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三重県から発信するフライフィッシング情報

 このnoteは、Fly High Fisherという、旧世代の釣りサイトの、釣行記録等をメインに綴るものです。平たく言えば、いつサーバーの無料HPサービスが打ち切りになるか怪しくなってきたので、避難先とも言います。
 基本的にはフライフィッシングの情報発信用ですが、海で穴釣りしてカサゴ釣ったり、投げ釣りでシロギス釣ったり、鮎をルアーで釣ったりする釣行記も登場予定です。
 年に1度ですが、アマゴの発眼卵放流の様子などもお届けします。

コンセプト

  • 三重県のフライフィッシング環境の発展を目指しています。

  • 釣りに行きたくなる情報の発信に努めます。

  • 自己満足でなく、実際に『使える』情報を発信します。

 本家のサイトでも謳っているのが上記三点ですので、釣りをした河川名は基本的に公開します。
 私が釣りのサイトを立ち上げた頃は、渓流釣りにおいて、川の名前を出すのはタブーとされていました。その理由には、それなりの説得力があり、当時、沢山釣っている人がどこで釣っているのか、下手をすればどこの県の渓流かさえ分からないこともありました。

阿寺川水中撮影

釣った川の名前を公表しない伝統

 しかし、本来は場荒れ・乱獲を防ぐためだったこの伝統は、情報化の時代の流れと、娯楽として釣りを楽しむ人が急激に増えた現代において、微妙な”ズレ”を生じさせることになりました。
 昔は、魚を釣るのは食べるためであり、沢山釣れるポイントをわざわざ世間に公表する必要はありませんでした。
 しかし、少し時代が進み、レジャーとしての釣りが広がると、承認欲求を満たすため、つまり、単に釣果を自慢したい釣り人が増えてきました。今でこそあまり見られなくなりましたが、週刊の釣り新聞や、釣り雑誌では、100匹以上の魚を並べて、笑顔で写真に納まる釣り人の姿をよく見ました。
 さらに時代が進み、今日では釣ったその数秒後に、世界に釣れたとの情報を発信できる時代になりました。
 海釣りを例に挙げると分かりやすいですが、YouTubeの釣りに関する動画は非常に多く存在し、かつ、人気があります。海釣り人口も、コロナ禍などもあり、一気に増えた印象です。
 ところが、鮎釣りを含む、川釣りの人気・釣り人口は、下降の一途をたどっていると、肌で感じます。原因は何でしょうか。

釣りをするには游漁料が必要

 一般の方に意外と知られていないのが、鮎、岩魚、ヤマメ、アマゴなどの渓流魚を釣る際に必要となる、遊漁料ゆうぎょりょうです。
 詳しい法的根拠や制度設計について書くときりがありませんので割愛しますが、要するに、日本の川で鮎や鱒を釣る場合、ほとんどの場合、お金が必要となります。多くの場合、1日券(游漁証とか游漁許可証とか、鑑札とも呼ばれる)で2000円程度、年券で8000円程度でしょう。(鮎はもっと高い)
 では、2000円払った場合、2000円分の魚が釣れるかというと、現実はそんなに甘くありません。知らない川で釣った場合、ボウズ(0匹)ということも、さして珍しくありません。
 皆さんは、2000円を払って、険しい山(川)の中を1日歩き回り、1匹も釣れないという経験をしたいでしょうか。おそらく、特に初心者や初めて釣りをする方、子どもであれば、「なんてつまらない遊びなんだ」と感じるでしょう。

太田切川の尺岩魚

お金を払わずに釣る人が多い理由

 ちなみにこの游漁証、特に渓流釣りにおいては、制度を知っている、いわゆるベテランと呼ばれる方でも、きちんと購入している人は5割以下だと思います。ルアーやフライの人はそうでもない印象ですが、山奥で出会う年配餌釣り師の方は、所持率が低い傾向にあります。(というかほぼ持っていません)
 しかし、これは釣り人だけが悪い問題ではありません。渓流釣りは早朝から釣るケースが多いのですが、そもそも游漁証を売っている店が開いていない、もしくは釣りをするポイント周辺に販売所がない、というケースが多々あります。コンビニがその辺にあり、コンビニで当然買えるというのは、都会の方の一方的な妄想です。
 そのため、游漁証には、いわゆる「現場売り」という制度があります。游漁証を買わずに釣り始めるのはいいが、事前または事後に買わず、監視員(漁協組合員)が現地で游漁証を持っていないことを確認した場合は、割増(1.5~2倍)の料金を払って、監視員から買うという方法です。
 一見、理に適った制度にも見えますが、ここに落とし穴があります。
 渓流釣りは、ポイントが広範囲に広がっていることが多く、毎日1つ1つの支流を監視員が見て回るなど不可能なのです。そう、バレたら金払えばいいし、バレなければ無料で釣りが出来てラッキー、ということがまかり通るのです。
 ルール破って釣るなんて、そんなのはレアケースでは?と思われるかもしれませんが、私の経験上(20年以上渓流釣りしています)、監視員が回ってきて、游漁証の確認を受けたのは、片手で数えられる程度です。
 そうすると、游漁証を買わずに釣りをするのが当たり前の感覚となるのも頷けます。長年、游漁証を買わずに釣りをしている当の本人からすれば、現場売りの鑑札など買わされた日には、「最悪の日だ」「運悪く監視員が来やがった」「俺が釣ってるのは天然魚で放流魚じゃない」「みんな買わずに釣っているのに何故俺だけ?」等、まるでスピード違反のネズミ捕りにでも捕まった感じなのでしょう。

ますます高くなる川釣りの敷居

 本来、「游漁証を持たずに釣りをするのはルール違反」のはずが、「自然の川で釣りをするのに、金なんか払えるか」と考える人が増えてしまった弊害でしょうか。游漁証の収入というのは、基本的には漁業協同組合(漁協)が、魚を放流するための原資に充てられます。
 しかし、

  1. 游漁証を買わずに釣る人が多い

  2. 漁協の収入が減る

  3. 資金がないので、魚の放流量・増殖活動(清掃や害鳥駆除)が減る

  4. 漁協の活動が維持できなくなる

  5. 遊漁料を値上げする

  6. 游漁証を買わない人がさらに増える(1に戻る)

・・・というデフレスパイラル的な状況に陥り、ついには解散してしまう漁協が増えてきました。
 游漁証を比較的真面目に買っている、ルアーやフライの方はキャッチアンドリリース派の人が多い一方で、魚を持ち帰る人が多い餌釣りの方は、どんどんキープする。前者は遊び、後者は食材確保なので、魚を持ち帰る派の人が、費用を抑えたい(金を払いたくない)のは当たり前なのですが、当然、この状況がマネジメントの側面からして、成り立つはずがありません。放流する魚や、河川の清掃、害鳥の駆除の費用・人件費は、タダではありません。そりゃ、漁協も当然潰れるって話です。
 2022年時点で、三重県の主だった川(水系)では、安濃川・鈴鹿川・三滝川の漁協が解散しています。逆の言い方をすれば、これらの川で釣りをするのに、游漁証はいりません。その代わり、魚の放流も一切されません。この状況が良いか悪いかは、諸説あるでしょう。
 なお、三重県の内水面漁協一覧はコチラですが、番号が飛んでいるのが、解散した漁協の名残です。ただし、昔は細かい支流単位で漁協が設立されていたので、本流の漁協に吸収合併されて解散した漁協も含まれます。
 大規模な漁協はともかく、地方の小規模河川の漁協は、どこも似たような状況です。しかし、近年は游漁証をスマホで買える電子化が進んでいますので、「後で買おうと思っていた」という言い訳は通じなくなるかもしれません。
 また、海でのナマコやイセエビの密漁対策に引っ張られる形ですが、無鑑札で釣りをした者への罰則が、令和2年に大幅に厳罰化されました。罰金最大で100万円です。以前は20万円以下の罰金でしたので、一気に5倍のジャンプアップです。懲役刑はないにしろ、下手な犯罪行為より罰金の金額が圧倒的に高くなっています。今後、游漁証を買わずに釣りをする方は、相当なリスクを覚悟すべきでしょう。

漁業法
第百九十五条 漁業権又は組合員行使権を侵害した者は、百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

金峰山川の流れ

そして誰も釣りに来なくなる

 今後は密漁者が一掃され、漁協の収入も増えるだろうから、游漁証の値段も下がり一安心、と言いたいところですが、ここにも更なる落とし穴があります。
 游漁証を持たずに釣りをする人は、その行為はどうであれ、基本的には魚が好きで、釣りが好きで、その川を気に入っているから川へ来ている人達です。
 今まで自由に釣りをしていた川が、色々な制約が課され、監視の目が厳しくなり、ペナルティが重くなるとどうなるか。結論は明白で、その川へ釣りに行かなくなる、あるいは釣りをやめる・です。
 一昔前、渓流釣りは、地方のローカル渓流でも本当に釣り人が多く、解禁前夜からテントを張って場所取りをする、放流ポイントを仲間内の集団で占拠する、場合によっては傷害事件に発展するなんてことが普通にありました。いわゆる”釣りキチ”が闊歩していました。
 私も若かりし頃、解禁日に放流場所で釣ろうとしたら、「そこで勝手に釣るな!」と、地元っぽい釣り人の集団に怒鳴られたことがあります。悪い意味でも熱量が凄かったです。
 今では、解禁日から数日程度、釣り人が多いことはあっても、以前のような賑わい(混乱)は少なくなり、解禁から1カ月ぐらい経過しても、魚は残っている状況が増えたと思います。
 思い返せば、20年前、川を占拠し、とにかく魚を沢山釣りたいというオーラが滲み出ていた方々は、概ね50~80歳代の方が多かったかと思います。普通に考えれば、皆さん、すでにご引退されたか(ご逝去されたか)、引退間際です。
 しかし、10代・20代の若者が渓流釣りに来ているかと聞かれたら、ほぼ見かけません。そもそも少子化で子どもの人数が減っている上に、娯楽の多い現代、前記のようなハードルが多い渓流釣りではなく、気軽に始められる海のルアー釣りや餌釣りに走っています。
・海と違って沢山釣れるものではない(特に子供、女性)
・釣れても釣れなくても1日2000円かかる
・違反したら高額の罰金が課される可能性
・釣れる場所は業界ルールで秘密にされている

 渓流釣りに魅力を感じない、逆の言い方をすれば、魅力が伝わりにくいのです。  

安濃川でのアマゴ発眼卵放流

川と釣りができる環境を守らねば

 実体験ですが、人が来なくなった川というのは、数年単位の短期間で一気に荒れます。
 まず、林道・山道が荒れ放題となります。人が来ないので、整備する必要(整備してくれという市民の声)が少なくなりますので当然です。
 次に、ゴミが一気に増えます。不法投棄が増えるのではなく、まずは草刈り後のゴミや、枝打ちした枝、切断された倒木などが川へ捨てられます。そこに便乗する形で、家庭ごみが川へ捨てられるケースが増え、そのゴミも、テレビや冷蔵庫、バッテリー、タイヤなど、処分に金がかかるゴミが徐々に増えていきます。最後に登場するのが業者による不法投棄で、林道にゴミの回廊が出来上がります。廃車が放置されるのも、これぐらいのタイミングです。川の話ではありませんが、三県内の某所では、首都圏の建設残土(廃土)のピラミッドが出来上がったり、谷が残土で埋められたりして問題となりました。また、意表を突いてラスボスとして登場するのが、行政による「ゴミの最終処分埋立地化」です。いつの間にやら計画が進行していることがあるので、油断できません。(水源地近くが候補になることもある)
 ゴミは、山の所有者や、行政による道路維持管理で発見されれば処分されることがありますが、川の中の魚がどうなっているかを知るのは、その川に慣れ親しみ、釣りを楽しんでいる人達です。
 ホタルやサンショウウオなどであれば、知名度(?)もあり、この川を守ろうという機運も高まるでしょうかが、魚が減った、いなくなったという実感は、川に入る釣り人以外には分かりません。その魚の大切さや価値も同様でしょう。

一人でできる事からコツコツと

 魚が減ったのなら、放流すればいいと通常は考えますが、ずっと放流するというのも安直で、最終目標は、魚による自然産卵で魚が増えることが理想でしょう。
 私は、2005年から、漁協が無くなった安濃川で、アマゴの発眼卵放流を続けています。1人の労力で・費用1万円で・5000粒の発眼卵を放流するという活動です。
 川の魚が少しでも増え、釣り人が増え、山や川の大切さを知る人が増えることを切に願っています。


  • 三重県のフライフィッシング環境の発展を目指しています。

  • 釣りに行きたくなる情報の発信に努めます。

  • 自己満足でなく、実際に『使える』情報を発信します。

地元の渓流で、いつまでもアマゴ釣りが楽しめるよう、微力ながら頑張っていきたいと思います。


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