日記めいたメモ、或いは四月の交信記録

ツーツーチェックワンツーへーへッハー
ハローグッバイハローハロー
ッーーーーー
ッーーーーー
。。。。。。


1日水曜 朝
いつものタイミング、あの娘も親子もいなかった。

2日 木曜 朝
桜の花びらを空中でつかまえる恒例のゲーム。
私の勝ち。

3日金曜 夜
風に膨らむスカートで出かけたかった。

4日土曜 夜更け
麦茶で呑み会に参加。
笑ったあとに呆れてしまう話。


月の裏側でたゆたう波。揺れる。揺れる。


5日日曜 朝
勝手に悲しくなる。

6日月曜 朝
やりきれない気分。
全部を今週いっぱいお休みするお天気の依田さんのせいにする。
でも本当はゆっくり休んで笑顔で過ごしててほしいから、ら抜き言葉で話す作戦へ切り替える。


こぼれたミルクに泣かないで。


7日木曜 朝
今日はボーちゃんもなんだか機嫌がいい。

8日水曜 本当だったらChara+YUKIのライブだった日。
夜 父からマスクが届く。ありがたい。
ベランダで採ったミントを送ったと聞いていたのに、既製品のハッカ油が入っていた。
ときどき父がわからない。

9日木曜 朝
ホットケーキの焼き色に浮かぶすぐ近くの未来の上ににバターを溶かす。

10日金曜 夕暮れ
異国の言葉で君を好きと云う。

11日土曜 夜
星座占い師から素敵な手紙が届く。
私も素敵な返事が書けた気がする。
彼女がどこにいるかは今も分からないけど、いつかきっと逢える予感がある。
あの夏をいつでも思い出せるから。
大事に大事にしまっているあの夏を、
私たちは優しさを持ちあって壊さないように取り出すこともできるよ。


明日はどっちだ。


12日日曜 昼
春の庭に出したプールの底で蠢く計画に参加するため、ついにコードネームを変える。
まだ誰にも秘密だった新しい名前。


欠伸が伝染していくその幸せについて、


13日月曜 夜
ポストを開ける。招待状はまだ来ない。
時空の歪みに見えた切れ端を掴んで引っ張り出してみると、それは1月に出した年賀状だった。

14日火曜 朝
快適な電車通勤の日々。窓がまだ開いていないところにいって、思いきり開けてから座るルール。
車内は誰も言葉を話さないし、鴨川で寄り添う人々みたいな等間隔だし、窓も開いて、ドアも頻繁に開くから風通しがよくて、危険は全然感じない。
風がビュンビュン吹く電車はとても心地よくて大好き。それが朝でも夜でも。

15日水曜 昼
持ち主の分からないイライラが仕事場をうめていく。耳鳴りがする。
電話で陽気に牧歌的に対応したら、相手も心なしか声が明るくなっていた気がした。気を確かにしなきゃ。


where is my mind??


17日金曜 夜
てっきり君もそうだと思ってたんだけどな。

18日土曜
昼 チェキや現像した写ルンですの写真の整理をする。
昔の恋人の写真の処理の仕方がわからなくて困り果てる。それにしても我ながらいい写真を撮っていて少し傷つく。貝殻からこぼれ落ちる夕日の砂と波の音。
さよならの手紙を書いてみる。数年来の元恋人へ。
テレビからシュガーのウェディングベル。
出し損ねた燃えるごみとまとめて、屋上から溶けていく夕焼けの空にくべる。

夜 画面越しでハイタッチ。


どうして優しくしてくれるの?
だってそうさせてくれるから。


19日日曜
昼 charaとひみくんが親子で大切をきずくものを歌っているのを何回も見る。
お腹にひみくんがいるときに遺書として書いた曲と知り、それを今親子で歌っている風景にさらに感激する。
ビルウィザースのLean on meも何回も聴く。好い曲。僕を頼って。私を呼んで。いつでもさ。

20日月曜 昼
友人の誕生日と嬉しい報告。
遠くから二人の幸せを祈る。
ポムポムプリンのオムライスをつくる。

21日火曜 夜
新しいリュックが届く。
スヌーピーを付け替える。
ランドセルからの仲。お守りみたいなもの。
かつては親戚だったお兄ちゃんからもらった大切な消えない記憶。今は多分おじさん。いつかまた逢えますように。


In the brightly moonlight
小さな遊園地で優しく笑いかける古ぼけた写真


22日水曜 夜
妹が初めてfacetimeをかけてくれる。
田舎だからか電波が悪い。
祖母が粽の作り方を教えてくれる横で、妹はなぜかピングーの動きの物真似をぐるぐるしている。奥には髪の毛を切ったばかりのピンガみたいな弟。
会話の中で気づかれないように変な顔を一瞬だけする遊びをするけど、1対3なので普通に毎回バレる。楽しい電話。

23日木曜 朝
夢の中でもらった本に書かれていたヒントがどうしても思い出せない。


ながながし夜をひとりかも寝む
ながながし夜をひとりかも寝む


24日金曜 夜
ハンバーグ焼くのまた失敗した。連敗だな。味は美味しい。お弁当用の小さいのは成功した。


よもすがら、そしてひねもす


25日土曜 本当だったら鳥居みゆき単独ライブだった日。
朝 冷凍してたコーヒーの粉を罅が入った容器に移す。
やっぱり新鮮な粉は淹れるときの膨らみが楽しい。いい香りに安心する。今日も大丈夫。

昼 押入れの中でセンター試験の受験票を見つける。陰気くさい顔。でもこのときの私のことを好きだった人が確かにいたんだよな。なんだか不思議で面白い気分になる。いつも一緒に帰った彼は、今この写真を見て、あの時間まで戻れるかな。西日が差す首都高バスとそばかす。追いかけてくる月と黒い犬。一瞬の永遠。
そういえば最近、彼が続けて夢に出てきた気がする。
相変わらず冷たい優しさをくれるから、もう出てこないでほしい。と相変わらず身勝手な自分。彼の前でだけ反抗期があった私。

夜 新玉ねぎがおいしい。久しぶりに買った小ぶりのトマトは贅沢。
エドワードゴーリーのぬりえをしたかったけど、また今度にする。

真夜中 夜更かしするつもりが電気をつけっぱなしで寝てた。暗闇から聞こえる囁めきが柔らかな眠りへと連れて行ってくれる。明日を遠くしていく。

26日日曜
朝 祖母が送ってくれたたけのこが届く。
初めてのクール便。
おいしく煮たい。あとたけのこごはんもどこかで炊こう。

昼 小津安二郎 早春

夜 たけのこと鶏肉を煮た写真を妹に送って祖母に見せてもらう。上品に煮てるとのこと。祖母がつくった方が当たり前においしいけど、まあまあの出来。
妹が勇者ヨシヒコのムロツヨシの物真似をボイスメモでたくさん送りつけてきてたくさん笑う。

21時過ぎには寝ていたら、今度は母からの電話で目が覚める。弟もいた。
最近、離れて暮らす家族からの連絡がやたらとある。
珍しい。
靄がかかった不穏に包まれる世界をこういうところから感じる。みんなが飲み込まれないよう、密やかな魔法をかける。

27日月曜 朝
人が減ったとはいえ、まだ混雑している品川駅を、手を繋いで駆け抜けていく恋人たちを見かける。
二人の行き先に向かって目を眇めると、信じられないぐらい明るくて何も聞こえなくなる。


二人はいつまでも幸せに暮らすの?


28日火曜 夜
66dbの雨。

29日水曜 朝
久しぶりに鏡に顔を近づけてみる。
ほくろがあまりに多くて新鮮に驚いてしまう。

30日木曜 朝
今度の休日は、買ったものの全く使っていないレジャーシートを部屋の中で敷いてピクニックをしよう。赤のギンガムチェックにてんとう虫の可愛いやつ。おやつは健康ビスケット。陽のよく当たる部屋だから、芝生も畳もそう変わらない。


今月は一度もお化粧をしなかった。
春色の服も出せないまま。
秘密が秘密でなくなったときの寂しさが苦手。
浮かんだり、沈んだり、だけど心のどこかで期待しながら過ごしていた四月。
毎日新しく恋して失恋してるみたいに。
クラス替えのそわそわ。
目が合った瞬間。
なんだかんだ春。


五月はきっとためらわない。



ッーーーーーーー
ッーーーーーーー
あ。

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