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どうして勉強しないといけないんですか(左巻健男『絶対に面白い化学入門 世界史は化学でできている』)

「どうして勉強しないといけないんですか」

もし私が子どもに聞かれたら何て答えたらいいんだろうと、私は別に教師でも親でもないしそんなこと聞かれる予定は全くないのに、ときどき考える。

勉強はもちろんした方がいいと思っているけれど、高校時代は「現代文と古文と英語は5、でも数学と化学と物理は2」なんていう成績を取り続けた超ど文系の私でも人並みに就職をして人並みの給料をもらい、幸せな人生を送っている。恋人はこの話を聞いて「2なんてそうそう取れるものじゃないよ……」と呆れていたけれど、大学は中退している。だけど仕事に趣味に毎日充実しているみたいだ。

だって就職のときに数学のテストなんてやらないしなぁ……新卒として就活していたときは、計算問題なんかは課されることもあったけれど、それも四則計算の組み合わせのようなもので、サインコサインタンジェント、みたいなものは覚えてなくても全く問題なかった(これも呪文のように言葉を覚えているだけで、なんか三角が関係するやつ、くらいしかわかっていない……)。

どうして勉強しないといけないんですか。

まだ絶対にこれ、という答えは持っていないのだけれど、最近痛烈に「勉強しておけばよかった~!!」と思う出来事、というか、本に出会った。

書店で平積みされているのが目について買った本。表紙の色も好きだし、細めのフォントも好みだし、面白そう。

小倉ヒラクさんの『発酵文化人類学』がとてもとても面白くて大好きだったので、「文系科目×理系科目」のタイトルも期待できると思った。最近科学者の書いたエッセイも面白いと思えるものが何冊かあり、「勉強は苦手だったけど、科学って面白い!」という気持ちにもなっていた。だから読みたいと思ったのだ。

結果、惨敗。30ページほどで挫折した。読みながらずっと、「もうちょっと化学がわかればすっごく面白そう!」と思っていた。

この世界の全ては原子でできている、と理解されるまでの歴史などは面白いと思うのだけれど、その解明されていく流れを説明する実験の内容はまるで理解できない。

こんなに面白そうなのに。ここを乗り越えたらこの先にはきっともっと面白いことが書いてあるのに。もっとちゃんと勉強しておけばよかった~!!!

どうして勉強しないといけないのか。私が考えるその理由のひとつは、「勉強した方が面白いと思える本が増えるから」。

知識がないと、面白いはずのことを面白いと思うことすらできない。ときどき、学校の勉強など人生の役には立たない、読み方と四則計算が最低限できれば十分、あとは自分の好きな分野を極めたほうが良い、という意見も聞くけれど、その分野の基礎を学ばずに、どうやって「好きな分野」を見つけるのだろう。全教科を完璧に理解してテストで100点をとる必要なんてもちろんないけれど、半強制的に様々な分野の入門に触れることが、その後極めるべき好きな分野を見つけるヒントになるのではないか。

将来、もし私に子どもが産まれて、勉強しないといけない理由を聞かれたら。あるのかわからない未来について考える。きっと、私から何を言われたって素直に勉強する気にはならないのだろうけれど、義務教育を終わったあと、「もっと勉強しておけばよかった!」と思う人生をせいぜい歩めよ、と思う。


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