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【日誌】嫌いなやつは似てるやつ。

2021.2.18 日誌当番 模合  天気 晴れ

今日はあの日を思い出した。そう、あの日だ。
5年ぶりに女子を泣かせた日。理科の授業のときに隣の席だった女子。
プリントを忘れたと言ったら貸してくれた性格の良い女。INFP。

彼女を夢見る子と名付けよう。実際そうだからだ。

夢見る子を泣かせた。女子だけど泣かせた。泣かせたけど爽快だった。楽しかった。
何?やばいヤツだって?ああそうさ。おれは最低だ。

 でも必要なことだ。映画とかでよくあるだろう。未来に行って友達が死ぬ将来を見て、現代に戻って助けるやつ。あれだ。ああいう感じだ。必要なんだこれは。

夢見る子と私は3年間同じクラスだった。そして私が唯一学校内で嫌いな男がどうやらこの子を空いているようだった。この男は私を過去にいきなり殴ってきたことがある。ドメスティックバイオレンスな男だ。その男が思いを寄せる女だ。・・。

こんな地に足のつかない女の何が良いのか。さっぱりわからん。

事件が起こったのは高校3年の後期。化学の授業だった。退屈だった。科学室に移動して授業を受ける。夢見るとは同じ班だ。

たとえクラスが同じでも、受験が近づいてくると、それぞれ進路に向けて歩みだす。

大学進学、短大、専門学校、就職・・。
様々な選択肢の分だけ、やるべきことも分かれる。

もう推薦や就職、専門学校はほとんど進路活動は終わっている。

ちなみに夢見る娘はとっくに専門学校だから、自己PR文を書き終えて、あとは友達と絵を描いているだけだった。

化学の授業は化学室で行われる。4人1組で席にそれぞれ座る。

夢見る娘は俺の隣りに座っていて、私の親友は私の真向かいで座っていた。親友と喋りやすくて快適だったものだ。

私は自分の親友と今までは喋っていたのだが、どうやら彼は山梨県の大学に行くらしい。いやー俺も連れて行ってほしいな。

その親友が大学に向けて勉強するようになった。当たり前だ。入試まで後3ヶ月だもの。

そして隣のこの女は専門学校志望。美大はまず厳しいだろう。まず一般家庭ではきつい学費が待っているし、東京芸術大学に受かるほどの素質があるわけでもない。
実力的にも無理だ。

別にそれ自体を責めているわけではない。
ただ、授業中でもいつも、この女が友達のメガネ女子(この子の真向かいに座っている女子、ちょうど私の真向かいの親友の隣に座っている、この子も専門学校希望)といつまでも絵の見せあいをして満足しているのが気に入らない。

このメガネは割と好きだった。クラスでは嫌われていたが。

私は昔からクラスであまり好かれていない女子を気に入る性質がある。好きと言っても、このブログの「スキ」ぐらいの気軽なもの。
LoveではなくLikeだ。

まず、自分の実力と立ち位置をよく知っている。できること、できないこと。そのしたたかさが好きだ。地に足がついている。

今どきの女子のキャピキャピした雰囲気をまとっていない。地味だが大人だ。逆にそれがクラスの女どもと差がありすぎて浮いていたのかもしれない。

対象的にこの夢見る子は夢見過ぎだ。甘い、自分が何でもできると思っている。

アーティスト気取りだ。傲慢だ。おまけにクラスの私のだいっきらいな男が思いを寄せていると来た。このユメミル夢子のなにが良いのだ。

ま、たしかにあの男と似ている部分もありそうだ・・。

ああ、なんか腹立ってきた。

そのいら立ちを次第に隠せなくなってきた。ついあたりがきつくなってしまう。
でもそこまでは良かった。

ある日、その夢見る娘の真向かいに座っていた女子が専門学校への進学を断念せざるを得ない状況になってしまった。家計の問題らしい。

なんということだ。落胆した。さぞ虚しかったことだろう。気持ちはよく分かる。私も似たような境遇だからだ。でも彼女は夢見る娘とは違って現実主義者だ。夢見る娘よりよっぽどみどころがある。現実を見つめて歩んでいる人間が進学できなくて、隣に座る箱入り娘の人生舐めプ野郎が希望を通すのか。

夢に満ちた人生を生きるのか。・・。

 「まあ、イラストで食えるやつは最初から美大とか行くだろうし、そうでなくとも実力で高校在学中にヒットしてるだろうな。
馬鹿でも分かることだ。」

ある日、思いがけず夢見る娘に向かってそう言い放った。当の本人のメガネは風邪で学校を休んでいた。今日は夢見る娘と私と私の親友だけだ。

そうしたら夢見る娘が目に涙を浮かべて怒りを顕にした。

「私の友達の前でそんな煽るようなこと言わないでね!許さないから!!」

ああ、お友達のメガネを心配しているのか。フンッ。お前よりよっぽどメンタル強いし優秀だから心配するな。

お前は将来の自分が苦労するということに全力で憂いていればよいのだ。傲慢に他人の心配をする必要はないだろう。

そんなことを考えていたら、自分でも気づかぬうちに夢見る娘を見下している顔になっていた。悪い癖だ。すぐ顔に出る。

(私と夢見る娘のやり取りを見ていた親友が後で教えてくれた。)

その私を見て、ますます夢見る娘は傷ついたようだ。涙を浮かべた。そして授業が終わると走って理科室を出ていった。

ああ、何年ぶりだろうか。女を泣かせたのは。

だがこれで良いのだ。こいつは社会に出てますますその傲慢さで周りに責められるんだろうから。今の何十倍も悔しい思いをするだろう。人の詮索する暇があったら自分磨きでもしてろ。ダサ女。

勝利をおさめて満足していたのもつかの間。次の日に夢見る子が反撃してきた。

 「あんた、そんな偏屈で、傲慢で、世間知らずの夢ばっかり見ていたら社会で苦労するわよ!!少しは地に足をつけなさい!」

理科の授業中にそう言ってきたのだ。自信満々に。勝ち誇った顔で。何だ?こいつ。馬鹿なのか?

それを見ていた親友は何やらぷくくと笑っている。
なにがそんなにおかしい。おかしいのはこの女だ。

「いや、なんか似てんなあと思ってさ。」

は?何がだ。こんな傲慢で箱入り娘な理想主義者。俺とは似ても似つかないだろう。性格も悪いし。モテないし。

「だれがこんなやつと!!」


今思えば親友の言うとおりだった。

めでたしめでたし

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