の比較がある
・データや数字をもとにした意見がある
・オリジナリティがある
(4)コース料理5,000円がメインの天ぷら店のグラスワインを10アイテム提案
・正しいアイテム表記
・的確な価格の設定
・選んだワインから伝わるメッセージ性
・ワインアイテム以外の提案がある
・セレクションワインのオリジナリティ
・天ぷらという料理により踏み込んだ内容

---2次審査---(2021/4/2午前)

例年では2次審査は口頭諮問や小論文、筆記試験で行われますが、筆記とテイスティングが回ってきました。

(1)筆記試験 全80問 122点満点
(問題をいくつか載せますので、参考にしてみてください。

⚪︎ヘンチキ社のHill of Graceのブドウ品種
⚪︎マウント・ロフティー・レンジズの地図を見てアペレーションを回答
(原語、1つにつき1点)
⚪︎オーストリア内で最大、最北のDAC
⚪︎ヴィダルの交配品種
⚪︎Riojaのサブリージョン(原語、1つにつき1点)
⚪︎ゲヴュルツトラミネール、ピノグリの
ヴァンダンジュ・タルディヴに求められる最低果汁糖度
⚪︎フランチャコルタの気候に影響を与える湖
⚪︎スパータスカンについて説明
⚪︎日本で初めて認められた梅酒のGI

(2)ブラインドテイスティング白赤を外国語で筆記にてフルコメント
(上記2つで60分)

(3)4つのブースに分かれて審査

A:3つのコルクの画像をみてできる限り詳しく説明(日本語/2分),
ワイン業界で注目を集める[SOLA]について簡単に説明(日本語/1分)
B:勤める職場、業務内容について紹介(英or仏語/2分),
ワインショップで働いているとしてお客様からの次の質問に答える(英or仏語/2分)
「We are planning on having my daughter's 20th birthday party at home.
Can you recommend some wines?」
C:次の状況を判断し、適切な対応について述べる。
「あなたはフレンチレストランのアシスタントソムリエ。ヘッドソムリエの不在中に、常連のお客様から、予約の件で相談をしたいと電話があった。要件は「特別な方を招待してワイン会をしたく、ワインの持ち込みは可能か」との問い合わせ。プロフェッショナルとして対応を述べる。設問は2つ。」
設問①:通常、レストランのマニュアルではワインの持ち込みを断ることになっている。あなたは電話口のお客様に対してどのような対応するか?対応の手順を述べる。(日本語/1分)
設問②:後日、ヘッドソムリエより持ち込みワインは4本、Duval-Leroy Fleur de Champagne Premier Cru Jeroboam(1本)、Chateau Pétrus Double Magnum 1990(1本)、Giacomo Conterno Barolo Cerretta Magnum 2010(2本)になったと告げられた。当日に向けてあなたが必要だと思う事前の準備について説明。(日本語/1分)
D:2種類のワインをフラッシュでコメント(英or仏語/3分)



---最終審査---(2021/4/2午後)
例年では1つの会場で4つほどの審査になりますが、コロナ対策で会場を2つに分けて開催。

A会場(赤ワインのテイスティング以外全て日本語)
・赤ワインのブラインドテイスティングをフルコメント(英or仏語/4分)
・4種の飲料について産地/原料/アペレーション/品種/銘柄を回答(2分)
・その飲料とスモークサーモンを試食し相性をそれぞれ分析(3分)
・12の画像(人物や産地、ワイナリー等)を答える
・ワインリストの間違い探し(4分)
B会場(スピーチ以外全て英or仏語)
・アペリティフサービス〈グラスシャンパーニュとモスコミュール〉(5分)
・カスレとブランダードをご注文されたお客様に
グラスワインのご提案とサービス(3分)
「沢山の国を旅してきた私を驚かせる提案をしてください」というリクエスト有。
・ボトルワインのデカンタージュ及びサービス(4分)
・キャリアプランについてスピーチ(日本語/3分)

➎当日までに準備&勉強したこと、当日の所感


これは参加をご検討されている方にとって一番気になるところかもしれません。
私が準備したことですので、参考程度にして頂ければと思います。
(最優秀賞になっていませんので笑)

〈筆記〉
第9回の筆記の問題の傾向を分析したことと、他の方からのアドバイスで、ソムリエ/ワインエキスパート・エクセレンスレベルの知識が求められると知りました。それを基準に自作の問題集(約800問)とアペレーション等の産地に関する問題(約400問)を作成して自分で解くという勉強を半年間続けました。
問題はGoogle Driveで管理しPCとスマホでいつでも勉強できるようにしました。
〈テイスティング〉
英語で口頭3分&筆記10分で書き切れるように練習。
(外観→香り→味わい→結論と必ず同じフォームでできるように。YouTubeのソムリエコンクールの動画と書籍「テイスティングは脳でする」を参考に)
小売価格で¥2000-¥5000のワインを購入しテイスティングをしたり、ワインショップに行ってブラインドテイスティングをお願いしたりしていました。
試飲する際は必ず「比較」するようにしていて、同一品種で産地orスタイル(熟成等)の異なるものの違いを意識してトレーニングしていました。
〈時事対策〉
ワインレポートの2020年にニュースに挙がっていたものを全てチェックし、
問題になりそうなものをピックアップしエクセルにまとめました。
〈カクテル対策〉
スタンダードなものをYouTubeで検索し、スマホのメモに登録。
電車の移動時間などで視聴しビジュアルで記憶。飲食店に勤務しており定番のものは作り慣れているので、あまりここに時間はかけませんでした。
〈スピーチ・プレゼン対策〉
近年のトレンド(自然派/オレンジ/ロゼ/中国/日本ワイン等や、ワイン会等のイベント提案、キャリアプランに関する約10のトピック)を1-3分間で話す練習。
〈英語対策〉(とても苦手です...)
アメリカ在住歴の長い素晴らしい営業マンの方にお願いし、2ヶ月半の間、週に1-2回、オンラインで英会話のトレーニング。
過去に出題されたものを参考に自作の応答問題を作成し,、
トレーナーの方にお客様役をやって頂き練習。
(英語以外の心構えや仕事において大事なことも沢山教えて頂きました)

主に上記5つの対策を取り、問題や審査で求められることについて情報収集・分析を4月頃から、問題作成等の下準備を6月頃から、本格的な筆記の勉強については9月頃から、その他の項目は12月頃から勉強しました。

過去のスカラシップや近年のコンクールの傾向を分析すると、上位に進むためには筆記対策は重要かなと思います。

準備した内容の7割は出せたと思っています。
2次・最終審査(4/2)の直前2週間は勤務する店舗の繁忙期ということもあり、あまり休めず、体調面ではやや心配がありました。
当日は眠気と頭痛で体力的にはハードでしたが、参加していた仲間もあまり眠れなかったと話を聞いて条件は常にフェアだと思い、言い訳するのはやめようと考えました。

2次審査が終了し、最終審査に進む5名の発表。4人目の時点で名前が呼ばれず正直「また来年か...」と頭をよぎりましたが、
5人目で自身の名前が呼ばれ安堵したことと、当日雅叙園に応援にきてくれている友人、英語トレーナー、オーナーに姿をみせられることが嬉しく思いました。
そして最終公開審査。
どんな回答をしていたか記憶にない部分が多いです。
英語でのサービスの審査では低血糖気味だったこと、話したいことが英語で話せず焦っていたことでかなり汗をかいていました。
(デカンタージュ中に汗が額から垂れていました...お見苦しかったかと...)
一番最後の課題となったキャリアプランの3分間のスピーチでは話したことをほぼ覚えていません。後から動画で見返しましたが、もっとお伝えしたいことがあったなと反省しています。
結果は最優秀賞とならず。
自身の不出来を自覚していたので、その結果に納得していますし、最優秀賞を受賞された沖中ソムリエ、依田ソムリエのお二方の落ち着きとパフォーマンスの高さに素直に感動しました。

最後に

次回のスカラシップに向けた情報交換できるコミュニティをつくっています。
オンラインでの勉強会やテイスティング練習を予定しています。
どなたでも参加して頂けますので、ご興味のある方はぜひご連絡をください。
(Twitter、インスタ、FBはやっています)
このグループは出入り自由で、初参加の方や2.3回目の方もいらっしゃいます。
私が初参加の時の「何やればええんや..」「会場来てみんな楽しそうに話してるけど知り合いひとりもおらんわ..」という寂しい状態にならずに済みます!!笑
またソムリエ協会も参加者の積極的な交流を望んでいます。
「こいつ胡散くさいな」と思われましたら裏垢からでも勿論大丈夫です。 
長くなってしまいましたが、最後までお読み頂けてとても嬉しいです。ありがとうございました😊


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