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#112_現金払いを手形(電子手形)払いとする場合の問題点

ちょっと必要があって、「今まで現金払いだったのに、それを手形(電子手形)払いとするのに何か問題はないか?」という点を調べたので備忘までに。

前提として、下請法の適用があるとします。その場合、支払いを行う親事業者は、下請事業者に対し、給付(たとえば、製造を頼んだ原材料)を受領した日から起算して60日以内に起算日を定める必要があり(第2条の2第1項)、その支払日を過ぎて支払わないのはダメです(第4条第1項第2号)。

では、その支払日に、現金でなくて手形(いわゆる電子手形(電子記録債権)を含みます。)を渡せば、「支払った」といえるかがここでの問題です。

商売の感覚からすると、手形には当然支払サイトがあり、手形をもらった日から満期(実際におカネをもらえる日)までには30日、60日、120日とかの期間があるので、60日以内に手形をもらったとしても、原則、そこからさらに支払サイトの分待つ必要があり、下請法はザルになる気がします。

ただ、そこはうまくできていて、手形というのは金融機関とか貸金業者で割り引いてもらえる(≒その手形の権利を譲渡する代わりに、譲渡代金として、現金を支払ってもらえる)ので、手形を受け取ったら、そんなに時間をかけずに現金化できるのが通常です。なので、手形による支払いも下請法上OKとされています。実際、業種によっては、まだまだ手形払いも多いでしょう。

しかし、当たり前ですが、手形の割引には割引手数料がかかります。それを考えると、手形払いを単純に現金払いと同視することはできないと思います。

これについては、通達上も、

「手形等により下請代金を支払う場合には、その現金化にかかる割引料等のコストについて、下請事業者の負担とすることのないよう、これを勘案した下請代金の額を親事業者と下請事業者で十分協議して決定すること。」

としています(「下請代金の支払手段について」(平成28年12月14日公取企第140号))。

ただ、実際の力関係からしたら、なかなか割手の手数料を負担してくれとは言えないのではないですかね… このあたりにも、法律の理想と現実のギャップがありそうです。

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