心つづれおり〜2 エリザベート〜

ミュージカル・エリザベートは、宝塚版と東宝版があります。私が観劇したのは、2004年の東宝版です。

レミゼでミュージカルに魅了され、次に夢中になった作品がエリザベートでした。

当時、山口祐一郎さんのトートを一度は観てみたいと思い、全くの予備知識無しに臨んだ観劇。観劇後は、こういう世界観があったのか、と衝撃を受けました。

まずは、音楽。今までに聴いたことのない旋律、怒りや哀しみ、不安といった影の感情が音楽となり胸に迫ります。作曲されたのは、日本でも人気のシルヴェスター・リーヴァイさんです。私は、ミュージカルは、ブロードウェイかウェストエンドで創られるものと思っていたので、エリザベートを観て初めて、ウィーンミュージカルの存在を知りました。

次に、トートという設定。トートは、死を意味し、それを目に見える形にした象徴のような存在です。捉え所がない、しかし確かに存在するというミステリアスな雰囲気が、とても魅力的なキャラクターでした。エリザベートが死を望みながらも拒んでいるという心の揺らぎも、トートの存在でより鮮明になります。この両者の駆け引きが舞台上で繰り広げられる度、劇場ならではの非日常的な体験をしました。

エリザベートのように、実在の人物が描かれた作品は、その歴史背景にも興味がわきます。また、宗教観についても考えさせられます。特定の信仰を持たない者としては、観劇後に書物を通して、解釈が深まることも多くあります。こうした、自分の知らなかった世界と出会うきっかけをもらうことは、観劇の大きな楽しみです。

東宝版エリザベートは、2020年の公演で日本初演から20年の節目を迎えるはずでしたが、それが叶いませんでした。音楽が素晴らしい作品なので、今後近いうちに、ぜひコンサート形式での公演も観てみたいと思います。

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